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我慢は身体に毒

5月

苦しまずに亡くなって良かった…と思うようにしてます

先日、七回忌のご法事に伺いました。

40代のご婦人と、当時小学生だったけど今年中学2年生になるツトム君。お連れ合いを亡くして、もうすぐ6年が経とうとしています。

突然のご逝去でした。その日もいつも通り、お連れ合いは「おーい、ツトム、早くしないと先に行っちゃうぞ」と、登校するツトム君と一緒に、元気に仕事に出かけて行きました。お昼過ぎに職場で倒れ、ご遺体として帰宅。特に大きな病気をしたこともなく健康体だったので、夢にも思わない形でのお別れでした。

お通夜・お葬儀のとき、ご婦人は呆然とされ、ツトム君は泣きじゃくっていました。

中陰のお勤めで毎週ご自宅に伺い、ご婦人とツトム君と一緒にお仏壇の前でお勤め。ご婦人は毎週お宅に伺うといつもニコニコとされていて和やかに迎えてくれました。

お葬儀を終えて、1ヶ月が経ったころ「いまのお気持ちどうですか?」と尋ねました。

クヨクヨしてたら夫に怒られそうな気がして。苦しまずに亡くなって良かった…と思うようにしてます。

「思うようにしている」との言葉を聞き、笑顔の裏にはどれだけ深い悲しみや、大きな喪失感があるのだろう…と胸が潰れる思いでした。

悲しみや怒りを一人で抱えすぎちゃいけない

それから6年が経ち、七回忌のご法事を終えて帰り際に立ち話のなかで、ご婦人がこれまでの心情を語ってくれました。

もう6年が経つんですね。この6年間、仕事に子育て、家事、怒涛の毎日であっという間でした。今日ご法事をつとめながら、悲しんでる姿や弱っている様子を見せちゃいけないと思い、笑顔を取りつくろっていたあの日々を思い出しました。ツトムも小学生だったし、私が荒れて落ち込んでいたらいけないと思って、必死の毎日でした。

だけど、耐え切れるわけじゃないですか…。ツトムが寝てから、毎日毎日お仏壇の前で泣いてました。いつまで「いってきます」のままなの、早く「ただいま」って帰ってきてよ。なんでこんなに早く逝っちゃうの。私が一人でどれだけ辛く寂しい思いをしてるか知ってるの!?って怒ったこともあります。お仏壇の前なら泣いても怒っても良い気がしたんです。

不思議なもので、溜まった感情を吐き出すと気持ちがスッキリするんですよね。また次の日にはいろんな感情が押し寄せてくるんですけど。だけど、安心して吐き出す場所があったから、どうにかやってこれたんだなと思います。

私たちは、一人で抱えきれないほどの深過ぎる大き過ぎる感情を抱かざるを得ないときがあります。

時にその感情を隠さないといけない場面もあるのかもしれませんが、悲しみや怒りを一人で抱えすぎちゃいけない。自分だけでは背負いきれないとき、渦巻く感情を素直に吐き出す場所が私たちには必要なんだろうなと思います。

それは決して死の縁だけでなく、日常生活のなかで生じるストレスだって同じこと。感情を吐き出すことで気持ちが楽になります。自分なりの感情を吐き出す方法や装置をもっておくのは、困難の多い人生を生き抜くためにも必要なのではないでしょうか。

このまえ雑誌で「涙活 (るいかつ)」の特集を目にしました。涙を流して心も体もデトックス。そんな方法もあるそうです。

そうそう、最近私がポロポロと涙こぼした映画が『ワンダー 君は太陽』。

ごく普通の10歳の少年オギーは、生まれつきの障がいにより、人とは違う顔をもっていた。幼い頃からずっと母イザベルと自宅学習をしてきた彼は、小学5年生になって初めて学校へ通うことに。はじめのうちは同級生たちからじろじろ眺められたり避けられたりするオギーだったが、オギーの行動によって同級生たちは少しずつ変わっていく。 (映画.com『ワンダー 君は太陽』)

Amazonプライムなど動画配信サイトでも公開されている様子。涙流したい夜にオススメです!

5月

※ご法事に伺ったご家族の話は、個人が特定されないように加工編集しています。

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#お寺の掲示板
#こうげそ

上毛組 (こうげそ) お寺の掲示板とは…

福岡県豊前市・上毛町・吉富町にある18のお寺でつくる浄土真宗本願寺派 (西本願寺) のグループ「上毛組」が、20年以上に渡って毎年制作している伝道ポスターです。仏教の教えや、仏さまのお心が伝わることを目指しています。

このコラムを書いたお坊さんは…

霍野 廣由 (覚円寺 副住職) さん
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