猟隊に拾われた話。
毎年、狩猟解禁日の11月15日には猟隊の人たちと巻き狩りをすることが恒例になっている。
まだ暖かさの残る山に入ると、ああ、今年もこの時期が来たんだなぁとしんみりする。
今回は、一緒に巻き狩りに興じる先輩方との出会いの話を。
僕の狩猟スタイルの話。
僕の今の狩猟スタイルは、ソロで流しの鳥猟がメイン。
鴨や雉、鳩やヒヨドリなんかがいそうな川や原っぱをふら~っと巡って、いたら撃つ。
そして当たったり当たらなかったり。
同行者も犬もいない、気楽な一人身。
獲れるもんも獲れない時もあるけれど、そこはしょうがないと割り切ってる。
そしてもう一つのスタイルが巻き狩り。
数人のタツと呼ばれる人が山に包囲網を敷き、勢子(せこ)と呼ばれる人が犬と共に鹿や猪を追い出して撃ち獲る方法。
このスタイルには当然ながら頭数が必要で、数人~十数人で隊列を組む必要がある。
大抵は同じ猟友会の仲間だったり、親の代からの猟隊に参加させてもらったりなのだろうけど、僕は違う。
そもそも猟隊の親方とは、住んでいる市も違えば所属している猟友会も別だ。
どういった経緯で仲間に入れてもらったのかと言えば、拾われたのだ。
猟隊との話。
多分、狩猟を始めて3年目くらいの頃。
僕は初めて開拓した猟場をホクホクしながらうろついてた。
と言っても未踏の地という訳ではなく、薬きょうはいっぱい落ちてたので、知ってる人は知っている場所だったのだろうけど。
そこで一人の70代くらいの猟師のおじいさんに出会った。
この方が、僕が所属することになる猟隊の親方(2代目)である。
親方は、その日は一人で犬を連れてふらふらとしてた。
何狙いですか?と尋ねると、「いや~、何ってこともないけど、いるのを撃ちに。」という曖昧な返事。
実際、何かを狙う様子はなく、犬が何か獲物を見つけるのに付き合っているといった感じだ。
親方と僕は、しばらく連れ立って歩くことに。
途中でオオバンを見ては、「ほれ、何かいたぞ。撃て撃て。」と笑っていたりした。
その日は僕に予定があったこともあり、途中でお暇した。
そんなことも忘れた数週間後、同じ場所で再び親方に出会った。
その日の親方は2人連れで、親方よりも年上のおじいちゃん(先代親方)と一緒だった。
あ、こないだはどうも~、なんて言うよりも先に、「おー、今~猪狙ってんだ。ちょっと一緒にやってけ!」とのお言葉。
え、巻き狩りなんてやったことないし、ていうかここ猪いるの!?
一応、一発弾(鹿とか猪とか狙う用の弾)は毎回持ち歩いてたけど、全然油断してた。
というか、この頃はまだ動いている猪すら見たことなかった。
そんな心配をよそに、親方は「大丈夫大丈夫。ここに立って、こっちから猪が来るから、ここだけ狙えばいい。」と、素人でも危険のない場所を指定してくれた。
出会ってまだ15分くらいで、知らない人たちと巻き狩りをすることになった。
そして良く分からないまま待つこと数分、バキバキバキ!!という轟音と共に、ものすごいスピードで猪が2頭、飛び出してきた。
今考えれば絶好のチャンスなんだろうけど、当時の僕はただ唖然とするばかりで、全然動けなかった。
あれが猪か~、なんてことを考えてた。
親方に「すみません」と謝ると、「いいよいいよ」と笑ってた。
そして何でもないことのように、「次はいつ来られる?」と。
僕はいつの間にか、この猟隊に仲間入りしてた。
次の巻き狩りでまた一人、別の人を拾う話はまた今度で。