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tokyojack
法制審議会家族法制部会ウォッチ10(原田委員と池田委員)
休憩はさみまして、議事録ウォッチ再開
ちょうど議事録的にも休憩あけたところで、早速ドカン
弁護士委員が続く
○原田委員
原田と申します。大体いろいろな方の御発言と重なるところもあるかと思いますけれども,私は弁護士で実務を扱っておりまして,先ほども申しましたように,女性の側からの離婚事件を多く担当しているので,どちらかというと当事者的な発言になるかもしれませんが,お許しいただきたいと思います。
今回の議論で基本的な視点とされたものについて,資料1の最初のところですけれども,例えば多様化とか変化とかいうことがよくキーワードで言われますけれども,これがどのような意味で使われていて,それがどんなふうに離婚の規律の再検討の必要につながるのかという辺りの認識が一致していないと,考えている場面が違っていて,議論が空中戦になるのではないかと思っています。
それから,調査を分析するについても,社会学,法学,心理学,いろいろな視点を変えた評価分析が必要ではないかと思いますし,ひとり親の調査を見ても,母子家庭と父子家庭ではかなり差がありますし,見る視点も違うということで,一般的に監護親とか別居親とかいうのではなく,監護する母親とか監護する父親というように,その置かれた状況,社会的状況も考えながらの分析が必要ではないかと考えています。
また,もう出ましたけれども,諸外国の制度を見る場合に,法律の規定だけではなくて,現実にその制度の下で子どもたちがどんな生活を送っているのか,また,それを支えるリソース,特に裁判官が決定するというのがよく出てきますけれども,司法や行政や民間団体がどのくらいのボリュームでどの程度連携して行っているのかというような実情を知りたいと思います。
それから,養育費についての検討は,これはどのくらいまでするのかというところも,先に検討するというお話もありましたけれども,民法766条との関係で,面会交流とセットという形ではなく議論していただきたいと思っています。
それから,離婚後の子の養育への父母の関与についてなのですけれども,私は前提としては,子の養育への関与については子どもの一人一人の状況が異なっていて,一律に基準や原則を決めることになじまないのではないかとは考えています。また,両親が関わることが子の福祉に合致するという命題がありますけれども,これは葛藤が少ない家族間の問題であって,これを原則として考えることは,かえって子の福祉に反することがあるのではないかと。心配しているのは,DVが例外として考えられること,これは先ほども出ましたけれども,女性の3割がDVを経験しているという状況で,DVケースを例外といえるのだろうかと,そして,その例外は誰が認定するのだろうかということを疑問に思います。実務をやっていて,DVの立証ってとても難しいし,立証できなければ,ないことになります。偽DVとさえ言われます。精神的なDVはなおさらです。法規範は,高葛藤で協議ができないケースの規範ともなるので,そのような事案に共同で養育せよと言っても難しいと。日々の問題について親の協議ができない,あるいは決まらないという事態は子にとって最悪の事態となります。昨日少し聞いた話では,子どもが小学校に入学するのに監護親と別居親の間で意見が違って,同じ地区の公立学校なのですけれども,どちらに入学するかということで仮処分が行われているという話がありましたけれども,本当に子どもにとって最悪の事態だと思います。
別居を決意したときに子どもを連れて出れば,違法な連れ去りと非難され,監護者指定の保全処分,本案,面会交流の調停,審判,婚姻費用・離婚の調停停,訴訟,それで決まっても,また親権者変更と,延々と続く紛争というのを私は何度も経験しています。そのための弁護士費用は,法テラスを使っても何十万円にもなります。それを3年で返せと言われます。その上,支援機関を使った面会交流では,そのたびに5,000円とか1万円が必要です。こんな事態が子にとっていいはずはないと思います。これを避けるためにどんな支援が考えられるのか,この日本の社会で実現可能な支援が何なのか,それで解決できるのかということの協議が是非必要であると思います。私は,既に766条があって,これを実効性あるものにするための支援,特に子どもの意思を反映させるための実体法や手続法の手当てをきちんとして,専門家との共働の方向こそ必要ではないかと思っております。
それから,親権概念というのは,権利という形で規定するのではなく,親の責任という形で整理するということには賛成で,場合によっては,一律の言い方ではなくて,具体的な場面に対応した責任として定義していってもいいのではないかと考えています。
それから,財産分与については,2分の1ルールが定着してきていると思いますけれども,これを明文化すると,それでは公平さを欠く事案への対応が更に難しくなるのかなと思ったり,先ほども出ましたけれども,婚姻のときの契約の問題にも波及するのではないかと思っていて,実際2分の1ではないとした事例の集積もあれば,参考になるのではないかと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。たくさんの御指摘を頂きました。多様化という言葉が最初から出てきておりますけれども,離婚との関係でいうと具体的にどういうことを指すのかというようなことについて,すり合わせが必要であろうとか,あるいは,子どもの意思とか,親権という概念をどうするのかといったことについて,考え方をお示しいただいたかと思います。それから,調査とか,あるいは比較法につきまして,細かな分析,それから,背景の実情を知りたいというような御要望があったかと思います。養育費や面会交流の関係について結び付けずに議論をしてほしいとか,あるいは,親の関与については一律に考えるのは難しいなど,様々な御指摘も頂いたと思います。それぞれのところで参酌させていただくことになろうかと思います。
○池田委員
弁護士の池田でございます。よろしくお願いいたします。
私は離婚事件で親の代理人をすることも多いのですが,裁判上の子どもの代理人,子どもの手続代理人のケースも幾つか受けておりまして,少し違った角度からも離婚紛争を見てきたという経験がございます。それから,児童相談所でアドバイスをしたりもしていますので,虐待という視点から家族の問題を見るという経験もさせていただいています。以上が私のバックグラウンドですが,私からは,父母の離婚後の子どもの養育の在り方について,幾つか意見を申し上げたいと思います。大きく3点ございます。
第1は,議論の進め方についてです。父母の離婚後の子どもの養育の在り方をどう考えるかという問題は,いろいろな意見があるところですが,論者によって暗黙に想定しているケースが異なるために,時に議論がかみ合わないと感じることもあります。そこで,この議論をする際には,できるだけ問題となる具体的ケースの類型を念頭に置きながら進めていくのがよいのではないかと思っています。
例えば,こんなケースがあります。別居親が子どもの養育に責任を負わず,そのために同居親と子どもが貧困に陥っている,あるいは子どもの成長発達にマイナスになっているというケース,逆に,同居親が子どもと別居親の関わりを合理的な理由なく妨げているようなケース,それから,別居親が同居親と子どもに対して支配的な関わりをしていて,同居親と子どもの安全や安心が脅かされているというようなケースなど,いろいろな類型があると思います。ある制度の導入を考える際には,それがどのケースに対応しようとするものなのか,また,それが他のケースに対してどのような影響を持つのかということをできるだけ整理しながら議論できればいいなと思っています。社会的関心が非常に高い問題ですので,このような議論ができれば一般にも分かりやすい議論になって,よいのではないかと思っています。
第2は,親権の概念についてです。親権は権利よりも義務の側面が重要だと言われて久しいわけですが,実際には依然として権利としての側面が強調されがちです。例えば,子どもを虐待している親は,自分は親権者なのだから,どのように子どもを養育してもいいだろうと虐待を正当化することもあります。また,離婚後,単独親権者となった親が,親権者でない他方の親は何の権利も持っていないのだからと言って子どもから遠ざけてしまうというケースも見受けられます。こうした誤解が生じないように,親権は子どもの成長発達権を保障するための責任,義務あるいは責務であるということ,そして,現在,権利的側面と呼ばれているものも,その責任を果たすために付託されている権限にすぎないのだというメッセージを,しかるべき方策で発していく必要があるのではないかと思っています。
最後は,子どもの意見表明権についてです。子どもは自分に影響を及ぼす全ての事項において,自由に意見を表明して,それをしかるべく考慮してもらうという権利を持っています。父母の離婚に際して,子どもの養育に関する事項を決めるに当たりましては,子どもの利益を最も優先して考慮するとされていますけれども,この子どもの利益も子どもの意見抜きには考えることができません。子どもの手続代理人,先ほど申しました裁判手続の中の子どもの代理人ですけれども,その経験からしますと,子どもが自分の意見を言って,大人がそれをしっかりと聴いた後にしか子どもの利益は実現され得ないと言っても過言ではないと思っています。これは,同じ結論にたどり着くとしても,それが子どもからきちんと意見を聴いた上でのものであるか,それともそうでないのかによって,子どもの納得感も異なりますので,子どもにとって意味合いが大きく異なってくるからです。また,大枠では同じ結論に見えても,子どもの意見を聴くことによって,例えばお父さんと暮らすか,お母さんと暮らすかというだけではなく,誰とどのように暮らすのかといった,より具体的で豊かな結論になるという可能性もあるからです。
現在,家庭裁判所での離婚や子どもの養育をめぐる事件では,家裁調査官による子どもの意向調査などが行われています。しかし,先ほど来申し上げています,子どもが主体的に手続に参加して,子どもに弁護士を付けて,弁護士を通じて子どもが意見を言っていくという子どもの手続代理人制度の活用は,いまだ十分ではないと思います。今後,父母の離婚後の養育の在り方を考える上では,裁判所の手続での子どもの手続代理人制度の一層の活用に加えまして,裁判所の外,つまり協議離婚ですね,の際の子どもの意見表明権の保障といったことも視野に入れて考えていく必要があるのではないかと思います。なお,その検討に資するため,子どもの手続代理人の実務についてのヒアリングができればと思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。親権概念,あるいは子どもの意見表明権について御意見を頂きました。子どもの意見表明権については,手続代理人についてのヒアリングをという御要望も頂きました。それから,進め方について,ケースの類型化というか,あるいは,何を対象にしているかということを明確にする必要があるのではないかという御意見を頂きました。それとの関連で,この問題は,先ほども御指摘がありましたけれども,非常に社会的な関心の高い問題ですので,外部から議論が分かりやすいということが非常に重要なことだと思います。その点についても御指摘があったと理解をいたしました。ありがとうございます。
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