いま目の前にあるものに感謝すべし
苦しみのほんとうの原因
この三年間、みなさんはどう過ごされましたか?
コロナ禍でこれまでの日常がうしなわれ、反対に非日常だったことがスタンダードになりました。たとえば気軽におでかけすることも難しくなりましたし、みんなで会食することもしづらくなりましたよね。
今までと勝手が違い多くの方が苦しまれたと思います。
この苦しみの原因を考えてみると直接的には「コロナのせい」かもしれませんが本質的にはそうではないと思います。
この世は諸行無常。すべて移り変わり、死に変りしていく世界です。
ですが、私達はその真実から目をそむけ、今までの「当たり前」がずっと続くものと思い込んできました。その結果、以前の当たり前ができなくなった今では多くの苦しみが生まれ続けています。
果たしてこの苦しみはコロナ禍が終わればなくなるのでしょうか?
いえ、たとえコロナ禍が終息したとしても今後私達の人生を揺さぶる出来事が新たに起こってくることでしょう。
仏教では人間の代表的な苦しみを生老病死という四つに分類しますが、これらは人間にとって切り離せない苦しみです。ですから、その苦しみはやがて私達の目の前に姿をあらわすでしょう。(やがてと言っても遠い話ではありません。)
そんな時、私達の今までつちかってきた価値観はあっという間に崩壊していきます。「どうして私が」と嘆き悲しみ、進むべき方向を見失ってしまうかもしれません。目の前が闇に閉ざされてしまうかもしれません。
ですが、安心してください。
そんな真っ暗な闇の中でも、私達の行く末を明るく照らし出してくださる存在が私達のそばにはおられるのですから。
闇の中の焚き火
ところで、話は変わりますが私は最近趣味でソロキャンプをはじめました。ソロキャンプとは一人でおこなうキャンプのことです。
山へ行き、ひとりでテントを立て、ひとりでリビングスペースを作り、ひとりで寝床を作ります。
ひとりで全ておこなうのはなかなか大変ですが、普段自動車での移動ばかりで体力が落ちているのでちょうどいい趣味ができたなと感じています。
ただこのキャンプ、昼間はいいのですが夜がけっこう怖いんです。
大の大人が何をと思うかもしれませんが、電源がないキャンプサイトの場合、夜は何も対策をしなければ真っ暗で身動きをとるのが難しいほどです。
またテント泊ではがっしりとした板壁で作られた住宅とは違い布切れ一枚隔てた向こうは完全なる屋外になります。
キャンプ場は山に設置されているところも多いですから夜中は姿の見えない動物の足音が近くで聞こえたりしますし、どこからかシカやイノシシの鳴き声が響き渡ります。風が吹くと木の実や枯れ葉が枝にぶつかりながら落ちていく音なども聞こえます。
辺りは真っ暗ですから耳が非常に敏感になっていて普段ならなんてことない物音でも反応してしまうくらい神経質になってしまうんです。
そんな暗闇の中で唯一、安心できるのが「焚き火」の時間です。
焚き火をすると、さきほどまで真っ暗だった闇が炎の灯りに照らされ周りがぼんやりと映し出されます。また炎の熱によって体があたためられ、体がほぐれていきますし、炎のゆらぎを見ていると自然と心が安らいできます。
焚き火を見ながらほっと落ち着く時間はなんとも言い難い貴重なものです。
仏様に照らされ包まれている
私たちの人生も夜の闇のように辺りが見えなくなる瞬間があります。
そんな時に焚き火のように周辺を照らし、真実を映し出しあたたかな慈悲でつつんでくださるのが阿弥陀様という仏様です。
阿弥陀様のおはたらきには智慧の光明(ちえのこうみょう)といって闇を打ち破るちからがあります。この闇とは私達の迷いの心をあらわしていますので、迷いを打ち破るというわけです。
真実に気づかず当たり前でないものを当たり前と感じ、移り変わっていくものをよりどころとしてしまう私たちですが、阿弥陀様はそんな私たちをほうっておけないと「そうじゃないよ、真実に気づいておくれ、どうかこの弥陀をよりどころとして迷いのない人生を歩んでおくれ」と願っておられます。
そしてその願いは力となり、「なもあみだぶつ」というお念仏となって私に届いています。姿は見えませんが阿弥陀様は声の仏として私とともに人生を歩んでくださっているのです。
もし、これから先に暗い夜道に出くわした時、自分の価値観が大きく揺らいでしまった時にはどうかお念仏をとなえてみてください。となえるところ、私のところに阿弥陀様はいてくださいます。
つまり、私たちはけっして一人ではなく、明るく道を照らし、あたたかなお心で私を包んでくださる阿弥陀様がご一緒なのです。
どうかそのことを当たり前じゃない世界のよりどころとしていただければ幸いです。
*
「良いな」と思ったら、掲示板の写真を撮って、ハッシュタグをつけてSNSでシェア!友人・知人にもあたたかな言葉のおすそ分け。
*
上毛組 (こうげそ) お寺の掲示板とは…
*
このコラムを書いたお坊さんは…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?