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藍羽放浪記・・・16ページ目

紫の炎に包まれ現れたその男は、僕を冷たい視線で見つめている。

「うや..…らか?」

彼の両の手には2本の刀が握られている。
いわゆる臨戦態勢というやつだ。

「まって!!違う!ボクジャないンだ!」

「分かってる。黙ってろ。」


恭赤はそう言うと腰を低くかがめてこちらに突進してきた。
思わず両腕で目の前を覆う。

こういう戦いの時どう動くべきかなんてものを妄想していた時もある。
腕を掴む。足を払う。武器を捨てさせる。

頭の中での戦いはいつも自分が優勢で最善の動きをしていた。

が、どうだ。思わず構えたこの防御の姿勢。刀相手に通じるだろうか?


否。断じて。
きっと僕は今から無惨に切り裂かれる。
そう思いながらも、恭赤にほんの少しの期待をしている自分がいた。「助けてくれる。」


少ししても状況が変わらないことに違和感を抱いた僕はそっと目の前の腕を退けて、目を開けた。

眼前の光景に大きく目を見開く。

体長5m~7mはありそうな「大蛇」と対峙する恭赤(うやらか)と同じく本を構えて臨戦態勢を取ろうとしている夏希の姿が見えた。


「下がってろ」

恭赤は夏希に対して言葉を放つと同時に、右手の刀を縦に大きく振るう。
振られた刀の軌跡がそのまま炎となって大蛇に降りかかる。
大蛇はすかさず体をくねらせてその炎の斬撃をかわそうとした。
が、このような状況は慣れているのか、今度は恭赤は左手の刀を振るう。
すると恭赤が出てきた時と同じ、紫の炎の穴が大蛇の頭を包むと、斬撃の当たる丁度の位置に大蛇の頭が紫の炎とともに現れた。

「シャーーーーーー!」

断末魔とも聞こえるような叫びをあげ、大蛇の頭は炎の斬撃に両断されると、立ち上がらせていた体をゆっくりと力が抜けたかのように床に寝そべらせた。
部屋が轟音と共に少し揺れる。



それと同時に僕の視界は真っ暗になった。
繋ぎ止めていた糸がプツンと切れる音がした。

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