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カライとツライ

────エッセイ

辛いものが好きです。初めて行くお店でメニューに迷ったら、辛そうなものを頼むくらい好きです。特に「旨辛」という言葉に弱いんですよね。旨辛チャーハン、旨辛煮込み、旨辛うどんに旨辛チキン。どんな料理も「旨辛」の二文字が付くと美味しそうに見えるから不思議。

辛いものが苦手な方には理解不能だと思うんですけど、辛い料理って一口目から食べ終わるまで、人生みたいな物語があるんです。なに言ってんだと思うかもしれないけど、まぁ聞いてください。

どんなに激辛料理でも、最初の一口は何も起こりません。「あぁ、美味しい」と思う瞬間がコンマ何秒かはあるんです。その後、怒涛の辛味攻撃が始まります。舌が悲鳴を上げ、喉が炎上し、額には汗が滲みます。そして、なぜかわからないけれど、もう一口食べてしまうんですよね。

辛い物を食べる人を客観的に見たら自虐行為そのものです。顔を真っ赤にし、鼻水をすすりながら、「う〜ん、最高!」と唸る姿は、自分を痛めつけているようにしか見えません。でも、辛い食べ物には不思議な魔力があります。痛みを伴うこの経験が、なぜか病みつきになるんです。

それは、人生における苦労と似ているかもしれない、なんて思っちゃうんですよね。大袈裟なのは分かってるんですけどね。仕事とかでつらいことに直面すると、当たり前だけど嫌じゃないですか。でも、そのつらい経験を乗り越えた後の達成感、そして少しずつ耐性がついていく過程が、何とも言えない満足感を与えてくれる気がするんです。

からいのも一緒で。からさと向き合う度に、ぼくたちは少しずつ強くなります。以前はダメだった、激辛料理の奥底に潜む旨味に気が付けるようになるんです。そうすると、達成感と満足感が半端ないんですよね。やったぞー!と小さくガッツポーズしたくなります。

舌の上の小さな挑戦を通じて、人生の苦難に立ち向かう勇気を得るのかもしれません。そう考えると、辛い食べ物は単なる調味料ではなく、人生の試練の縮図と言えるかもしれませんね。


みたいな話を、旨辛で有名なラーメン屋に妻と行ったときにしたんですね。辛い!旨い!と汗かきながら、ぼくが熱弁したんですよ。そしたら、「人生の試練っていうか、食べ過ぎるとトイレの試練が待ってるよ」と切り返されたんです。思わず、「上手い!」って言っちゃいました。

明日のお腹が穏やかでありますように……。でも、また辛いもの食べちゃうんだろうな。人生も辛いものも、上手に付き合っていけたらいいな、なんて思いながら、次の「旨辛」メニューを探しているのでした。


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