委員の原田です。第30回で議論された点の補足として、まず一つは監護者の定めについて述べます。補足説明においては、監護者の定めを一律には要求しないものとして提案されていると認識していますが、再度監護者の定めを必要とする規定が必要だということを述べたいと思います。
まず、パブリック・コメントの意見なのですけれども、団体の意見としては、基本的に共同親権に賛成の団体の多くは、監護者の定めをするか否かはどちらでもいい、単独親権に賛成する団体は、もし共同にするとしたら監護者を指定すべきだというふうに基本的に分かれています。しかし、共同親権に賛成するとしても消極的に賛成だと言われる団体や、両者では意見が統一できなかったので両論併記で意見を述べられている団体、エフピック、司法書士会、弁護士会、このような紛争の実務に関わっている団体を中心として、監護者は定めるべきだという意見が出されています。
さらに最近、弁護士ドットコムという任意の団体が全国の弁護士にアンケートをとって、176人の弁護士が回答したものが9月21日に発表されていています。数として多くはありませんが、これは具体的な意見の中身まで含めて発表されていますので、ぜひ見ていただきたいと思います。この中では共同親権に反対する意見が多くて、その理由として、紛争が増えて子の福祉に反する、裁判所がパンクするという意見が圧倒的なのです。民法は基本法ですから在るべき姿を掲げるのだという御意見にあえて反対はしませんけれども、しかし、その原則だけで本当に子の幸せを守れるのか、その弊害をできるだけなくすためにはどうしたらいいのかという細やかな配慮も必要なのではないかと思います。
その一つがDV、虐待問題で、もう一つはやはり、もし共同親権にした場合の監護者の指定の問題ではないかと思います。仮に共同親権制度を採用したとしても、主に子を監護する者を決めておかなければ、離婚後も紛争が続き、あるいは激化して、子がいつまでも紛争にさらされることを実務家は懸念しています。先ほど青竹幹事がうまくいっている人たちのことも考えなければいけないとおっしゃいました。私もそれはそう思いますけれども、私たちが取り扱う事例は高葛藤で、その場面しか見ていないと言われるかもしれませんけれども、実際に今後問題になっていくのは今私たちが扱っているような事案であり、そうでない方は当事者同士で話し合って、うまくやっていくと思うのです。だから、裁判所に持ってこられる、弁護士に相談されるという範囲が増えていくだろうという予測を多くの実務家が持っています。そのことを再度考えていただきたいと思うのです。
もし監護者が定められていれば、監護権と親権の範囲の問題はいろいろありますけれども、教育現場とか医療現場や社会保障の関係での混乱はかなり避けられるのではないかと思いますし、ひとり親の支援にもつながるのではないかと思います。そして、監護権の分属という話が出ていますが、この分属も、監護者を指定した上で親子交流をどう実現するかということの方が重要で、権限という問題ではなく、親子の交流を実現するためにはどうしたらいいかという観点で考えればいいのではないかと思います。
あと、DV、虐待ケースの問題は、この中でもよく配慮されているのではないかとおっしゃっていただきました。私としては十分だと思わないのですけれども、沖野委員などから出していただきました意見の中でも、子の面前での配偶者へのDVは、それ自体が子への虐待であり、心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるものと解されているという記載がありまして、この点はこの部会でも共有していただきたいと思います。
それから、三つ目としては、先ほど佐野幹事が発言されました急迫の場合という考え方私も実務家としては同じような実感を持っております。賛成したいと思います。
それから、離婚後の親権者の定めに関して、裁判上の離婚の場合に、第2の2の(注1)の記載について、積極的に書くべきではないかという意見を私が申しましたところ、棚村委員から、例えばハーグの例などを挙げて、基本的にはマイナスの要素を列挙する例が多いという御指摘がありましたけれども、ハーグは返すことを原則としているものですから、同じ形をとれば、共同親権を原則としているように読めるのではないかと思います。
この部会では、離婚後の共同親権を原則とする合意はないと理解しております。婚姻中と離婚後では夫婦の関係が基本的に異なっていて、民法752条の夫婦が同居しお互いに扶助協力しなければならないという関係ができなくなっている人たちが離婚しているわけですから、共同親権を選択する場合は、列挙されているマイナス要素がなくて、父母双方が共同して親権を行うことができると判断される場合とすべきではないかと思います。これを言うと、単独親権が原則だと思われるかもしれませんけれども、そうではなくて、共同して親権を行うことができるというのが判断要素に入るべきだと思います。
それから、第5番目に、第2の2(1)で協議離婚の場合に親権者を定めないで離婚できる制度という提案がございまして、前回私は、もしこれを入れるのであれば、保全で早く決めるということと、取下げを制限するという規定が必要なのではないかと申し上げました。親権者を決めて離婚するのであれば、児童扶養手当とか、いろいろな母子の、あるいはひとり親の支援が受けられるので、ほかのことが解決していなくても離婚を早めたいという方は多いと思うのですけれども、親権者を定めないで早く離婚したいという方がそれほど多いかというと、余りそのメリットもないし、多くないのではないかと考えております。なので、前提としてはこの制度は必要ないのではないかと思っております。
○窪田部会長代理 ありがとうございました。非常にたくさん御指摘を頂いたかと思いますが、一つは、監護者の定めについては必要的なものとすべきであるということで、これがないといつまでも紛争が続く懸念もあるということについて、特に実務家の視点からは懸念されるのだということを御指摘いただいたかと思います。また、監護権の分属ということに関しては、この問題と親子交流の実現ということについての問題を整理し直して考えることで対応できるのではないかということ、それから3番目として、急迫の事情については先ほど佐野幹事から御発言があったところに御賛成いただくということだったかと思います。そして、4番目として、裁判所が定める離婚後の親権の在り方については、これは前回も議論になったところではございますけれども、積極要素というのを列挙して、その要件を満たす場合に共同親権となるのだという形で構成すべきではないか、前回これはハーグ条約の規定の仕方との関係でも棚村委員から御発言がございましたけれども、ハーグ条約が前提とする場面とここで問題となっている状況が必ずしも同じではないのではないか、という御発言だったかと思います。それから、親権者を定めなくても早く離婚したいということについては、必ずしもそのニーズがないのではないかということで、この部分については外すということも考えられるのではないかという御意見だったかと思います。
それでは、ほかの方からも御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。