美味しい月が描けるまで
9/22(火)に発表された私設賞「お月見 コンテスト」
塩梅かもめさんの作品が大賞に相当する満月賞を受賞されました。この作品、グループ参加という変わったカタチなんですね。(詳しくはコチラ)
ぼくはグループ参加のエッセイ投稿とは別に、トップ画作りにも関わりました。今回はその制作過程を書こうと思います。
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かもめさんからもらったオーダーは、「食」「月」「世界・宇宙の広がり」をイメージできるような画像。
見た瞬間、これはなかなか難しいオーダーだな、と思いました。グラフィックをキーワードから考えるとき、ぼくは「何で見立てるか?」ということを発想の起点にすることが多いです。
例えば、上のキーワードから単純に作っちゃうとこんな絵になります。
キーワードは全部網羅してますね。でも全然素敵じゃない。
理由はキーワードを画像に置き換えて配置しただけだから、です。トップ画がしゃべり過ぎて画面がギチギチしてる。余白(物理的なものじゃなくてメッセージ性みたいなもの)がないと、見る人の想像力を奪って息苦しくなっちゃうんですね。なのでいったんキーワードを「食」「月」に絞って考えました。
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仕事の場合は、ラフスケッチを描いてイメージを膨らませて、画像は有料のPhoto Stockで購入したり、カメラマンに撮影をお願いしたりと様々です。
noteのトップ画は、基本フリー画像から作っています。日本のイメージを作る時は、pixabay や photoAC を使うことが多いですね。今回は海外の雰囲気を出したかったので Unsplash から探しました。高品質な写真がたくさんあるオススメのサイトです。
「食」に関する画像をスクロール見しながら「月」を何に見立てるか考えます。気になる画像が出てきたら頭の中でラフスケッチを描く。いけるかな?と思うアイデアがあればPhotoshop上で本格的に合成や筆を入れていきます。頭の中で描くラフスケッチって文字だと伝えづらいけど、イメージはこんな感じです。
脳内スケッチで伸びそうにないアイデアはどんどん捨てていきます。検索ワードを「meal」「food」「soup」と変えていく中でいくつかピックアップしてPhotoshopで加工した中の1つがこれ。
コーヒーのクレマ(泡)を月の模様に見立てたアイデアです。シンプルで悪くないけど… 分かりづらいですよね。とくに今回は、各国の月見に関するエピソードがテーマになってるので「世界」を感じるイメージを入れたかった。「We're all connected by moon」みたいにサブテキストで表現する方法もあったのですが、それは最後の手段にとっておいて別のアプローチを考えました。
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基本に立ち返って「世界中で食べられているものってなんだろう?」って調べました。明確な答えは見つからなかったけど、多分「パン」かな?と思ったわけです。米よりも麺よりもパンだろうと。そこで検索ワードに「bread」と入れて脳内スケッチを再開させました。
そこで目に止まったのがこの画像です。
色んな種類のパンがあって各国感もあるし、中央の黒部分を使ってグラフィック展開もしやすい。このあと、この写真に目玉焼きを合成したりクロワッサンを月に見立てたりしたんですけど、しっくり来ず…
イケる!と思ったアイデアがスタックすると迷いが生まれます。「そもそもこれ、パンがテーマの企画に見えないか?」とか。しばし考えましたが、当初考えていた画像合成だけでまとめるのはやめて、イラストを描くことに軌道修正しました(今になってみればこれが良かった)。
万国共通で食をイメージするものといえば…「ナイフとフォークでしょ!」
ここは素直なモチーフでイラストを描きおこしました。
この絵(アイコン?)を描きあげたときに「あっ!!」と思い出したんです。数日前、トップ画制作をお願いされたときに、かもめさんとこんなやり取りをしたことを。
月は地球のまわりを回っている
当たり前すぎて普段意識してないけど、満月の夜は世界中のどこでも満月が見えるんですよね。この当たり前に気が付いたらアイデアが連鎖して一瞬で繋がったんです。文字通り閃いた!というヤツですね。お皿の内円は地球にしか見えなくなったし、外円はどう見ても月の軌道にしか見えない!
デザインをしていて、この閃く瞬間が一番スキです。脳内スケッチの解像度が爆上がりして完成イメージが頭の中にハッキリと思い浮かぶ。そして出来上がった画像がこちら。
完成すると新たなアイデアが浮かんでしまうのがデザイナーの性で…。いったんプライオリティを下げていた「宇宙の広がり」も表現したくなってきました。そこで追加で作ったものが最終的に採用された、この画像です。
漆黒の夜の海に映る月明りを夜空に瞬く星の光に見立てました。
かもめさんは、どちらの案にするかとても悩まれ、お友達に相談されたそうです。選ぶのを決めかねるほどのアイデアを出せたとき、デザイナーとしてこれほど嬉しい事はありません。
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グループ参加の各投稿にかもめさんが美しい言葉を添えて、新たな一つの作品となった「満月賞」受賞作品はこちら。
マガジン形式でもまとめられています。アプリの方はこちらの方が読みやすいかも。秋の夜長に、ぜひ。
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