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夜に彷徨う【短いお話】

雪が降る夜の雪原を汽車が走る。
汽車の窓からの明かりが、積もった雪の上を流れてゆく。
ダダンダダン
ダダンダダン
次々と。
暖かい色は行ってしまった。

雪原に遊んでいたキツネの兄弟は、今はもう森の巣穴で眠っている。
体を丸く曲げ黒い鼻先をフサフサの尻尾で覆い、兄弟でくっ付いて暖をとる。
明日も健やかであれ。


雪割草はまだ遠く遠く眠っている。
途切れ途切れに聞こえてくる外国のラジオ放送みたいな銀色の音楽をその身に浴びながら。
深い雪の底で目を閉じて。


森の向こうに見えてきた家々には明かりがともっている。
ここに住む人達は賑やかな暮らしだろうか?
それとも淋しい心だろうか?
雪が降る中に鬼火のようにある。
わたしは美しい言葉をあまり知らないから、そっと触れて祝福をする。


(次はどこへ行こう?)
青い石を胸に抱いてどこへでも行ける。
約束は銀河に置いてきた。


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