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ぼんやりお月様ドラマ小説 『うみうしの一日』

ソファーの背もたれの上にのっしりと寝そべった海牛は、窓から外を見ています。
4月だというのにあのフワフワと空中に遊ぶのは雪。 
庭の薔薇の木の小枝がブルブルカクンと風に揺れています。あの薔薇の木には夏の終わりに極薄いピンク色の花が咲きます。
アカシアはまだ冬囲いをしたままで、白いビニールテープの一ヵ所が解けてヒラヒラと。

海牛は、この風でヒラヒラと翻るものが気にかかります。どうしてもです。
海牛の瞳に白いヒラヒラが海の波のように映ります。

ずっと前に、海岸に寄せてくる波を汽車の窓から見たことがあります。白い波頭は塩ばかりで出来ていると思いました。あれはやはり塩でこしらえた彫刻に違いないと思いました。

雪雲で覆われた空は、それでもぼんやり暮れ色になり、本を読むには灯りが要るくらいにまでなりました。
海牛はまだ窓から外を眺めています。まだ海のことを考えています。
ずうっと昔に暮らしていたはずの海のこと。
汽車の窓からしか見たことがない海のこと。

もうじき月が昇ってくるでしょう。
体の中に海を包み込んで陸に上がってきた海牛の一日が終わります。
きっと明日も同じ一日。
ソファーの背もたれの上に寝そべって、そうして海牛は目を閉じいました。
終幕。


1980年代後半かな?
過去の自分が書いたものではあるけれど、ちょっと何言ってんだか分かんない(爆)
それでもなにかここから発展させられるような気がしたので書き留めておきます。



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