いつ死んでも悔いのないように毎日をいかに生きるか
大切な方の死を通して、自らの死をも自覚する
半年ほど前に、93歳の男性のご門徒がご往生されました。その男性は若い頃から大工をなされていて80歳まで現役バリバリ。熱心で、丁寧な仕事をすると評判の良い大工でした。さらに大工仕事に限らず、家の困りごとがあると何でも屋となって地域の人たちを助ける、皆んなから慕われる方でした。
お葬儀のなかで、20代前半のお孫さんが弔事を読んでくださいました。
おじいちゃんは腕の良い大工として地域のちょっとした有名人でしたね。小学生の頃、同級生から「おれの家は、お前のじいちゃんに作ってもらった」と聞かされて、どれだけ誇らしかったことか。
小さい頃、おじいちゃんが家の作業場で朝早くから夜遅くまで材木を整えたり、暑い日も寒い日も現場に行ってたくましく仕事をする姿を見てカッコいいなと思ってました。
僕は仕事に就いた今だからこそ感じることがあります。生きがいをもって熱心に大工をしていたのは、お金儲けの作業ではなく、その家に住む家族の幸せを願っていたんだろうなと思います。そんなおじいちゃんの姿や生き方に憧れを感じていました。
おじいちゃんの姿を思い返しながら、今の僕の様子を省みると、とても恥ずかしくなります。
毎朝起きるたびに「仕事に行きたくない」「このまま寝ていたい」「ゲームしたい」とついつい思います。仕事にいっても「集中力がない」「やる気がない」と上司に怒られます。
おじいちゃんとの思い出を振り返りながら「このままではダメだ」との思いが込み上げています。
おじいちゃんのように完璧には出来ないとは思います。ゲーム好きだし、漫画好きだし。だけど、幼い頃に憧れたおじいちゃんの生き方を見習いたい。ぼくもいずれ死ぬのだから後悔のない人生を歩みたい。
これからも右往左往する僕の様子をあたたかく見守っていてくださいね。おじいちゃん、ありがとう。
弔事のあと、会場はあたたかな空気に包まれていました。
お孫さんはおじいちゃんの死を通して、自らの死をも自覚し、生き方を見つめ直したようでした。
棺桶リスト?
もう10年も前に見たものですが、とても印象に残っている映画が『最高の人生の見つけ方』です。
この映画の原題は『The Bucket List』。映画のなかでは「棺桶リスト」と訳されていますが、ようは「死ぬまでにやりたいことリスト」です。
入院先の病室で知りあい、共に余命は6か月の2人のおじいちゃんが、やりたいことをすべてやり尽くそうと決意し、無謀にも病院を脱出。「棺桶リスト=死ぬまでにやりたいことリスト」を手にさまざまなことに挑戦する、といった内容です。
余命を宣告されたおじいちゃんたちがこれまでの人生と苦闘しながらも、残りの人生をユーモアたっぷりに生ききる姿に、不思議なほど爽快感をおぼえ、あたたかい気持ちに包まれる作品でした。
まだ観たことのない方は是非とも!
私はこの映画を通して、自らの死を自覚することは、残りの人生で何を大切にすべきかが立ち現れてくることがあるんだ、ということを学びました。
先立って逝かれた亡き方々に想いを馳せる
今年もあっという間に8月。お盆の時期です。
お盆は、レジャーに繰り出して思いっきり遊んで日頃の鬱憤をリセット!も大切ですが、お時間あれば是非とも実家やお寺、お墓などご先祖や亡き方々をゆっくりと偲べる場所に足を運んでいただければと願います。
先ずもって、いまこの私にいのちを紡いでくださったご先祖や亡き方々に想いを馳せる。そしてこの私も、いずれいつの日か、この世のいのちを終えゆく存在であることを想像する。そんな営みのなかで、ほしい未来の在りようがうっすらと浮かび上がってくるかもしれません。
新型コロナウイルス感染症も第七波が押し寄せ、今年も帰省することが難しい方もいらっしゃるかと思います。実家に帰れず、お寺やお墓に参れなくても、お盆の頃には、先立って逝かれた亡き方々にゆっくりとじっくりと想いを馳せる時間をとっていただければと思います。
暑い毎日が続きます。どうぞ気をつけてをお盆のお参りにお越しください。ようこそ、ようこそ。
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上毛組 (こうげそ) お寺の掲示板とは…
福岡県豊前市・上毛町・吉富町にある18のお寺でつくる浄土真宗本願寺派 (西本願寺) のグループ「上毛組」が、20年以上に渡って毎年制作している伝道ポスターです。仏教の教えや、仏さまのお心が伝わることを目指しています。
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このコラムを書いたお坊さんは…
霍野 廣由 (覚円寺 副住職) さん
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