ありがとうございます。連合の井上です。まず、離婚時の情報提供の規律ですが、1巡目、2巡目の議論のときは、私もこれは何らか受講の義務があった方がいいとも思っていたのですけれども、パブリック・コメント等を拝見しますと、やはりそれはなかなか難しいのだろうということがよく分かりましたので、その意味では事務当局の提案に賛同する方向で考えています。
ただ、そうはいっても、何もないとなると、これはやはり離婚時、余りにも無責任なことになってしまうと思いますので、それで行くと、先ほど棚村委員から厚生労働省のモデル事業の話、法務省の話がありましたけれども、それに加えて、14ページの4行目に寡婦福祉法第5条第3項の記載があります。国及び地方公共団体は、母子家庭等の児童が心身ともに健やかに育成されるよう、養育費の履行を確保するために、広報その他、適切な措置を講ずるよう努めなければならないとされているという規律があるのですけれども、このほかにも、困難な問題を抱える女性の支援に関する法律が来年の4月から施行されます。その条文に、民間団体に対する援助であるとか、あるいは費用の支弁等ということで、都道府県、市町村の支弁・補助、国の負担・補助というのが入っています。そこに関連づけて何かできないのかと思ったところですので、引き続き、民法上は難しいとしても、ほかの法令で何らかの措置ができないのかというのは検討に値するのではないかと思いました。
それから、一般先取特権ですけれども、①から④全てというのはなかなか厳しいかと思うのですが、③と④に関しては、子の監護・養育に関する義務に係る負担でありますので、その意味では一般先取特権を結び付ける考え方は検討に値するのではないかと思います。ただし、債務者の総財産について一般先取特権を有するのであれば、債務者の経済状況には留意が必要でありますので、中間試案に盛り込まれた法定養育費制度が仮に設けられるのであれば、そこにも関わってくる論点ではないかと思っています。また、参考資料で出していただいていますけれども、1回の裁判手続で差押え等が可能になれば、離婚当事者の負担軽減にもつながるので、ここは前向きに検討すべきだと思います。
それから、一般先取特権の順位のところなのですけれども、民法上の一般先取特権の順位から考えますと、やはり養育費債権につきましては、②の雇用関係には劣後しますけれども、葬式の費用や日用品の供給には優越するのではないかと思います。そもそも雇用による収入がなければ多くの場合、養育費の原資の確保というのは難しいと思いますので、雇用関係に劣後するということに関しては妥当性があり、雇用関係に次ぐ順位が適切ではないかと考えます。
それと、第4のところなのですが、養育費支払の取決めの実効性向上や、取決めがない場合も支払を促進する観点から、収入に関する情報の開示義務を規律する方向性には賛同します。資料の27ページの下から9行目以降にあるように、仮にこの規律を実体法上に置く場合、協議が調わなければ裁判手続によって調整が図られざるを得ないので、そうした手続は当事者の負担になってしまうと思います。一方で、28ページの上から4行目以降に記載があるように、手続法上で開示義務を定めれば、養育費等に関する裁判手続が迅速かつ容易にできるようになって、適正な事実認定や判断にもつながると思いますので、手続法上の規律を優先するという考え方があってもいいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からも第3の1、2、それから第4について御意見いただきましたけれども、全体として提案の基本的な方向性には賛成するということだったかと思います。ただ、第3の1については、既に指摘もありましたが、民法の外での対応ということを考える必要があるのではないか、それから、第3の2については範囲を限定する必要があるということと、法定養育費制度との関連も考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。