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法制審議会家族法制部会第36回会議議事録読む4~久保野幹事・池田委員・赤石委員

気分はジェットコースター

共同親権の議論が進んでいていいのに

土曜日だけど、議事録読もうっか

○久保野幹事

 久保野でございます。私も子の意向、心情に配慮しという文言を挿入する点についての意見でございまして、今回は挿入することには慎重である方が良いという意見であります。
 理由は今までの先生方と重なりますが、環境整備とともに、親子の関係に限られない、より広い適用範囲をもって法改正を行っていくことを今後目指していく方が適切なのではないかという気がしております。理念、権利として、先に法規定として入れた場合にどの程度弊害が起こり得るかということについて、実務界にいない私が具体的に明確に分かるというわけではありませんけれども、御議論を伺っていまして、自分のことを自分に知らされずに決められることなく、参加するプロセスを具体的に整えながら、セットで法制度にしていく方が、かえってしっかりした子の意向の配慮ということを実現していけるのではないかという印象を持っております。
 法規定を入れない場合の現行法の解釈ですけれども、第821条の子の人格の尊重ということについて、佐野幹事、石綿幹事から指摘がありましたけれども、確かに第821条の子の人格の尊重というのは、私も佐野幹事がおっしゃるとおり、主には、支配被支配の関係ではなく、対等な個人と個人の関係であるという意味合いを実現していくということに意味がある規定であると捉えてはおります。けれども、この条文の中に、未成年のこどもとしての特性を踏まえたこどもとの関係での権利義務関係や、その意向の尊重といった趣旨を盛り込めないかといいますと、私自身はそのようなものも盛り込む意味を持つものとして第821条を捉えておりました。今後、より明確に区別して規定していった方が良いということがあり得ることについては、佐野幹事の御発言から教えていただいたような気がしておりますけれども、他方で子の人格の尊重という文言の中に現行法としては解釈で入れていくということは十分にあり得るのではないかと、繰り返しになりましたけれども、そのように思う次第です。
○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事は、子の意向あるいは心情という問題について、やはり慎重論ということでした。前の何人かの方々と共通の点があるということもおっしゃっていただいたのですが、特に、人格の尊重という文言で差し当たり運用できるのではないかという理解ないし解釈をお示しいただいたと受け止めました。ありがとうございます。
 ほかに、第1について何かありますか。
 それでは、池田委員、赤石委員という順番でお願いいたします。

子どもが言っているっていう悪用があるものねぇ

○池田委員

 池田でございます。子の意見、意思、心情等の取扱いについて、一度、発言の機会を頂いたのですが、慎重な御意見も出ていましたところで、再度意見を申し上げたいと思います。
 まず、幾つか御指摘のあった慎重論の理由として、現行第821条との関係ということの御指摘がございました。ただ、第821条の改正に当たりましては、特に子の意見の取扱いということについては議論がされていなかったようにお見受けしていますので、明示的にこどもの意思を含むということでこの規定ができたわけではなかったのではないかと思います。そう考えますと、改めてこの親子関係の基本的な規律の中で議論をし、それに従って第821条をもう一度検討し直すということもあっていいのではないかと思います。確かいつかの部会で小粥委員から、第821条はもう触らないということなのかという御質問に対して、事務当局の方から、この親子関係の規律を踏まえて第821条について検討するということもあり得るというふうな回答もあったところかと思います。ですので、そういったことも可能ではないかと考えています。
 それから、こどもの意見表明というのは独立した権利であるので、改めてしっかりとした規定をその文脈の中で考えていくということの御指摘がございましたが、飽くまでここでは親子の間の、親に対するこどもの在り方ということで親子の関係を論じている、検討しているところかと思いますし、それを超えてこどもの権利というのを民法の中に設けるというのは具体的なイメージが湧かないようなところもありまして、正にこここそがこどもの意見表明について定める場所なのではないかと私は考えています。
 それから、幾つかの弊害ということの御指摘もございました。具体的には、こどもの意見に従って決定をすることで決定の責任を子に負わせるということが酷ではないかと、そういった御指摘ですとか、あるいは父母が自己に都合のいいようにこどもに意見を言わせようとするような弊害、そんな指摘があったかなと思います。
 まず、一つ目の弊害とされているものについてですが、こどもの意見表明権の理念は、飽くまでこどもの意向や心情の表明を経て、親子の対話によってそのこどもの最善の利益が形作られていくというプロセスを保障しようとするものでございます。こどもに何でもかんでも決めさせるという親の無責任を許容するような概念ではありません。もちろんこどもの示した意向や心情によって物事が決められるということもあり、自ら選んだことにこども自身も責任を引き受けるべき場面もございます。しかし、それも含めてのこどもの権利主体性です。こどもは保護の対象としてのみ存在するのではありません。大石委員から御指摘がありましたように、ややパターナリスティックな考え方ではないかと、こどもを保護の対象として見るからこその弊害の御指摘ではないのかなということを感じます。こうしたことは、既にこどもの権利条約の解釈としてもこれまで示されてきたところかと思います。
 次に、父母が自己の都合のいいようにこどもに意見を言わせるという弊害については、まず第1の規律というのは、親たる者のあらゆる場面での行為規範を示しているものでして、父母が離婚などで対立している状況を主要な場面として想定しているものではないことを指摘したいと思います。仮に父母が対立する場面に限ってみましても、自己の都合のいいようにこどもに意見を言わせるというような行為は不適切な行為であって、それこそ子の人格の尊重にもとる行為であります。子の人格の尊重とともにこどもの意見の表明ということをセットで規定すればいいのではないかと思います。
 逆に、法務省の調査研究として行われました、未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査分析業務報告書で、「あなたは父母が別居するときに父母に自分の考え、気持ち(本心)を伝えましたか」という問いに、「特に伝えたいことはなかった」の33.5%に次いで、「伝えたいことはあったが伝えられなかった」は21.5%と、多い結果となっています。意向や心情を伝えたいというこども側のニーズにもこたえる必要があるのではないかと思います。
 もとより、これら指摘いただいています弊害という事情が全く生じないということではないと思います。無責任な親もいれば、こどもの意向や心情を盾に取るという親もいるかもしれません。しかし、そうした一部の例外的な事象を基に制度設計するということはいかがなものかと思います。例えば、離婚後共同親権についてDV事案が紛れ込む懸念があるからといって共同親権自体をやめようという議論にはならずに、共同養育の理念をうたいつつ、例外事象を除外するための一定の手当てをしていこうという議論をしてきたのではないかと思います。それがことこどもの意見に関しては、どうして弊害ばかりが指摘されて、それを基に制度設計がなされるのかというところは疑問に感じざるを得ません。私としましては、父母がこどもの養育において、こどもに関係する事柄の決定に当たってこどもの意向や心情を聴き、しっかりと受け止め、その最善の利益を実現していくという養育の在り方を、やはり第1の1のところで具体的法規範として規定していくべきだと考えています。
○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、今までに出ている慎重論の論拠の幾つかを挙げられて、それについての御意見を頂いたと理解をしております。第821条との関係、あるいは規定を置く場所としてふさわしいのかどうかという問題、そして3番目に、弊害に対する考え方をおっしゃっていただいたかと思います。改めて、規定を置くべきだという御意見をお示しいただいたと受け止めました。

やっぱり、子ども手続代理人が普及できていないのが問題よ

○赤石委員

 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。今までの議論をお聞きしたのですけれども、2点お伝えしたいと思います。
 先ほど少し言い忘れてしまいました。第1の1(2)、婚姻関係の有無にかかわらず、父母は互いに人格を尊重し協力しなければならない、その子の利益のため、子に関する権利の行使又は責務の履行に関しという、少し条件はあるのですけれども、ここについて、最初に私も拝見したときには、今非常に別れたときに攻撃的な行動をされる方たちの抑止になるやに思いました。しかし、逆に言えばこの協力義務というのが逆に作用することもあるというのは戒能委員から御指摘があったかと思います。やはり協力し合わなければいけないが、していないではないかといったことになる危険性がある。フレンドリーペアレントルールについての御指摘もありました。私もそういう懸念もございますので、ここではっきりとこれについては伝えておくべきかと思いました。
 2点目は、池田委員のもう1回御指摘された子の意思あるいは心情、心情というと余り私は何かぴたっと来ないので、意思か意向ではないかと思っております。これは民法の中できちんと位置づけられるべきという意見については、私も賛成です。先ほど棚村委員が、環境整備がまず必要であるという御意見がありました。この共同親権を選択あるいは決めるに当たり、環境整備があるとは私は全く思っておりません。オーストラリアでは、棚村先生も御報告されておりますように、数は忘れてしまいましたが、何百のファミリーサポートセンターがあってもなお、親子交流時に殺人事件が起こってしまっているわけでございます。こういったことを考えて、では環境整備というのが一体日本であるのかということを考えると、ではやめましょうという議論を今までしてきていないわけですよね。池田委員はもう少し柔らかにおっしゃいましたけれども、非常にびっくりしましたということでございますので、今その方向でこの部会が走っているのであれば、やはり子の意思あるいは意向についても、同じように位置づけるべきではないのですか、と思いましたので、付記させていただきます。
○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から2点の御意見を頂きました。1点目は、人格の尊重、協力ということについてプラスとマイナス双方あり得るということについて、注意すべきだという御指摘かと思います。2点目は、直前の池田委員の御発言に賛成ということでしたけれども、これまでのここでの議論の方向からすると、まず理念の面に着目し、環境整備は後で行っていくという考え方に立つということになるのではないかという御指摘だったかと思います。
 ほかにこの第1について御発言があれば、頂きたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、第1についてはおおむね御意見を伺ったということにさせていただきたいと思います。第1の1(1)のペンディングになっている部分につきましては、前回それから今回併せて、賛否両論御意見があったと理解を致しました。子の意向や心情について配慮すべき場合があるということについて、あるいは配慮する必要があるということについては、皆さん一致されているのではないかと思いますけれども、これをどのような形で規定にするのかということについて、なお意見の不一致があるということだろうと承りました。それから、他の点については、親の責務あるいは尊重、協力ということについての御懸念が表明されている、それについては、先ほど複数の御発言がありましたが、附帯決議等での対応も可能かもしれない。こうした御意見を頂戴しているとまとめさせていただきたいと思います。
 それで、今最後に話題にしました附帯決議の問題がございますけれども、多少早いのですが、ちょうど切りがいいので、ここで少し休憩させていただいて、休憩明けからその問題に移らせていただきたいと思います。現在14時42分ですので、55分まで休憩して、14時55分から再開ということにさせていただきたいと思います。
 休憩いたします。
 
          (休     憩)

訃報に接し、心がぽっかりして読む

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弁護士古賀礼子
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