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子ども・高齢者・障害者を含む住民の人権保障のために、地域の家庭裁判所の改善と充実を求める決議について~<旅終えて三連休最終日の振り返り>

司法の闇

チャレンジ基金申請期限近いので、その対応

先週末思い切って、長野に出向いた件のこと掘り下げてみる

日弁連の人権擁護大会にて、無事採択された決議はこちら

とにかく資料が膨大なのだけど、子どもの権利のところにフォーカスしてみる

第4 子どもの権利を保障するための提言

1 実質的に保障されなければならない子どもの権利
 (1)子どもは、権利の主体であると同時に特別な擁護も必要な存在である。子どもは発達する存在であり、家裁実務においても一人一人の年齢や成熟度に応じて、権利主体として対応すべきである。国連では1989年に子どもの権利条約が採択され、1994年には日本も同条約を批准している。しかし、我が国では、子どもの権利主体性を前提にした対策が十分講じられてこなかった
 (2)本年4月1日、我が国において初めて、こども施策を総合的・包括的に行うこども家庭庁が設置された。国は、「こどもまんなか社会」として、常に子どもの最善の利益を第一に考え、子どもに関する取組、政策を国の真ん中に据える社会を目指すことを明確にし、子どもが権利の主体であることを社会全体で認識し、子どもを誰一人取り残さず、健やかな成長を後押しすることを標榜する地域の家裁もその社会の一員として、子どもの最善の利益を第一に考えた改善・充実が必要である。こども施策の決定過程に子ども・若者の意見を反映し実践・推進する取組「こども若者★いけんぷらす」も始まっているが、子どもの意見表明権保障に適う取組として期待でき、今後、家裁の問題についても具体的にテーマとすることが望まれる。
 また、こども家庭庁設置とともに、子どもに関する包括的法律として「こども基本法」が施行された。同法には基本理念として条約の一般原則に相当する規定が置かれ(同法第3条)、こども施策への子どもの意見反映等が明記された(同法第11条)ことは評価できる。他方で、具体的な子どもの権利が明文化されず、子どもの権利擁護委員会の設置や、優先的な予算配分規定も見送られるなど、今後の改正により実現すべき点も少なくない。
(3)子どもの権利条約の各条項の内容はそれぞれ明確かつ具体的であって、批准国である日本においても国内法的効力を有する。特に、①差別の禁止、平等権保障(同条約第2条)、②子どもの最善の利益の第一義的考慮(同条約第3条)、③生命への権利、生存・発達の確保(同条約第6条)、④意見表明権、意見を聴かれる権利(同条約第12条)の4つの大原則は、家裁実務においても最大限保障されなければならない。
 子どもの権利保障に対する国家機関の在り方については、同条約第6条によく表れている。同条第1項は「締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。」と規定するが、この最も基本的な生命への権利でさえ「児童がこれを有する」となっていないのは、子どもの場合、特に国家による保護・援助が必要であると考えられたためである。
 その上で、第2項では「締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。」と規定する。家裁も国の機関のひとつであり、子どもの生命・生存・発達を最大限確保する責務を担っている。

2 子どもの権利の保障の視点からの提案
(1) 家裁調査官の活用拡大と子どもの手続代理人の積極活用
  ① 一人一人の子どもの最善の利益を実現するために、少なくとも手続的には子どもの意見表明とその適切な聴取、その上で意見の尊重が不可欠である(同条約第12条)。なお、国連子どもの権利委員会は、一般的意見7号で子どもの意見表明権について、「話し言葉または書き言葉という通常の手段で意思疎通ができるようになるはるか以前に、さまざまな方法で選択を行ない、かつ自分の気持ち、考えおよび望みを伝達している」とし、乳幼児でも意見を表明できるとしている。
 2013年1月施行の家事事件手続法において、家裁は、特に子どもが影響を受ける事件では、子の陳述の聴取、調査官調査等により子の意思を把握するように努めこれを考慮しなければならないという規定が設けられた(同法第65条、第258条)。しかし、現状では、立法趣旨に適った対応が十分になされているとは言い難い。子どもの意見表明権、意見を聴かれる権利(同条約第12条)は、家裁においても年齢を問わず全ての子どもに対して保障されなければならない。
② そのうえで、家裁調査官による子どもの意見聴取は、家裁調査官が子どもと対面で信頼関係を構築しながら、科学的・専門的知見を活かし、一つひとつの言動や表情の変化等にも細やかに気を配りつつ、丁寧に行われなければならないものであって、ITによる方法で安易に効率化できるものではない。他方で、IT機器を利用した方が意見を表明し易い子どももいることから、将来的には、調査官調査の手法そのものについて選択の幅を広げることも検討されるべきであり、家裁の設備・備品の充実や家裁調査官向け研修の更なる充実も必要である。もっとも、その子どもにとってIT機器を利用した方が意思疎通がし易いかどうかの確認をすることも含めて、まずは直接対面し信頼関係を構築することの重要性が失われるものではない。また、IT機器の利用自体が困難な障害児や乳幼児等については、直接対面での調査の必要性が高く、調査を受ける子どもの負担を極力少なくするためにも、身近な居住地域の家裁に家裁調査官が常駐していることが必要である。
③ また、子どもの手続代理人制度も積極的に活用すべきである。同制度は、家事事件手続法制定において、子どもを調査の客体とするのではなく、子どもが主体的に家事事件に関わることを可能とする制度として設けられたものである。子どもの手続代理人は、子どもに寄り添い、IT機器等も柔軟に活用し裁判所内外の活動を行い、子どもの意見表明権の保障のための意見形成支援を行うなど、中立性を要求される家裁調査官には代替できない活動を行うことができ、本来的に子どもの意見表明権を実質的に保障する制度である。当連合会は、子どもの手続代理人の活用に関して、最高裁判所と協議を行ったうえで、2015年7月31日付けで「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」を作成した。しかし、その後も「子どもの手続代理人」制度が十分に活用されているとは言い難い。各地の家裁においても、地元弁護士会との協議を進めるなどして、これまでの選任件数が極めて少ない実情を改善し、子どもの手続代理人を積極的に活用すべきである。
 なお、同制度の活用に伴い、家裁調査官は、判断者である裁判官が適切に評価できるよう、手続に参加した子どもが表明した意見を裁判官に伝えるという重要な役割も担うことになるため、増員による適正配置だけでなく更なる質の向上も望まれる。
④ 両親の離婚等に伴う環境変化は、子どもの人生にとっても一大事といえる場面であり、子どもの意見表明権、意見を聴かれる権利(同条約第12条)を実質的に保障することは、子どもの最善の利益を第一義的に考慮する(同条約第3条)ために必須の手続である。「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第10回)」によれば、2022年の統計として、婚姻関係事件(夫婦関係調整調停事件、婚姻費用分担請求事件等)において調査命令が発せられたのは、6万1271件中9870件(全体16.1%、夫婦関係調整調停事件22.0%、婚姻費用分担請求事件8.0%)であって、子の監護事件(面会交流事件、養育費請求事件等)において調査命令が発せられたのは、3万6210件中1万5830件(43.7%)となっている。
⑤ 家裁調査官は全ての家裁においてより積極的に活用されるべきであり、少なくとも未成年の子がいる夫婦関係調整調停事件、子の監護者の指定・変更事件、子の引渡し事件、面会交流事件、親権者の指定・変更事件については、原則として全件につき家裁調査官を立会させるべきである。本来は、子どもに影響を及ぼすあらゆる手続について子どもの意見表明権が実質的に保障される運用が早期に実現されなければならないが、家裁調査官の絶対数が不足している状況における当面の措置として、現在実務で使用されている子についての事情説明書等における聴取内容を見直し、子どもの環境等をよりきめ細かく把握できるよう工夫することが望まれる。同事情説明書については担当の裁判官・書記官だけでなく家裁調査官も内容確認することを未成年の子がいる婚姻関係事件及び子の監護事件の全件において徹底し、記載内容等から子どもの権利侵害等の不安を抱いた場合には、家裁は速やかに調査命令を発するとともに、職権で子どもの手続代理人選任手続をとるという運用を提案する。
⑥ また、家裁における児童虐待に関連する各種手続においても、家裁調査官をより積極的に活用すべきである。
 現在、いわゆる児童福祉法第28条申立事件等においては児童の年齢を問わず家裁調査官による調査が行われるのが一般的であるが、2018年4月から施行された引き続いての一時保護承認審判手続(同法第33条第5項)においては、意見聴取は15歳以上の子のみに書面で行われ、15歳未満の子には意見聴取を行っていない。しかし、15歳未満の子どもであっても、様々な方法で自分の気持ち・考え・望みを伝達することは可能であり、他方で、15歳以上であっても書面での意思表示が苦手な子どももいる。対面やIT機器の利用も含め家裁調査官による直接の意見聴取を、原則として年齢制限なく行う制度に改正すべきである。
 なお、2022年6月成立の改正児童福祉法により一時保護開始の判断についても司法審査の導入が制度化され、2024年6月14日までに施行予定である。制度上、一時保護状の審査は家裁の裁判官だけでなく地方裁判所や簡易裁判所の裁判官も判断権者となることが予定されているが、裁判官の児童福祉に関する知見や理解のレベル差により誤った判断がなされることがないよう慎重な運用がなされなければならない。将来的には、判断権者を家裁の裁判官に限定し、家裁調査官も積極活用できる制度を目指すことも検討すべきである。
(2) 全ての家裁支部等への児童室等設置
 ① 児童室は、子どもの調査を行う際に子どもが安心できるように、カーペット敷き等になっており、ぬいぐるみ等の玩具や絵本、箱庭療法の道具等が備え付けられ、遊びながら話を聞いたり、子どもの様子を観察したりできるように作られた部屋である。意見聴取のほか試行面会で使用されることも多く、隣接して観察室等が設置され、ワンウェイミラーやビデオリンクによって児童室内の様子を見ることができるようになっていることが多い。
 調査官調査を中立公平に行うために当事者等の影響を受けない裁判所内で試行面会を行う際には児童室等の試行面会施設が必須となる。しかし、全国203の家裁支部の中で、いまだに庁舎内に試行面会施設の存在しない支部も存在する。それらの支部管内の子どもは、試行面会のためだけに遠方の本庁や支部まで赴かなければならず、ただでさえ両親の離婚問題で心を痛めている中、学校を休んだり早退したりして更なる心身の負担を強いられている。調停期日に試行面会も行う場合には、遠方の家裁で面会交流を実施した後にわざわざ係属支部に戻って調停を行うこともあり、当事者が時間的・経済的負担から試行面会を諦めてしまうこともある。このような現状は、子どもの平等権・最善の利益の第一義的考慮・面会交流権・意見表明権(同条約第2条、第3条、第9条、第12条)の保障上大きな問題がある。
② まずは、全ての家裁支部に試行面会機能も有する児童室等を可及的速やかに設置すべきであり、将来的には、全ての家裁出張所にも設置すべきである。設置方法については、ITを活用し既存の調停室2室をビデオリンク方式で繋ぐ方法で調停室兼用の児童室等を設置することにより、大掛かりな工事や多額の予算を要せずに改善が可能である。また、全国の家裁出張所は、従前家裁支部であった庁舎もあり、係属事件数の割に調停室に余裕のある庁舎も少なくない。ビデオリンク方式であれば早期に児童室等を設けることが可能であり、子どもの権利保障と共に施設の有効活用にもつながる。

家裁にまつわるテーマは多岐にわたるけども、離婚後の子育てに関係する部分を抜粋

ほんと、ここまでの準備も相当大変だし、シンポジウムをやって、提言について採択されるか決議をとる

弁護士会という大きな組織を挙げての取り組みの壮大さを知る

そこにお世話になったことのある恩師や先輩たちのお姿も拝見したりして、東京のはずれでマイペースに子育てしながら好きな仕事をやっていて満足している世界と大違い

ロースクルーを卒業したのが、2010年だったから、そこから13年を経て、さらにまた学びをいただく

母校のご縁を感じるのである

人権擁護大会自体が、初めての参加で、よく見ると本当に様々なテーマを取り扱ってきている中で、家裁の問題は、今回初めて!!それ自体もめぐりあわせ!

だから、いつもやっている問題の連続性を感じて、さらに関心しやすかったのである

高齢者・障害者も住民として影響のあるところで、本当に幅広いテーマが取り扱われていたけど、やっぱり子どものの観点の決議を見てみる↓

2 子どもの権利の保障の視点から、
 (1)家裁における子の監護事件及び未成年の子がいる婚姻関係事件、並びに児童虐待に関連する各種事件について、家裁調査官をより積極的に活用するとともに、子どもの手続代理人制度も活用し、どの地域の子どもに対しても平等に意見表明権を保障し、子どもの最善の利益を最大限保障する家裁実務を速やかに実現する。
 (2)全ての家裁支部庁舎及び家裁出張所庁舎に、児童室(調査室・試行面会施設)を設置し、どの地域の子どもであっても平等に意見表明権が保障され、面会交流の支援を適切に受けることができる環境を早期に確立する。
(3)地域の家裁による管轄地域の要保護児童対策地域協議会代表者会議への参加を全国規模で拡大し、児童虐待防止のための地域連携の向上に家裁も参画する。
(4)少年審判を取り扱う家裁支部を拡大し、どの地域の子どもであっても自らの居住地域で少年審判を受けることができる体制を実現する。

面会交流は原則実施ではなかったのか?!

まだまだ読み応えがあり、今後の司法の闇に立ち向かうにあたって活かしていけそうな予感☆





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弁護士古賀礼子
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