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ぼんやりお月様ドラマ小説 『先週死ンダ友人』

きのうは三日月だったので窓を開け放して寝ました。
お布団の中で月が見えるように横になると大変良い心持ちがして、ぼくは眠り込み夢を見たようです。

夢の中では先週死んだ友人がアフリカの太鼓を叩いていました。
髪の毛を真っ赤に染めた友人は、熱心に楽しそうにポコポンとやっていました。

その様子を見るとぼくはたまらず妙に愉快になって、髪の毛をいつの間に真っ赤にしたのか聞いてやろうと思い、ニヤニヤしながら彼の側へ寄っていきました。
彼はぼくの気配を感じないのか、まぶたを閉じて相変わらず熱心にポコポンしている。

「ぷっ、どうしたんだいその頭」

一瞬、ぼくの口から出たことばがビタッと空に張り付いて静止しました。
と。
思うと。
彼の太鼓を叩く手が止まり、閉じられていたまぶたがゆっくり開いてぼくの両目と合致しました。

彼の顔は大変悲しいような、大変申し訳ないような、大変困ったような顔でした。

それを見るとぼくは、なんだか急に心がカラッポなどうでもいいような気持ちになって、次に言おうとしていたことばが宙ぶらりんになってしまいました。

 


書いたのは1990年ころか、それ以前か、記憶が曖昧です。
四半世紀以上前なのです😇






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