僕が鉄砲を構えるまでに。~彷徨の猟場探し~
僕は鉄砲を構える前に、獲物を見つけた。
獲物を見つける前に、猟場に行った。
狩猟免許は取得した。
所持許可も下りた。
狩猟者登録も済ませた。
猟期もやってきた。
後は獲物を狩り尽くすだけだ!
見つからない。
で、ですよ。
猪はどこにいるの?
鹿はどこにいるの?
この際、この際鴨でも良いよ。
鴨はどこにいるの?
何にもいない。
鳩1羽すら、僕の前には姿を現さない。
狩猟って、どこに行ったらできるの?
猟場を探す。
完全に見誤ってた。
いや、考えないようにしていたのかもしれない。
猟場を探すということを。
猟銃を持ったら、どこからか猪や鹿が現れて、さあ撃って下さい!とその身を差し出してくれるものだと思ってた。
割とマジで。
獲れすぎちゃったらどうしようとか考えてたちょっと前の自分を撃ち抜きたい。
いや、狩猟鳥獣以外を撃ったら駄目だ。
ぶん殴りたい。
猟場を探す、ということに真剣に向き合わなければならない時がやって来たようだ(遅い)。
真剣に探す。
真剣に獲物を見付けなければ、鉄砲を撃つどころか猟師と名乗ることすらできないということに気づいた僕は、真剣に獲物を見付けようとした。
時に狩猟区域MAPで。
時にGoogleEarthで。
そして時に当てどもなく。
そして気付いた。
車でとは言え、銃を携え、血走った目でうろうろする僕。
あ、これ強盗だ。
あやうく強盗になりかけてた。
これじゃあ駄目だ。
目的を絞る。
「何でもいいから獲物はいねが~」でうろうろするからダメなんだ。
そんな奴の前にはタヌキくらいしか現れない。
目的を絞ろう。
せめて四つ足なのか、鳥なのか。
四つ足(猪とか鹿とか)狙いなら山へ。
鳥、これもできればもう少し絞りたい。
ヤマドリなら山へ。
キジなら平野へ。
鴨なら池や川へ。
タヌキはどこにでもいる。
山なんて入ったことない。
遭難するのが目に見えている。
鳥だ。
鳥を狙おう。
鴨だ。
鴨を狙おう。
鴨なら割と見掛ける気がするぞ。
公園の池とかで見たのかもしれないけど。
そして北だ。
北に行こう。
我が家は関東平野の北端あたりに位置するため、北に行くほど山や川が多くなる。
北の方が獲物が多くいる(気がする)。
そうして僕は、一縷の望みを掛けて北へ向かった。
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