続・平等論

憲法14条について考えを深めている

共同親権制に関する各国賠での議論を確認した

先行する作花先生の裁判での議論からみてみよう

憲法14条違反についての部分だけを抽出する

裁判離婚において親の一方のみを親権者として定め,もう一方の親の未成年者子に対する親権を全て失わせる民法819条2項は,必要を超えた制限を,親権を失う者に加え,夫婦であった両親の間で,合理的な理由のない差別的取り扱いを行うものであり,①立法目的に合理的根拠はなく,②目的と区別との合理的関連性もなく,「すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。」と規定して,法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する。

裁判離婚の場合の民法819条2項だけを掲げ、親権者として定められた親と定められなかった親を対比して、後者について過度の制約を受けていることを問題にしている

また、次の点も指摘している

民法819条2項の離婚後単独親権制度は,親が離婚していない未成年者
子に対して,親が離婚した未成年者子について,「2人の親権者の内1人を奪う」という意味において,合理的な理由なく差別した規定である。

ここは、親が離婚していない子との対比になっている

これらに対し、被告国の反論はつぎのとおりになっている

4 本件規定が憲法14条1項に違反するものではないこと
本件規定は,裁判上の離婚に当たり,子の親権者を父母のいずれにするかについては,家庭裁判所が定めるものとしているのであり,父母の間において別異取扱いをしているものではないから,本件規定は憲法14条1項に何ら反するものではない。
憲法14条違反であるとの原告の主張は,要するに,裁判の結果,裁判の当事者間で親権を得る側と得られない側とが生じるということを述べているにすぎないが,憲法14条1項が,裁判の結果が裁判の当事者間で形式的に平等になることについてまで保障しているものでないことは明らかである。
したがって,本件規定が憲法14条1項に違反するとの原告の主張は失当である。

これらを踏まえて、令和3年2月17日の判決は、次のとおり判断している

本件規定は,裁判上の離婚をした場合に,父又は母の一方を親権者と指定することで,他方の母又は父の親権を失わせるものであり,本件規定の下では,婚姻中に共同親権者となっていた父母が裁判上の離婚をした場合に,裁判所が父母のいずれか一方を親権者と定めることとなるため,本件規定が,裁判上の離婚をした父と母との間において,親権の帰属及びその行使について区別をしているということができ,また,本件規定の下では,子が,婚姻関係にある父母であればその共同親権に服するが,父母が裁判上の離婚をすると,父母のいずれか一方の単独親権に服することとなるため,本件規定が,父母が婚姻関係にある子と父母が裁判上の離婚をした子との間において,親権の帰属及び行使について区別をしているということができる。

判断の仕方としては、次のとおり

裁判上の離婚をした父母の一方の親権を失わせる本件規定が,国会に与えられた前記(イ)の裁量権を考慮してもなお,その事柄の性質に照らし,そのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合,又は同立法目的と区別の具体的な内容との間に合理的な関連性が認められない場合には,当該区別は,合理的な根拠に基づかない差別として憲法14条1項に違反すると解される。

その上で、目的審査については

このような本件規定の趣旨に照らせば,本件規定の立法目的は,適格性を有する親権者が,実効的に親権を行使することにより,一般的な観点からする子の利益の最大化を図る点にあるということができるから,本件規定の立法目的には合理性が認められるというべきである。

そして、手段について

子の父母が離婚をするに至った場合には,通常,父母が別居し,また,当該父母の人間関係も必ずしも良好なものではない状況となることが想定され,別居後の父母が共同で親権を行使し,子の監護及び教育に関する事項を決することとしたときは,父母の間で適時に意思の疎通,的確な検討を踏まえた適切な合意の形成がされず,子の監護及び教育に関する事項についての適切な決定ができない結果,子の利益を損なうという事態が生じるという実際論は,離婚をするに至る夫婦の一般的な状況として,今日に至るもこれを是認することができる。このような事態を回避するため,父母のうち相対的に適格性がある者を司法機関である裁判所において子の利益の観点から判断し,親権者に指定するという本件規定の内容は,実効的な親権の行使による子の利益の確保という立法目的との関係で合理的な関連性を有すと認められる。

というわけで、結局、肯定していった

実効的な親権の行使による子の利益の確保という立法目的のために、相対的に適格性がある者を親権者に指定するという単独親権制が合理的であるというのであった


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