法制審議会家族法制部会ウォッチ5(沖野委員と落合委員)
各委員のフリートークをいよいよチェック
民事実体法の観点からの沖野委員が口火を切り、そして、家族社会学の落合委員が、広い視点からのご意見!大変興味深く、読むだけで勉強になるから、議事録がやたら楽しい!!
ちゃんと、読みやすいようにまとめられているというのもいいなーと実感しながら、はてさて
○沖野委員
もしほかにおいででなければ,取りあえず口火を切るということで御発言をさせていただきたいと思います。
私は民法,民事実体法を専攻しておりますので,関心も,民事実体法がこれらの問題にどう対応していくのか,在るべき制度がどういうものかという観点でございます。そういったときに,一つは,現在の社会情勢が多様化しているという,多様化が一つのキーワードだと思いますけれども,そういう多様な社会情勢を踏まえた上で,しかし制度としては,これに全面的に対応するということに必ずしもなるわけではないと考えておりますので,それを前にして,民法にどのような制度を置くべきかという観点が大事だと思っております。
他方で,しかし,民法の在り方といたしまして,既に改正は重ねておるところでございますけれども,それでも全般的には規定の数も少なく,例えば,当事者の協議に委ねるとしても,言わば何もモデルも示さず,手掛かりも与えず放置しているというようなところもございまして,そういった民法の規定がやや不親切ではないかと思われる点があります。
また,既に課題として出していただいているように,概念がいろいろ錯綜しているというところがございまして,それが理解の困難を生んでいたりという状況もあります。あるいは,必ずしも適切ではない制度になっていないか,あるいはインプリケーションとして問題があるのではないかといったこともあります。これらにどう取り組んでいくかということに最も関心があるということでございます。
その場合なのですけれども,今回の諮問事項につきまして非常に特徴的だと思われますのは,諮問といたしましては,離婚及びこれに関連する制度に関する規定の見直しということになっておりますけれども,およそ全般的に離婚とそれに関連する制度ということではなく,飽くまで子の利益の確保等の観点からという非常に目的意識の高い形で様々な制度を横断していくという形となっており,それが特徴的なことではないかと考えているところです。そうしたときに,子の利益の確保等,その中に意思の要素をどう入れてくるかとか,それを酌み取れるのかといったこともあるかと思いますけれども,この目的に照らしてどういう制度が在るべきかといったときに,それを全て民法で受けるのかという観点も重要だと考えております。
以上はごく抽象的な,一般的なことでございますけれども,もう1点だけ,範囲について少し気になっているところをお話しさせていただきたいと思います。今回の資料1は飽くまで例示ということなのでございますけれども,子の利益の確保等の観点から,離婚及びこれに関連する制度に関する規定等の見直しを考えるといった場合に,そうはいっても,今回の見直しというものがどこまでを対象とするのかについて波及するような話というのがあるように思われましたので,その点について冒頭でお話をさせていただきたいと思います。3項目ございます。
一つは,例えばなのですけれども,面会交流ですとか養育費について取り決めるということを仮に協議離婚等,あるいは離婚の際の要件ということにした場合には,一方で子の福祉や利益の観点からすると,そこだけにスポットが当たるわけですけれども,離婚の要件を考えていった場合に,果たしてこのピンポイントでいいのか,それとも,やはり離婚の要件そのものについても更に波及していくのかということが一つは気になっております。
2点目は,財産分与の関係でございますけれども,離婚の際の給付に関することですが,これは離婚の際の取決めという点とともに,婚姻の段階での事前取決めというものをどう考えるかといった問題にも波及するように思われます。夫婦財産契約の在り方ですとか,そういうことにも関連するかもしれません。そういったものをどうするのか,波及していくと考えるのか,それとも,そこはやはり項目として限界付けというか,停止をするのかということです。
3項目は,未成年養子の関係でございまして,未成年養子の見直しにつきましては,特に孫養子などになりますと,これは遺留分制度との関係なども問題となってくるかと思います。子どもが3人いるうちの1人の孫を養子にするということは,それで実質的には遺留分の変動なども生じてきますので,具体的に相続制度についてどう考えるかということも念頭に置きながら考える必要が出てくるのではないかということです。このように挙げていただいた項目につきましても,波及したり派生したりするものがあって,それらを考慮に入れるのか,入れないのかといったことも問題になるかと思っております。
以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。多数の貴重な御指摘を頂きましたが,最後に,子の利益の確保の観点からと諮問には掲げられているけれども,そうした形で問題を絞り込んだ際に,波及する問題というのが出てくるけれども,どの辺りで線を引くのかという観点が重要ではないかとの御指摘を頂いたかと思います。
ほかに御発言,いかがでございましょうか。
○落合委員
社会学者ですので,法律の細かい論点よりは,大きいところから関心を持っておりますので,早いうちに発言させていただいた方がいいのかなと思って,手を挙げさせていただきました。
まず,社会学の関係者というのは余りこの審議会に入っていないように伺っていますけれども,戦後の早い段階では社会学と法学の協力というのは随分あったものですから,それがもっとある方がいいだろうなと思っております。少し自己紹介的なことですが,私,家族社会学が中心ですけれども,比較と歴史の観点から見ておりまして,つまり,現在というものを時間的,空間的に相対化するというようなマクロな見方から見ております。ですから,歴史に関しては歴史人口学というのをしておりまして,江戸時代の資料から離婚とか養子とかいうことも分析したことがございます。離婚は江戸時代,多かったのは,よく知られておりますけれども,結婚から離婚までの期間というのが,江戸時代の終わりになるに従って縮小していくのですね。ですから,割とその後,安定した時期ができるというような,そういう近代的な結婚関係というのが明治が始まる前に確立したことというのが今の研究テーマです。
養子についても,男性の20%から25%は養子に行っていたと,それから,養育のための養子もありまして,少なかったと言われていますけれども,特に九州の方では非常に多いと,その実態などについても調べております。ただ,養育のための養子は,そうなった人は戸主になる年齢が早いのです,一般の男子よりも。つまり,相続,跡取りということと,養育のための養子というのがリンクしていたのが江戸時代だなというふうに見えてきます。もちろん,そうではない養育のための養子もあったと思いますけれども。その辺りを踏まえて現在というものも見ております。
今回の最初の検討事項を伺いますと,やはり欧米の家族の現在というものが比較の対象になっていると思うのですけれども,日本が過去から持ってきたものというのを意識して見ないと,ただ日本が後れているように見えてもしようがないのではないかと思うのです。
雑駁に言うと,私は日本は東南アジアだと思っているのです。中国ではなくて東南アジア。
孤立した日本という特殊な文化があるのではなくて,東南アジア的な緩やかな家族関係というのを持った社会だと考えています。双系的な親族制度といいますか,ですから,離婚の緩さとか,それから,子どもを連れてどんどん移動してしまうとか,その辺りは日本の伝統とも関係していると思うのです。その辺りも考えて,次に進んでいくべきであろうと思っております。
それで,今回のテーマにつきましては,定石の進んでいく方向というのがあると思うのですね。欧米の方には行かないとは私は全然言っていないのです。人権重視ということで重要な方向があると思っています。ただ,今まで日本で定石の方向に法改正をしたときに,思わぬところで,運用面で,それが不幸な結果になるということがありました。例えば,非正規労働者の無期転換の5年ルールというのが最近ではありますけれども,いい法律のように思えるのですけれども,そのことによって5年で首になる非正規労働者というのが非常に増えました。そのような抜け穴を許してしまうような改正であれば,しない方がましというようなところがありますので,そこのところを十分考えてやっていきたいものだと思っております。
もう一つだけ言わせていただきたいのですが,子どもは誰のものかという,子どもの権利のため,利益のためということを強調していますから,子ども個人のものであるという立場が基本なのだと思いますけれども,養育費のことにしても,夫婦がきちんと関われということですよね。子どもは親2人のものなのでしょうか。それはすごく近代核家族的だと思います。もっと広い親族集団とか,村とか,それから何より国家ですね,そのメンバーなのですよね,個人というのは。個人を育てるというのは夫婦の責任だけではない。ですから,この養育費についての御議論を少し見ていますと,産んだが最後,一生付きまとうぞ,みたいな感じで,産みたくなくなると思うのです。もう少し,親が離婚しても困らないような,例えば,ベーシック・インカム・フォー・チルドレンみたいな,国家として子どもの養育にもっと責任を持つということとセットにして,この養育料の取立てなども議論してほしいと思いました。
すみません,長くなったと思います。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございました。近代西洋法の外に広がる観点を御指摘いただくとともに,立法の意図せざる効果というのにも注意する必要があるといった御指摘を頂いたかと思います。注意して検討していきたいと思います。
大村部会長の要約を追っかけるだけでも、かなり整理されていく
有識者会議ってさすがだなー、と感動を覚えながら続く
読み切るのに、これ、16シリーズまである(笑)
読もうよ会に間に合わない!!
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