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デザイン科OBインタビュー 正田冴佳先輩 中編

都立工芸高校デザイン科の進路学習の一環として行なうインタビュー企画、今回はグラフィックデザイナーとして幅広く活動されている正田先輩にお話を伺いました。
インタビュアー: OBインタビュー担当生徒3名

正田先輩のwebサイト
https://saekashoda.com/Page_ABOUT


前編ではグラフィックデザイナーになるまでの経緯や、オススメの美術館や書体について伺いました。

前編はこちら

続く中編では、進路選択についてのお話や、工芸高校在学当時の思い出などについてお話いただきます。


―工芸高校でどのようなことを学んで今のお仕事に活かしていますか。


ものづくりの基盤や心構えみたいなものは、工芸で学んだことが多いように思います。

レタリングの授業で烏口と溝引定規を使っていた時、先生から「手をいつも綺麗にしていなさい。手が汚いまま仕事する人はデザイナーじゃないぞ。」と言われて。その言葉が今でも私の中にすごく強く残っていて。手がベタベタしてきたと思うとすごく気になってしまって、頻繁に洗いに行きます。(笑)

あとは、ピクトグラムやアイコン、フォントなどの細かなものを自分で作ることに抵抗がない(むしろ好きな)のも、工芸時代に手作業で一から色々なものを作ってきたお陰かもしれません。

―選択授業は何を重視して選びましたか?


映像の授業をとっていました。当時私はラーメンズにハマっていて、ラーメンズの小林賢太郎さんがお一人で作っていた映像作品があって、あんな作品を私も作りたい!と思って。将来のことなんて何も考えず、ただ楽しそうだと思って映像の授業を選びました…。(笑)

でもデザイナーって、豊富な経験や知識が武器になる職業でもあるので、自分が少しでも興味を持てることがあれば、とりあえず何でもやってみたら良いんじゃないかなと…。そんな風に選択授業を選んでも良いんじゃないかなと思います。

―普通教科で今の仕事に活かしていることはありますか。


どれも活きてると思います。勉強は好きでどの授業も楽しかったんですけど、さっきも言った通り、デザイナーは知識や経験が多いことが武器になる職業でもあるので。

大人みたいなこと言いますけど、デザイナーにならないとしても教養はあって困らないものなので。勉強はしっかりしておいた方が良いぞって思います。(笑)

―進路実現に向けてはどのようなことをしましたか。


大学は、担任の先生から日藝のAO入試を受けないかと声をかけていただいて、それで頑張ったら受かったんですけど。

元々は美術予備校に通おうとしてたんですよね。一般入試で美大を受けようかと思っていました。予備校も見に行って、パンフレットも貰ってきてはいたんですけど、その当時付き合っていた人に「予備校行っちゃったら全然会えなくなるじゃん」と止められて、私も「確かに…」と思って諦めました…。(笑)

日藝に通って、しっかり学べたし、デザイン学科以外にも映画や写真など、色々な学科の子が居て、今その子たちと仕事を一緒に出来たりもしているので、全然後悔は無いんですけど、ちょっとだけ不完全燃焼というか…

予備校に行って、もっとデッサン上手になりたかったなとか、実技だけじゃなく普通教科ももっと勉強したかったなとか、一般入試で挑戦してみたかったなっていうモヤモヤは、正直言うと、いまだにあるので。

皆さんはあまり周りのそういうことに左右されずに自分でしっかり考えて決めた方が良いと思います。

―志望校は何を重視して決めましたか。


担任の先生から日藝へのAO入試を勧められたことがキッカケで進路を決めました。

他にも、当時工芸にいた中島先生の大学時代のご友人が、日藝で色彩学の教授をされていて、とても良い先生だと教えていただいたことや、日藝はBauhausのデザイン教育を継承してる美術大学だよなんて話を聞かせていただいて、良いかもなと。


あとは、日藝ってデザイン学科以外に、映画や写真、音楽など、芸術系の色々な学科の人がいるんです。なのでデザイン以外の意見や視点を得られるかもとか、将来他学科の子達とも一緒に仕事できるようになるかもとか、そういう期待もあって決めました。

どんな先生がいてどんな授業をしているか、どんな卒業生がいるかは、見た方が良いと思います。

―大学ではどのようなことを学んでいましたか。


1~2年生の頃はグラフィックもプロダクトも建築も全て網羅して、デザインの基礎を学びました。

3~4年生で自分で選択して決めるようになってからは、キャンペーンの企画・デザイン、CM制作、広告グラフィックのデザインについてなどを主に学んでいました。

―大学で1 番の思い出はなんですか。


3、4年生になって広告系のゼミに入ったので、そのメンバーや先生とよくファミレスや居酒屋さんに行って、一晩中お酒を飲みながら、ああでもないこうでもないと作品の話とか、他にも下らない話をしていたのが楽しかったですね。

皆作るのが好きで、ライバルだったので、誰よりも1番良いものを作るぞみたいな空気がずっとあって、ワイワイふざけあいながらも切磋琢磨していたのが楽しかったと思います。

高校生のうちに経験しておいた方がいいことはありますか。


工芸生は課題も多くて忙しいと思うけど、今のうちにたくさん見て、たくさん作るっていうのは大事かもしれない。作る癖を作るというか…。

好きなデザイナーさんや作家さんが居たら、その人のデザインを模写してみるのも勉強になります。

他にも何か映像作品を作ってみるとかフォント作ってみるとか、課題以外で自分の好きなものを自由に作ってみるっていうのは大事かなと。

あとは作ったものを、尊敬しているデザイナーさんのところとかに思い切って持っていって見てもらう、みたいなことが出来るのも学生の特権かなと思うので、ポートフォリオ作って持ち込みしちゃうとか…。やってみても良いのではと思います。

―美術と関係ないところで役に立ったことはありますか。


家の片付けは得意なんですけど、仕事でいつもカテゴリ分けとか情報の整理整頓とかしてるからかもしれませんね。

―課題や仕事を効率的に進めるコツは何かありますか。


私はあまり効率的に進められないタイプではありますが…簡単に終わるものから先に終わらせるようにはしています。
あと部屋は綺麗を保つこと。部屋が汚いと気持ちも空気も淀んでいくので。

―課題や仕事でどうしてもアイディアが出ないとか煮詰まってしまった時に先輩が行っていた対処法は何かありますか。


私はもうがっつり休んじゃいますね。たっぷり寝るか、散歩に行くか、運動するか、遊びに行っちゃうか。悩んで机の前に居てもどうにもならないことがほとんどなので、全然仕事と関係ないことをして気分を切り替えています。

―工芸高校に通って良かった事はありますか。


先生方も友人たちも、作ることが好きな人ばかりだったからなのか、妙な連帯感・安心感があり、そういう人たちと出会えて高校時代を一緒に過ごせたことは、自分にとってとても良い経験になっています。

―工芸高校じゃないとできなかったことはありますか。


高校生からデザインについて学べたり、実習でスキルが身についたり、そういうことは普通科高校では無理で、工芸じゃないと出来ないですよね。

あとは同じような夢や興味を持った友達が出来て、そういう子たちと3年間一緒にものづくりをして過ごせたことも、工芸じゃないと無理だったんじゃないかと思います。

それと、他の科の友達と話すのも楽しかったです。科によって実習の内容も設備も何もかも違うので、それぞれの科でどんな課題が出るのか、どんなものを作っているのかを聞くのが面白かったので。それは工芸ならではでしたね。

―工芸高校の楽しかった思い出を教えてください。


今も仲が良いのですが、当時から仲の良かった友達と、学校帰り神保町をぶらぶらして、その後当時神保町にあったモスバーガーに行くのが放課後の定番コースでした。

席につくと各々鞄からスケッチブックを取り出して、二人で何時間もお喋りしながら、人物ドローイングや落書きをしていました。今でも当時のスケッチブックは全部取ってあって、良い思い出です。

あと放課後やお昼休みに一人で図書室に行くのが好きでした。頻繁に通っていたこともあり、当時の司書さんとはよく世間話をしたり、おすすめの本を教えてもらったりしていました。フランス語を話せる司書さんで、フランス語教本を頂いたりもしました。

―正田先輩が過ごしたクラスはどんな雰囲気でしたか。


皆仲が良かったです。グループとかも一応あったと思いますが、あまり関係なく、全体的に仲が良かったように思います。男の子がクラスに3人しかいなかったからなのか、女子校というより、性別の概念が無いようなクラスでした。

楳図かずおや山岸涼子、萩尾望都などの古めの名作漫画を皆で読んで感想を言い合っている子たちが居たり、黙々と机で一人絵を描いている子が居たり。

普通科高校で誰とも喋らず机で絵を描いてる子が居たら、「あの子変わってるね」なんて言われたりしそうですけど、そういう空気は全然なくて、皆伸び伸び、思い思いに過ごしていたと思います。
今でも忘年会や新年会で集まったりしていますよ。

後編では、具体的なお仕事のお話やデザイナーとしてのこだわりなどについてお話いただきます。


後編へ続く


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