こたつとみかんは最強タッグ
厳しい環境に身をおくことの意義
一年で最も寒い時期であるとされる大寒 (1月20日) を過ぎましたが、最近も各地で大雪が観測され、寒い日はまだまだ続きそうです。
この言葉は、「冬がやってきたならば、春は遠くはないだろう」という意味のほかに、「厳しい冬に耐え抜けば、やがて楽しい時期がやってくる」との意味もあるそうです。厳しい環境に耐え、生きていくことの大切さが込められた人生訓です。
古来、柔道や剣道、空手などの武道では、寒さが一番厳しい真冬に、寒稽古と呼ばれる練習で心身を鍛える風習があります。寒さの厳しいなかの練習はとてもつらいものですが、あえてそのつらさに挑み、克服することで、耐える力や頑張る意欲といった自分のなかに眠っている潜在能力を引き出すことができるのだそうです。
人生には「寒い冬」の時期もあることでしょう。しかし、努力を続けることによって「暖かい春」が訪れる。人間がたくましく成長するためには、厳しさに耐える経験も必要なのだと伝えています。
いままさに困難を抱えている方にとっては「もう少しの辛抱だ」と勇気をもらえるメッセージかもしれません。あるいは、困難を乗り越え成功した経験をもっている方には大いに納得できる言葉だと思います。
…しかし、「そうかもしれんけど…苦悩を抱え絶望を感じているときに、根気良く努力し続けられる人ばかりじゃない。今が苦しいのに先のことなんて考えられない。絶望に耐え努力し続ける…少なくとも僕には無理だな…」となんだか後ろめたく思います。出来損ないを突きつけられる気がします。
絶望を分かち合うことによって生まれる希望
そんなとき、熊谷晋一郎先生の言葉に励まされます。熊谷先生は、脳性麻痺という障がいを持ちながら小児科医として活躍し、現在は東京大学先端科学技術研究センターで障害と社会の関係について研究されています。
熊谷先生は、長い間、失禁の問題を誰にも話せず、心の中に抱え込んでいました。けれどある日のこと外出先で漏らしてしまった。慌てたものの、たまたま通りすがりの人に事情を説明し、きれいに洗ってもらったことがあったそうです。
そのとき熊谷先生は「一人で抱えていた絶望を見ず知らずの他人と分かち合えた」と感じ、「世界はアウェー(敵地)じゃなかった!」と絶大な希望を味わいました。
たった一人で抱えてきたことを他人に話し、分かち合い「もう大丈夫」と思えると、不思議な希望が生まれる。絶望が、深ければ深いほど、それを共有できたときに生まれる希望は力強いのかもしれません。
話や思いを共有できたからといって、実際には問題は何も解決していないのだけど、それで得られる心の変化はとても大きいと熊谷先生は教えてくれます。
一人では克服困難なことであっても信頼できる誰かと分かち合うことで、真っ暗闇のなかに弱く小さな光がほんのりと照らし出される。その微かな明かりを頼りに歩き出すことができるかもしれません。
もしいま「人生の冬」を感じられているなら、絶望を感じられているなら、お寺にお越しください。もしかすると、小さいけれど暖かな明かりが見つかるかもしれません。今日も仏さまと一緒に皆さまのお越しをお待ちしております。ようこそ、ようこそ。
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