法制審議会家族法制部会第6回会議議事録5~大石委員・佐野幹事・戒能委員・棚村委員
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日々、共同親権のことを考える
議事録の続きを読んでいこう
○大石委員
ありがとうございます。私は今,法務省が実施してくださいました協議離婚調査について分析を行っておりまして,10月にはその結果を専門誌に出していただけるということになっておりますけれども,分析してみて分かりましたのは,面会交流の取決め,書面以上での取決めなどに関しては,監護親の方が高学歴かどうか,それから,収入がかなり高いかどうかといったこと,そして,非監護親に関しては,正規就業しているか,高学歴かどうかといったことがかなり影響しているという結果を得ております。つまり,かなり経済状況がいい監護親の方,非監護親の方もそうですけれども,そういった方たちの中では取決めがそれなりに進むわけですけれども,そうでない方たちが取決めを行うことはなかなか難しいことであると解釈しております。ですので,今,沖野委員もおっしゃっいましたが,支援といいますか,そういったものはやはりどうしても必須であって,かなり手間暇掛けて支援していかなくてはいけないということではないかと。また,そういうふうに収入が高くない方たちが取決めを行うという意味では,先ほど沖野委員が報酬のことをおっしゃっていましたが,報酬がもし個人負担ということになれば,それはかなりなハードルになるのであろうということが予想されます。
もちろんこれはウェブ調査ですので,代表性という点ではかなり問題はありますが,しかしその中でも非監護親の3分の1が再婚しているという実情もデータで示されております。そういう意味でも,親子の関係や家族の形態が,時々刻々変化していくということも考慮して,取決めに関しての政策を決めていくことは必要ではないかと思った次第です。ありがとうございます。
○大村部会長 ありがとうございました。協議離婚の調査について分析をされているということで,それに基づいて,当事者の属性によって差が出るという御指摘を頂いたかと思います。支援を考える,あるいは制度を作っていく上で,そうしたものを考慮する必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。
○佐野幹事
ありがとうございます。佐野です。私は12から13ページの面会交流の取決めに関する考慮要素について,考慮要素を明確化するというのは賛成であり,これを決める際にはやはり最新の科学的な知見,発達に関する知見を盛り込むべきではないかと言おうと思っていました。しかし,この部分は,裁判手続の中だけではなくて,協議離婚などで当事者の方たちが自分で決めるときの考慮要素にもなるという趣旨であるとすると,考慮要素は,なかなか一般の方にとっては使いにくいというか,分かりにくいものになるのかもしれない。むしろ基準としては,月1回とかというふうな取決め方の方が,一般の方には分かりやすいかもしれないが,それは今いろいろご発言があったように,面会交流というのはカスタムメイドで,その家庭,その家庭にとって,あるいはその親子にとって,ふさわしい形というのがあるので,そういった一般的な決め方,月に1回とか,そういう基準になるということであれば,より慎重に検討しないといけないと思った。
○大村部会長 ありがとうございました。取決めについて考慮要素を定めていくということについての得失,メリット,デメリットみたいなことですね,あるタイプの要素を挙げるということになると,一方で,一般の人にとっては使いにくいものになるかもしれない,他方,一般の人にとって使いやすいようなものは,作り方によっては危険性もあるということで,その両方を考えていく必要があるのではないかという御指摘として承りました。
○戒能委員
ありがとうございます。戒能です。先ほど,余り個別のことにこだわらず,原則論,一般論からというお話がありましたが,その原則論,一般論が難しいのだという部会長の御指摘もありました。DVや虐待の問題,家庭の中における暴力の問題は,一番最初に戻ってしまうのですが,決して例外ということではないという認識を私は強く持っております。そのことに関しては先回の部会で,小粥委員ですか,御指摘いただきました。実践的な面から見て,どうしてもきちんとDVや虐待に関する理論的な枠組みを持って,面会交流の問題に対峙しなければならないというような御指摘があって,その点は非常に印象深く受け止めました。
それで,日本の場合は,先ほど細矢委員から新しい運営モデルのお話があって,安全という要素を最優先事項として検討しているという裁判所,家裁における現状の変化のお話を頂いたわけなのですけれども,しかしながら,どのくらいDVや虐待の問題が出てきているのだろうかと,そういう統計はもちろん日本ではないのではないか,最高裁でも把握をしているかどうか。そういう実態,現実から進もうというのがこの部会の最初の基本的なスタンスだったと記憶しておりますが,そういうところから言っても,まだ極めて例外的な問題,個別の問題だという認識が社会において一般的であり,この部会においてもひょっとするとそういう認識の方が支配的なのかなということを少し感じました。
しかしながら,武田委員が冒頭におっしゃってくださったように,質問の時間がほとんど残念ながら,ございませんでしたので,例えばイギリスやオーストラリアの反省,失敗という言葉が出てきましたけれども,その失敗を反省の糧として,ドイツの状況など,もう少し踏み込んで質問をしたかったということがございます。いずれにせよ,少なくともイギリス,オーストラリアでは,失敗というよりも,問題を再発見したと私は思っておりまして,そこでプロコンタクトカルチャーでいいのか,子どもや監護親の安全の問題ですよね,危険から守られるということを忘れてはならない,司法の実情はどうなのかということで,かなり緻密な調査を行って報告書を出しています。英国司法省の報告書は本部会にも資料として提供していただいたので,少しは勉強したのですけれども,そういう試みが行われているということも意識しながら,この家裁の変化,新しい運営モデルということも頭に置きながら,決して例外的なことではなくて,きちんと対峙することが必要だと思います。例えば10ページの一番下の方なのですけれども,安全・安心への懸念を解消する必要があり,DV,児童虐待といった問題への対応を含め総合的な対応を図るべきという指摘というところがございます。その辺をきちんと意識して議論を進めていければなと感じております。
○大村部会長 ありがとうございました。DV等の取扱いにつきまして,戒能委員,従前から御発言のあったところですけれども,これは決して例外でないという認識で考えたいという御意見を頂きました。今日の課題で申しますと,2の第1パラグラフの本文部分がありますけれども,その後のただしというところにつきまして,幾人もの委員,幹事の方から御指摘がありましたので,この点については十分な配慮をしながら議論をしていくということになろうかと思います。
○棚村委員
早稲田大学,棚村です。私は,特に11ページの課題の①のところなのですけれども,養育ガイダンスとか親ガイダンスという点について意見を述べさせていただきます。海外では,親ガイダンスの実施に力を入れてきており,私は30年ほど前にアメリカの親教育プログラムというのがなぜ出てきて,それがどういうふうに広まったかということを紹介させていただきました。その当時は余り評判が良くなかったというか,関心度は低かったのですが,家裁ではその後いろいろとやっていただいて,取り入れるという方向になりました。
ただ,現状を見ますと,気を付けていただきたいのは,先ほども原田委員からもあったと思うのですけれども,DVDを見せたり一般的に説明したりというのは,正にかなり早期の段階での集合型のガイダンスということになります。集合型・集団型のガイダンスが有効な場合,タイミングと対象者・実施方法などが問題になってきます。これに対して,かなり個別的具体的な問題を抱えている当事者には,個別的な相談とかカウンセリングとか,個別専門相談や個別ガイダンスが求められているケースというのがあります。その二つを区別しながらきちんとそろえていかないと,親ガイダンスという形でみんなを集めて一般的な情報を提供すれば,それで効果があるというのは,葛藤が少なく早い段階でそういう集合型,集団型のガイダンスみたいな機会が与えられると,問題に対する意識や心構えを持てることになります。しかし,一般的な情報提供のレベルを越えて,非常に個別的な専門相談みたいなものを心理的にも法的にも,いろいろな意味で必要としている人たちもいるので,それにもこたえられるような個別相談型のプログラムみたいなものを充実するということが,協議離婚制度をどう見直すかということにも非常に重要になってきます。そして,それから子どもの親権・監護についてのその後の養育計画というもので,どんなものを父母で話し合って決めていくかということにも関係してきますので,是非支援の部分で,具体的にどういうようなガイダンスを,どこの機関が,どのタイミングでどのような形でやるかということを,当事者の支援ニーズや支援の各段階ごとに細かく議論する必要があります。
もちろん,このことは,家庭裁判所が現在やっている親ガイダンスというものを否定するわけでもありませんし,やはり紛争を抱えた人と,紛争を全く抱える前の,離婚とか別居ということを考え始めた初期に,自治体,例えば,私自身が東京都の離婚前後の親ガイダンスをやったときも,集合型のプログラムをやりますと,必ずその終わった後に長蛇の列が出て,そして,個々のそれぞれの抱えている問題を,ディスカッションの中でももちろん出てきますし,それから,その後,更に並んで,こういう点についてはどうしたらいいのだろうかという相談や質問が出てきます。それがやはり法的な問題だけではなくて,むしろ心理的なものとか,生活全般や将来に関わる不安とかというのもありますので,その辺りはやはり実情に応じて,複数のガイダンスというか,相談体制を充実させていくということが,協議離婚制度でどんな内容を当事者がどんなふうに決めていくかという,先ほどからある合意や取決めの適正の問題とか,いろいろありましたので,それが第1点です。
もう1点は,先ほどから佐野委員もおっしゃっていた,13ページの上の方の面会交流の取決めのときの考慮事項,考慮要素,基準ですけれども,養育費の場合は割合と考慮しなければならない事情とか問題になる点というのは比較的はっきりしていますので,その点は法定化というのはかなり重要かなと思います。しかし,面会交流の場合には,お子さんの年齢とか,発達の段階とか,それぞれの御家族が再婚するとか,いろいろな形で事情が大きく変わったり,望ましい内容や在り方もかなり多様で複雑になってきます。お子さんの意思というのも非常に重要だと思うのですが,やはり考慮要素を法律でもって面会交流の場合に決めていく,実施の有無とか方法,頻度でもそうですけれども,これはかなり,柔軟で弾力的な対応が必要であるのに,これに縛りを掛けることにもなりかねないので,慎重にされた方がいいという,佐野委員の御意見に今のところ私も賛成です。
もちろん,親ガイダンスの中身については,これはかなり重要なことですし,制度化のニーズは高いものがあります。ただ,どの機関がどういう内容のものをどんな形で提供していくかとか,実施していくかということについては,やはり集合型のガイダンスと個別型のガイダンスみたいなものについて複数用意して,各々抱えているニーズに応じた支援体制というものをかなり充実させるという前提ですと,その後のいろいろな課題として出されている問題についても問題解決の在り方が大分変わってくると思っています。もちろんDVとかそういうものも,戒能先生からも皆さんからもありましたけれども,東京都の支援講座をやっていても,そういう不安とか,そういうことを現実に抱えているというお話もありましたし,それから,暴言とかいろいろなものも,モラルハラスメントみたいなものもありましたので,やはりそういうことに対してきちんと,不安,それから問題を抱えている人への御相談ができるような体制を整えるようなことも併せて検討するということで,法制をどういうふうに変えていくかというのは非常に重要な要素になってくると思います。以上です。
○大村部会長 ありがとうございます。11ページの2の①の養育ガイダンスについて,一般的なものと,それから,先ほどから出ておりますけれども,個別化されたものを用意していく必要があるのではないかという御指摘と,それから,12ページから13ページにかけての考慮要素基準の問題については,養育費と面会交流では少しやはり分けて考える必要があるのではないか,面会交流については慎重に考える必要があるという御指摘を頂いたかと思います。
大分時間がたっているのですが,落合委員から手が挙がっていて,今,赤石委員からも手が挙がりましたので,落合委員,赤石委員,お二人の御発言を伺ったところで休憩したいと思います。
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