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冬の夜の庭にいる【短いお話】

冬の夜を待っていた。
“冬の夜の庭にいる” を決行するのだ。

ママに見つからないように慎重に玄関のドアを閉めた。だって見つかったらきっと注意される。
「この雪の中どうして庭なんかに?風邪を引いてしまうでしょ?」
どうしてなんて聞かれても困っちゃう。
“冬の夜の庭にいる”をしてみたいだけ。ママが分かってくれるとは思えない。


春と夏と秋はこの庭で過ごした。
植物に水をあげて時々栄養もあげた。葉っぱが風で鳴る音を聞いた。
土を耕した。蟻や地蜂や名前を知らない虫が出てきてすぐに隠れた。
みんな一緒にいた。賑やかだった。

庭に積もった雪はしんと静かで、ほんの少しだけ青色だった。
冬囲いをした薔薇、ライラック、ローズマリー。
チューリップの球根は秋の終わりの日に素焼きの大きな鉢に埋めた。
今はみんな静か。ふんわりと雪をかぶっている。

オンコの木の根元まで歩いて、しゃがんでみた。赤くて丸いオンコの実がすぐ傍の雪の上にふたつ落ちている。
枝の奥の方からかさこそと聞こえる。雀?
呼吸を整える。
吐く息があんまり白すぎて驚かせてしまうのは嫌。

ヒトノコがきたよ。あのヒトノコはいつかそこの大きな黒い石の上に雀にごはんを置いていったよ。おうちの中にいるオレンジ色の鳥が食べているのと同じやつだよ。美味しいやつだよ。
ヒトノコがいるよ。そのヒトノコは雀が作った砂浴びの穴を埋めないでそのままにしてくれたよ。砂浴びはだいじだよ。

青白い雪のところどころに氷の粒がたくさん光ってる。
目を細めてみるとキラキラが滲んでもっと増えてみえた。きれいだな。

オリオン。
ひとつふたつみっつ。三つ星はすぐ見つけられる。夜空はインクの色だね。



すんごく不時着気味だけどあげておきます。書き直すかも😭

シロクマ文芸部さんの存在を知りお題に挑戦してみましたが、締め切りに間に合わず思うようには書けずで全然駄目でした。
皆さん凄いな~。

※オンコとはイチイのことです。北海道での呼び名です。

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