御説明ありがとうございました。水野でございます。中間試案の時期についてですけれども、法制審のこの部会は、民法という基幹となる法の改正について専門的に集中して議論する場だと思っております。そして、社会へのいろいろな影響について情報を収集したり、慎重に討議する必要はありますけれども、そのときの政治家の意見によっていちいち左右されるべきものではないと思います。中間試案を出した後の国民各層からのヒアリングとか、あるいは最終的な答申を受けての国会の判断があることはもちろんですけれども、中間試案の取りまとめは飽くまでもこの部会の中で決めることであって、政治家の意見によって左右されるものではないはずで、本来であれば今日の会議で中間試案を取りまとめるというのが原則的な進め方であると思います。
ただ、さはさりながらなのですが、私は平成8年の婚姻法改正要綱を作成した部会の生き残りのメンバーでございまして、その生き残りメンバーとしては、世論や国民各層が冷静に議論できる状況を形作るということも、またすごく大切で、必要なことだと痛感しております。私の30代の5年間を費やした要綱であったのですけれども、当時、当然に立法されるものだと考えておりましたし、法制審の答申が実現しなかったのはあれが初めてのことでした。当時の参事官は、もちろん国会議員と連絡を取りながら進めておられましたし、部会のメンバーだけでしたら、恐らくもう少し過激な案になっていたと思うのですけれども、参事官の情報に基づく判断を反映して、国会審議を通るような、慎重な原案にしたつもりでおりました。当時の橋本総理や加藤幹事長も通すおつもりであったと伺っておりました。でも、ああいう結果になってしまいました。
そのときの怒濤のような流れを思い出しますと、政治家というよりも国民の理解を得るために、もっとできることがあったように思います。当時ももちろんそれは考えていて、国民の理解を得るための大規模なキャンペーン開始を予定したりしていたのですけれども、ちょうどその日に阪神淡路大震災が起こってしまうような不幸な偶然もありました。政治家というよりも国民的な理解を得るために、我々としても部会の進め方についても、原則論でかたくなに進めるということであってはいけないように思います。報道で国民の関心は非常に高まっているように思いますし、そして、ここでの意見対立、あるいは政治家の間の意見対立の背景には、孤立した家族への社会的な支援が足りないという、日本社会の構造的な問題がございます。この構造的な問題を抱えているということについて、この機会に国民的な理解が得られれば、この問題についても手が入って、もう少し生きやすい日本の社会になるかもしれません。
そういうことを考えますと、今日の段階で無理に中間試案の取りまとめを急ぐ必要はなくて、今日のところは一旦、試案の取りまとめを見送るというのも選択肢の一つとして十分あり得ることのように思います。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、取りまとめの時期につき原則論とあわせて、具体的にどうするかということにつきまして、差し当たり今日のところは見送ってはいかがかという御意見を頂きましたが、ほかにいかがでしょうか。