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法制審家族法制部会第9回議事録9~今津幹事・武田委員・窪田委員

議論掘り起こしておかないとなーとよぎりつつ

連日の学び・濃厚

令和時代の家族風景の変化を感じ

だから、女性蔑視にも敏感になる

正しく議論を追いかけようか

議事録読んでいく

○今津幹事

 幹事の今津です。資料の11ページの①のところについて御意見させていただきたいと思います。子どもの意向を聴取するという仕組みに関してですけれども,子どもの意思を尊重しようという方向性については,もちろん賛成なのですけれども,この局面で意向聴取を設ける,それを必須とすることについては少し慎重に検討してもいいのではないかと思っております。この場面では,親権者としては養子縁組をしたい,承諾をしたいけれども,子どもはどう考えるかと,そういう形で問い掛けをすることになろうかと思うのですけれども,その場面で子どもが縁組に反対するというような意思を仮に持っていたとして,それを果たしてきちんと表明することができるのかというところは少し疑問でありますし,仮にそういった意向を表明したときに,その後の親権者なり親権者のパートナーとの家族関係,広い意味での家族関係がどうなってしまうのかという懸念もありますので,聴取する仕組みを仮に設けるとしても,必須のものとまではしないというような形で,もう少し穏やかな規律でもいいのではないかと考えております。

○大村部会長 ありがとうございます。今津幹事から11ページの①につきまして,意見聴取を必須とすることは慎重に考える必要がある,意見表明がきちんとできるかとか,意見表明した結果どうなるのかということも考える必要があるだろうという御指摘を頂きました。

○武田委員

 ありがとうございます。親子ネット,武田でございます。次は第3に関して意見を述べさせていただこうと思っております。今回,少し時間も限られておりますので詳細はお話ししませんが,5月の第3回会議に参考人として出席いただきました明治学院大学の野沢慎司先生の論文を出させていただきました。今日の議論の中でも,この養子縁組,日本の古い家族観が残っているという御意見も多々あったかと思います。そこに関わる一つの考え方が示されているのかなと,そんなふうに私自身は感じております。
 まず,この論文では,ステップファミリーで起きた衝撃的な事件,今日既に話題に出ておりますが,目黒区で当時5歳の女の子,船戸結愛ちゃんの事件報道について,虐待事件についてというよりも,この事件報道の在り方についての問題提起がなされていると思っています。この裁判で被告である継父が,裁判上で最後に,「親になろうとしてごめんなさいと泣きながら謝罪した」という報道がなされております。ただ,実際の報道では,虐待をしたのは結愛ちゃんの父親であったり,養父であったり,はっきりと継父であるという表現をとる報道機関は少なかったといわれています。これは本質的には血縁の親子関係ではない継父と継子の間で起こった虐待事件であったということが事実かなと思います。
 この論文では,ステップファミリー等を初婚の夫婦とその子どもからなる通念的家族と同様の家族とみなすべきか否かという問い掛けが冒頭なされて,親とは一体誰なのかという問題提起がなされております。具体的には,日本で従来支配的であった離婚,再婚後の家族形成モデルといわれるスクラップ・アンド・ビルド型・代替モデル,それに対し,子どもの権利や福祉を優先する新たな理念に基づいて今,世界的に再定義されつつある連鎖・拡張するネットワーク型継続モデルという二つのモデルが紹介されています。
 詳細は,資料が配布されていると思いますので,委員,幹事の先生方にも是非御一読いただきたいと思いますが,この論文の,例えば76ページ,3段目以降に,海外の知見に基づく四つの指針が示され,77ページでは,子どもの重要な資源,資源という表現をされています,具体的には,親及び背後に連なる祖父母など一群の親族を切断せず,子どもに代替親の受容を強要しない,これが連鎖・拡張するネットワーク型継続モデルであり,そのノーマライゼーションが社会的課題であると述べておられます。また機会がありましたら,是非野沢先生のお話も皆さんに聞いていただく機会を頂ければいいかなと,思っています。
 さて,野沢先生の論文も踏まえ,第3,それぞれについての意見を述べさせていただければと思います。子どもの意向確認,今津幹事からもありました,基本的には入れていただきたいと私も思っております。それは第2のところで述べたとおりでございます。ただ,18歳未満のお子さんが親の再婚に対してそもそも意見を言えるのか,実親に対して。極めて困難だと思います。既に同棲されているケースなどもあろうかと思いますが,生活を共にした場合どういうことが生じるのか想像もできない,こんなふうに思っておりますし,繰り返しになりますが,これは年齢にもよりますが,実の同居親に対して意見を言うことというのは非常に難しいだろうというのが私の率直な印象でございます。
 ②に関してです。全ての父母が養子縁組に関与と。関与に関しては,赤石委員始め皆さんからいろいろ懸念点があった,それはそのとおりだと思います。これをどのようにクリアしていくのか,解決方法があるのかということについて,今後検討していくべきと思っております。
 最後に,親権行使者に関してです。親権行使者に関しましては,当該配偶者と離婚した元配偶者の選択肢,この選択肢もあってよいのではなかろうかと考えています。理由はこの後,第4で少し触れさせていただこうと思います。
 別居から離婚,再婚に至る中で,子どもがどういう局面に置かれるかということは子どもの福祉を考える上で非常に重要なことだと思います。姓を変更することも含めて,様々な変化に翻弄されて,意見を表明することもままならないお子さんが非常にたくさんいらっしゃいます。そういった中,子どもの意向確認ということを誰が本当にできるのかと,今の家裁の仕組みの中では,調査官もいれば,今の制度で子どもの手続代理人と,こういった方々も候補に挙がると思いますけれども,そういった子どもと離れて暮らす父母もその候補になり得るのではなかろうかと考えます。
 長くなりましたが,以上です。

野沢先生登場!

○大村部会長 ありがとうございます。資料の御紹介のほか,親権に関わる御発言はまた後でということでしたので,後で改めてしていただくということにしたいと思います。残りの御発言は,主として子どもの意見聴取というのが非常に難しいのではないかということについての御意見として承りました。ありがとうございます。

○窪田委員 

 窪田でございます。もうたくさん個別の論点については意見が出ておりますので,ここでは今後の議論の進め方について,こういうふうに考えてはどうかという御提案だけさせていただきたいと思います。
 一つは,今回の資料は第1読会ということで,いろいろな論点をきれいに分解して取り上げていただいたということで,これ自体は十分にあり得る形なのだろうと思います。ただ,実際に養子縁組という状況を考えますと,ABという実親が代諾なりして,CDという夫婦と子どもが養子縁組をしたというケースと,連れ子養子の場合というのでは,かなり性格が違うのかなという気もします。その点で,分解した論点が全部うまく当てはまるのかというと,どうも何を前提としているのかによって議論の仕方がかなり変わってくるのではないかという気がいたします。基本的には,やはり今日の議論それ自体が示していたと思うのですが,連れ子養子は,いろいろな問題の複合体だろうと思いますので,ある程度,連れ子養子にターゲットを当てた上で,一体,連れ子養子の成立の要件として,家庭裁判所の許可が要るのか,父母の両方の同意がいるのかといったようなこと,そして,その後の親権の在り方というのもあるだろうと思いますし,あるいは,落合委員から出ていた論点というのは,養子縁組をしない場合の法律関係,子どもを連れて再婚した場合の子の養育の在り方という論点もあったのではないかと思います。連れ子養子だけを扱うというよりは,現行法だと多分,子どもを連れて再婚したといっても,子どもと相手方の関係というのは単なる一親等の姻族ということで,直系血族でもないですから,扶養義務もないということで終わってしまうのではないかと思いますが,恐らく一定の子の監護に関することで規律を考える必要もあるのかもしれないという気もいたします。こうした様々な論点があることを考えると,特にこれは今まで離婚後の子の養育の在り方ということから行っていたことを前提とすれば,離婚後に子どもを連れて再婚した場合のその子の養育の在り方という形で,まとめて議論をしていく方が,ひょっとしたら生産的なのかなと思いました。これは検討していただければというだけです。
 もう1点なのですが,11ページの課題の①で挙がっていた部分に関して,これについては法務省の方も十分に把握されているとは思うのですが,今日の御発言の中では,これは資料の書き方もあると思うのですが,年齢を引き下げることに賛成だと言いつつ,恐らく年齢の引下げではなくて,子どもの意見聴取の話をされていたという御意見も多かったように思います。これは多分,法律の専門家以外から見ると同じことではないかと思われるかもしれませんが,民法の現在の規定だと,15歳という年齢を基準として,それより下だったら,代諾という形がある,15歳に今度は達すると,本人が自らの判断で,親の同意がなくても養子縁組をすることができるという形での年齢だということになります。これを12歳に引き下げるということになりますと,代諾が12歳までしかできないというだけではなくて,12歳以上になったら自分でも養子縁組できてしまうという形になります。しかし,多分そこまでの話を含んだ形での議論ではなかったのだろうと思います。多くの場面では,意見の聴取ということでしたから,年齢の引下げと言っても,飽くまで12歳以上だったらきちんと意見を聴くようにしましょうとか,そういうレベルの話だったと思いますので,法務省の方でも少し丁寧にその部分を説明していただいた上で議論を進めていった方がいいのではないか,そうではないと少々危なっかしい方向に行ってしまうのではないかというふうな感想を持ちました。

○大村部会長 ありがとうございます。議論の仕方について御注意を頂きました。委員,幹事に御意見を頂いておりますけれども,かなり多くの委員から7ページの③と11ページの②を関連付けるような形での御発言が続いておりました。これらはいわゆる連れ子養子に関わる論点であるので,こうした論点をまとめて離婚後の子の処遇ということと関連付ける形で議論するということが生産的なのではないかという御指摘を頂きました。今回の資料は1読ということで,養子法のシステムに従って,その成立から解消まで問題が並んでおります。窪田委員から御発言があり,先ほど落合委員からも御指摘があった問題については,後の方で論点として出てまいりますけれども,2読に入るに当たって,どのような形で問題を取り上げるのかということにつきましては,窪田委員の今の御発言や他の委員幹事の御意見も踏まえて,事務当局の方で改めて御検討を頂きたいと思います。それから,年齢の引上げと意見聴取の点は,御指摘がありましたけれども,年齢引下げということになりますと特別養子の年齢などとも絡んできまして,より大きな問題について検討するということになります。代諾年齢の引下げにはこうした関連問題もあるということを踏まえつつ,何をここで議論するのかということについても改めて事務当局の方で整理をお願いしたいと思います。
 そのほか,この第3までについて,何か御発言がありましたら,お願いいたします。

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弁護士古賀礼子
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