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法制審議会家族法制部会第24回会議議事録読む7~井上委員・小粥委員・窪田委員・沖野委員・石綿幹事・原田委員

差別はやめるべきとき

面会交流原則実施論は諸々の文献で否定されている

議事録よんでいこう

 そのほかはいかがでしょうか。

つづき

○井上委員

 ありがとうございます。連合の井上です。まず、離婚時の情報提供の規律ですが、1巡目、2巡目の議論のときは、私もこれは何らか受講の義務があった方がいいとも思っていたのですけれども、パブリック・コメント等を拝見しますと、やはりそれはなかなか難しいのだろうということがよく分かりましたので、その意味では事務当局の提案に賛同する方向で考えています。
 ただ、そうはいっても、何もないとなると、これはやはり離婚時、余りにも無責任なことになってしまうと思いますので、それで行くと、先ほど棚村委員から厚生労働省のモデル事業の話、法務省の話がありましたけれども、それに加えて、14ページの4行目に寡婦福祉法第5条第3項の記載があります。国及び地方公共団体は、母子家庭等の児童が心身ともに健やかに育成されるよう、養育費の履行を確保するために、広報その他、適切な措置を講ずるよう努めなければならないとされているという規律があるのですけれども、このほかにも、困難な問題を抱える女性の支援に関する法律が来年の4月から施行されます。その条文に、民間団体に対する援助であるとか、あるいは費用の支弁等ということで、都道府県、市町村の支弁・補助、国の負担・補助というのが入っています。そこに関連づけて何かできないのかと思ったところですので、引き続き、民法上は難しいとしても、ほかの法令で何らかの措置ができないのかというのは検討に値するのではないかと思いました。
 それから、一般先取特権ですけれども、①から④全てというのはなかなか厳しいかと思うのですが、③と④に関しては、子の監護・養育に関する義務に係る負担でありますので、その意味では一般先取特権を結び付ける考え方は検討に値するのではないかと思います。ただし、債務者の総財産について一般先取特権を有するのであれば、債務者の経済状況には留意が必要でありますので、中間試案に盛り込まれた法定養育費制度が仮に設けられるのであれば、そこにも関わってくる論点ではないかと思っています。また、参考資料で出していただいていますけれども、1回の裁判手続で差押え等が可能になれば、離婚当事者の負担軽減にもつながるので、ここは前向きに検討すべきだと思います。
 それから、一般先取特権の順位のところなのですけれども、民法上の一般先取特権の順位から考えますと、やはり養育費債権につきましては、②の雇用関係には劣後しますけれども、葬式の費用や日用品の供給には優越するのではないかと思います。そもそも雇用による収入がなければ多くの場合、養育費の原資の確保というのは難しいと思いますので、雇用関係に劣後するということに関しては妥当性があり、雇用関係に次ぐ順位が適切ではないかと考えます。
 それと、第4のところなのですが、養育費支払の取決めの実効性向上や、取決めがない場合も支払を促進する観点から、収入に関する情報の開示義務を規律する方向性には賛同します。資料の27ページの下から9行目以降にあるように、仮にこの規律を実体法上に置く場合、協議が調わなければ裁判手続によって調整が図られざるを得ないので、そうした手続は当事者の負担になってしまうと思います。一方で、28ページの上から4行目以降に記載があるように、手続法上で開示義務を定めれば、養育費等に関する裁判手続が迅速かつ容易にできるようになって、適正な事実認定や判断にもつながると思いますので、手続法上の規律を優先するという考え方があってもいいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からも第3の1、2、それから第4について御意見いただきましたけれども、全体として提案の基本的な方向性には賛成するということだったかと思います。ただ、第3の1については、既に指摘もありましたが、民法の外での対応ということを考える必要があるのではないか、それから、第3の2については範囲を限定する必要があるということと、法定養育費制度との関連も考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。

なかなか厳しい

○小粥委員

 委員の小粥でございます。第3の2の養育費等に関する定めの実効性向上に関して、一言だけ申し上げます。一般先取特権を付与するという考え方について、検討の俎上にのせるペーパーを用意してくださった事務局に感謝したいというか、その方向で進めていただけないかという趣旨であります。つまり、伝統的に一般先取特権を増やすというような考え方は法律学の世界では余り好まれない考え方であったわけで、そこへ、しかし養育費確保の実効性向上という観点から様々な方策を検討される中で、やはり実体法上の優先権、少なくとも一般債権に対する優先権が必要だという御判断が背後にあるのではないかと考えております。伝統的には、一般先取特権の付与をなぜ、どういう場合にできるかというと、先ほど井上委員がおっしゃったとおり、共同担保ないし一般財産の増殖に寄与した債権あるいは債権者がいたからこそ一般先取特権を付与するというような考え方が一般的、あるいは支配的ではないかと考えますので、そういう観点からすると、養育費債権に一般先取特権を付与するというのは少し別の正当化根拠が必要になるところではないかと思います。
 しかし、債務者になるのは自然人でありまして、基本的に法人ではないと思うのですけれども、その場合に競合が想像される債権としては、例えば多額の消費者金融に対する債務を負っているような父又は母と、こういった債務者がいる場合に、手間を掛けて執行にたどり着いた養育費債権者が債権額に応じて按分になるという結論は、やはりなかなか厳しいものがあると私は考えますが、そういうことからすると、少なくとも一般債権者に対する実体法上の優先があるということは、なお引き続き前向きに考えていただけないかと。その上で、順位等についてはなかなか難しい問題があると承知しておりますけれども、引き続き考えたいと。さらに、優先権の範囲についても、やはり検討の必要はもちろんあると思いますけれども、実体法上の優先権ということを引き続き前向きに考えたいということを申し上げたいと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。小粥委員からは、第3の2について方向性に賛成であるということで、具体的には正当化の根拠に関わる御意見を頂いたと思います。一般先取特権を増やすということについては、確かに否定的な見解も学説の中にはございます。それに対してどのような理由付けが可能なのかということについて御意見を頂戴いたしました。その上で順位や範囲については別途考える必要があるだろうといった御指摘を頂いたものと思います。

一般先取特権ねぇ

○窪田委員

 窪田でございます。私も、第3の2の部分なのですが、先取特権について発言させていただければと思います。小粥先生からは問題としてあるということで指摘があった部分なのですが、やはり範囲の部分が大変に気になります。ここの切り分け方だと、根拠条文が752条なのか760条なのか、といった規定に即して切り分けられているのですが、どの条文によっても養育費以外のものが入ってくる可能性があります。先ほど佐野幹事の方から、生活保持義務という観点からの切り分けもできるのではないかということではあったのですが、もちろん佐野幹事は親子の関係を想定してだと思いますが、夫婦間の扶養義務というのも多分、生活保持義務としての性質を持っているのだとすると、夫婦間の扶養についての権利が一般債権者に対して優先するというのは、私自身には余りしっくりはきません。そうだとすると、飽くまで未成年の子に対する扶養の義務の履行としてのものに限定するということが必要になるだろうと思いますし、そうだとすると、条文の切り分けではなくて、何らかの形でそれをやはり費目として切り出すような仕組みが用意されないといけないのではないかという気がします。その点では、現行法を前提として、現行の手続を前提として、どこまでにしようかという議論をするよりは、やはりうまくその切り出しができるような方法を考えていかなければいけないのではないかと思います。
 少し補足すると、夫婦間の扶養に関する関係は一般債権者に優先しないけれども、こどもに対する関係では優先するというのは、例えば一つの考え方として、落合委員からずっと出ていたことですけれども、こどもに対する関係での親の責任というのは親だけが負うものではなくて社会一般がという観点から、一定の基礎付けをすることができるのかなとも思いますので、その範囲では、この方向で検討していただくのがよいのではないかと考えております。
○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは、やはり第3の2について御意見を頂戴いたしました。範囲についてということで、今の案ですと養育費以外のものが入っているので、それらについては除く必要があるのではないかという御意見だったかと思います。他方で、こどもの養育費については他のものと区別するということが正当化できるのではないか、社会的にこれを尊重していくという考え方によって基礎付ける等々のことが可能なのではないかという御指摘を頂きました。

親・社会が背負う養育責任論

○沖野委員

 ありがとうございます。委員の沖野でございます。私も15ページの2の一般先取特権について申し上げたいと思います。小粥委員、窪田委員が御指摘になった、あるいは既に様々御指摘いただいている点と共通するものでありますけれども、申し上げたいと思います。
 一般先取特権の付与による優先については、正に一般の債権者に対して優先する地位を与えるということで、強制執行などの具体的な強制的な実現の場面での優先のほか、否認の対象など既に支払われたものを安定させるというような面でも意味がありますので、そういう安定を与えることにふさわしいかということも含めて検討していく必要があると思います。そして、現行法上も既に特別な扱いがされている債権として、ここに掲げられているものがあるわけで、ただ、その特別な扱いというものが、差押え禁止の部分が縮小する形で、実質的に特定の財産については優先的な取扱いになっているという、実定法上も、そのような意味での扱いはされているのですけれども、それを越えて全ての財産において一般の債権者よりも優先する地位を一般先取特権で与える、債務名義の取得というのはまた少し置きますけれども、それが果たして正当化できるかということです。
 御指摘がありましたように、雇用関係、労働債権については、元々は生活保障という面もいわれておりましたし、それから、債務者にとって窮境になったときに労働力確保が必要になる、そのためにも優先を与える必要があるとか、それから、債務者財産の形成の維持や増大への寄与、あるいはこれからも含めてという面もある、というように複数の根拠があったと思います。もっとも債務者財産の維持・増大に資しているかというのは、実は労働債権だけではなくて、一般の貸付金とかそういうものであっても、実はそれがあるから財産形成がされているという面がありますので、それだけで十分かという問題はあります。
 そういったことを考えたときに、ここに挙げられている債権については、特定の財産との結び付きはない以上、一般の先取特権にせざるを得ないわけですけれども、財産の増殖には寄与はやはりしていないと考えられますし、それがないと窮境を乗り切れないというような状況もありません。そうだとすると、そのような優先を社会として是とするということがやはり必要で、冒頭に出ました社会で負担するといったような考え方がそのような保護を基礎付け、一定の範囲で一般の債権者としても劣後してもやむを得ないと、それを認めましょうというところになるのではないかと思います。違う事情ですけれども、葬式費用とかは元々は公益上の利益によるものとされて、こちらは公衆衛生とかですけれども、一定の社会的な公認ということから基礎付けるということは十分あり得るものと思われます。
 ただ、そうしたときにやはり広すぎるということがございまして、せいぜいやはり子の養育のための費用に限られるだろうと。子の養育の費用であれば全て認められるかということも、やはり難しいのではないかと思っておりまして、一定の金額の限定ですとか、そういうことが考えられてしかるべきではないか、あるいは月数によるとか、そういうことと組み合わせて考えていく必要があるのではないかと思っております。
 順位についてなのですけれども、この場合の順位として、雇用関係の先取特権は非常に重要で、元々第3順位から第2順位に上げられたというようなこれまでの経緯もございます。ただ、ここは競合する局面となりますと、個人事業者との関係ですとか、いわゆる家事使用人といわれるような類型とか、そういうかなり限定的なものになると思いますが、これも範囲との関係で、例えば法定養育費の話が出ましたけれども、仮に法定養育費というものを一つの区切りとするならば、その範囲ではむしろ優先するとか、あるいはそれ以外のところではそうではないとか、一般先取特権について細かな順位を付けるというのは今余りないのですけれども、そういったことも考えられてしかるべきではないかと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは、前のお二方と同様、第3の2についての御意見を頂きました。基本的な方向性は窪田委員がお示しになったものと共通しているかと思いますけれども、更に立ち入って、養育費についても一定の制限が必要なのではないか、順位についてもその制限との兼ね合いで考えるということもあり得るのではないかという御指摘を頂いたかと思います。ありがとうございます。

きょうこそにちようだったかな

○石綿幹事

 石綿です。私も第2の3について1点述べさせていただきたいと思います。方向性については、前に御発言なさった委員、幹事の先生方と同じく、賛成いたしますが、現状、範囲が広すぎるのではないかと思うところでございます。事務当局がお作りいただいた現状の資料は、未成年の子の養育に関する費用の請求が問題となる場面に関連する条文というのを挙げてくださっているわけですが、既に多くの先生方が御指摘のように、これら全てを一般先取特権を有するとすると、養育費以外の権利も含まれるわけなので、広すぎるということになるのかと思います。結論として、窪田委員と同じく、費目として切り出すような仕組みを考え、できるだけ養育費についてのみ認めるという方向性を検討するのがよいのではないかと思っておりますが、恐らく問題の所在として、現在、養育費について請求していく根拠条文が場面によって異なっているという点が、このような資料が出てきているというところにあるのかと思いますので、本日前半で議論した第2の点とも関連するかと思いますが、もう少し養育費について、何を根拠に請求していくのかというものを分かりやすくする、費目だけ切り分けるのではなく、手続も分かりやすくするというのも一つ考えてもいいかなと思った次第です。
○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からも今までの何人かの方々と共通の御意見を頂戴いたしました。優先権を付与するものを切り出すときに、現在は根拠条文がはっきりしないということがこのような提案とつながっているところがあるのではないかということで、そこを整理しておくことも必要ではないかという御指摘を頂戴いたしました。

この辺のこと、もはや法律家しか語っていない

○原田委員

 私も、一つは先取特権のことなのですけれども、範囲が広すぎる、養育費以外のものが入っているというお話がありましたが、実は第766条の婚姻費用には、こどもがいない夫婦の場合はありませんけれども、養育費が入っているのです。それで、今、法テラスというところで、養育費や婚姻費用を請求した場合の弁護士費用や、幾ら立て替えるかとか、償還を免除するかとかいう話をしているときに、計算したのですけれども、いわゆる裁判所が出している算定表の中で、婚姻費用と養育費を比べると、こどもが1人のときには婚姻費用の中の50%から60%ぐらいの間なのですけれども、こどもが3人になりますと婚姻費用の中に占める養育費というのは70%ぐらいになるのです。それを考えると、婚姻費用を一律に除くというのはどうなのかなと思います。
 そういう意味では、では計算して除くのかとか、除かないのかとかいうことを考えると、やはり生活保持義務という根拠があるわけです。もう一つ、私は、やはり夫婦だけの場合は養育費が入っていないよなと悩んでいたのですけれども、小粥委員がおっしゃってくださった財産の増殖に関与した場合というところ、先ほど石綿委員ですかね、これには入らないというおっしゃる方もありましたが、財産分与で考えた場合には、個人事業者の場合は、そこで財産が形成されていれば財産形成に寄与したと考えるわけで、そういうことから考えても、婚姻費用は保持義務の範囲では入れていいのではないかと思います。ただ、全額入れるのかどうかという点についての範囲が広いという趣旨であれば、それをどう考えるかというのは検討の余地もあると思いますが、養育費と婚姻費用を切り分けて婚姻費用は入れないという考え方については、私は適当ではないと思います。
 それから、財産開示の関係で当事者間の開示義務を外すという話について、裁判所からの御意見で、これがあった方が手続上、第三者機関に請求したりするときに回答が得やすいという御意見が出ておりましたが、その辺りの関係がどうなのかというのが、私は今ひとつ判断しにくいところがあるのですが、もしそういうことがあるのであれば、検討する余地もあるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員から2点御指摘いただきましたが、一つは、今続けて意見が出ておりました第3の2について、婚姻費用第760条の扱いをどうするかということだったかと思います。婚姻費用を除くという意見は、婚姻費用の中に含まれている養育費の部分は、おそらくは皆さん、これは除かないと考えておられて、それを取り出すという御意見なのだと思います。
○原田委員 そうなのですか。分かりました。
○大村部会長 ですから、その限度では意見の対立はないのだと思いますが、それとは別に、固有の意味での婚姻費用についてどうかということで、原田委員からは養育費とは別の根拠付けで優先権を認めることができるのではないかという御意見を頂いたと受け止めました。それから、第4については、実際上それに意味があるということであれば、いいかもしれないという御感触を頂いたと理解をいたしました。

婚姻費用は760条よね、誤字?

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