見出し画像

星ノ子ドモ【短いお話】

 校庭の土は、石は、草や花は、樹木は、撫でてあげると金色に輝いて喜んだ。撫でた指先にその金色がポッと移って、指先から順番にわたしはしあわせにあたたかくなる。

 夜の雨がすっかり洗濯した庭は、ひんやり冷たい硝子の空気でさらに磨かれてピカピカで、新品の、うわあ、いい天気!
 きょうは青猫がうちへ遊びにやてくる。
 青猫はキビシくって美しい表情の同級生。青猫だなんてもちろんあだ名。それにこんな変なあだ名、わたしだけがそう呼んでいる。

 角の空き地には、あそこにはセイタカアワダチソウとススキが群れている。秋の太陽をふくふくと抱き込んでは跳ね返して、晴れやかな黄色が光っている。
 こちらへ歩いてくる青猫もまるで一緒に光って見えて、金色の立派なカナリアみたいだった。
 金色のカナリアは、わたしの母の「まあ、いらっしゃい」という出迎えの声に少し緊張して「こんにちは、おじゃまします」と、あたりまえの挨拶をした。わたしはそれを聞いて、何故とはなしになんだかとてもくすぐったかった。


一人に一個ずつ淋しいタマシイあるよね。

タマシイぃ?うふふ、突然。うん、あるある。
それでそれには触れないよね。

そうそう、触れない絶対、ぜーーっつたい。
触れないから淋しくなっちゃうのかな?

えーっ?どうかな分からないよ。
でも淋しくっても大丈夫、淋しくってもいいんだよねって思う。
ウププ、だってレッキとしたタマシイなんだよぅ?


レッキトシタタマシイ
生きる
ルビコン川
湧き水
ズット

ラムネ
猫じゃらし
白詰草
珊瑚
胡麻の蠅
なにそれ? え、エ? エンサイクロペディア
アトム


 へんなの。庭の敷石に二人でしゃがんでしりとりしてる。
 タマシイから始まるしりとり。


 耳を澄ますと聞こえるのは、これは地球の回る音。星が宇宙と擦れる音。
 見上げた空がとても高い。
 青空。
 青猫のほんとうの名前は青空っていうんだよ。

 わたしたちは、水色の淋しさと金色の喜びをカラダの内側にギュッと抱きしめて、ここで風に吹かれます。
 わたしたちは、ことば少なくて、うんとしあわせでうんとふしあわせな星の子どもです。

ミルクをこくりと飲んでから「甘くってあったかくって少うししあわせ」って、めちゃくちゃな笑顔で青空が言った。

1994.4.8



カタカナ表記が多いなと。笑。
タイトルからそうでしたん。
時代ですねぇ。






いいなと思ったら応援しよう!