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2枚組写真のすゝめ
先日、2枚組の写真をレコードやCDのジャケットをイメージして作っているという内容の記事を書きました。
CDやレコードをイメージして写真を組んでいるうちに自分の中でいくつかパターンがあることに気づきました。今回は僕が2枚組写真を作るときに使っている手法を紹介していきます。
表と裏(物理)
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正面と背面を撮って並べるというシンプルな手法です。
裏面に意外性があるとおもしろい作品になる可能性が高くなりますし、単純に人物のうしろ姿を撮るだけでもいい感じになると思います。
正面を撮って、裏に回ってもう一度撮るのでストリートスナップでこれをやると労力を使うことがあります。
CDジャケットでもよく見る手法です。
表と裏(精神)
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裏側に回ることで精神的な裏と表が撮影できることがあります。
「きれいな外観なのに生活感のある家」や「外出時の着飾った姿と家でリラックスした姿」などの対比を見せることで面白い作品になります。
視点の移動
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視点を横方向もしくは縦方向に移動させる手法です。
表と裏を撮るよりも撮影の労力が少なくすみます。2枚組写真は横に並ぶことが多いので必然的に横方向の視点移動で写真を撮ることが多くなりますが、縦方向に視点を移動させるのも面白いかもしれません。
パノラマ撮影と違って2枚の写真を見せることで物語性が生まれます。
遠景と近景
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視点の移動と考え方は似ていますがこちらは視点を前後に移動させる方法です。引いた写真と寄った写真の両方を見せることで自分の見せたいものを明確に提示することができます。遠近の差は大きければ大きいほどおもしろくなります。僕は認識できるギリギリを狙って撮ることが多いです。
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ズームレンズを持っていれば一歩も動かずに組み写真が完成することもあるのでコスパのいい組み方とも言えます。
近景を表に遠景を裏ジャケットにするやり方がCDでは多く使われています。
時間の経過
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時間のズレを撮影する手法です。時間の差は数秒から数か月、数年と無限に設定できます。人物の姿の変化、街の様子の変化などを撮影することで大きな注目を集めることもあります。時間の差は大きければ大きいほど注目されやすいかもしれませんが、数秒、数分の変化でも面白い作品を作ることはできます。たとえば食事の前後のテーブルの様子を撮るだけでも面白くなる可能性があります。
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この手法もCDジャケットでよく使われています。バンドが演奏している様子とステージに楽器だけが残された様子の組み合わせを見たことがあるはず。
類似の提示
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形や色や性質が似ているものを2つ並べる手法です。色味や構図を整える必要があり、さらに詩的な表現が求められるのであまり手軽にできる組み方ではないかもしれません。僕の場合このやり方でよくXでスベっています。しかしハマると大バズりになる可能性も秘めているという諸刃の剣。
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川内倫子さんが写真集うたたねでこの手法を大量に使っています。詩的な表現が美しく、音が聞こえてくるような写真集です。参考までに。
色の変更
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1枚の同じ写真を違う色にして並べるという手法です。現像パターンを2つ並べてもいいですし、カラーとモノクロを並べるのも面白いです。色味の違うカラー写真を並べることでアンディ・ウォーホルのような表現ができるかもしれません。
何も言わずとも「どちらの写真がいいと思いますか」という問いかけを写真が鑑賞者に勝手にしてくれます。お得。
洋楽CDの国内盤を買うと解説や和訳歌詞が載っている冊子が一緒に入っているのですが、その冊子の表紙は大抵CDジャケットを白黒にしたものでした。
1960年代後半、写真家のジョエル・マイヤーウィッツは「世界はカラーなのになぜ白黒で写真を撮るのか」という疑問を抱きました。そしてカラーフィルムとモノクロフィルムをセットした2台のカメラを持ち歩きA Question of Colorという写真集を完成させました。同じ場面をカラーとモノクロで撮り考察するという写真集です。
僕はこのマイヤーウィッツの写真集に影響を受けてこの手法で写真を組むようになりました。
複数の手法を組み合わせる
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これまでに紹介してきた手法を組み合わせることも可能です。狙ってやるというよりは撮っているうちに自然とそうなってしまったということが多いのですが、自分の中で分類しておくことで自分の意図していることを把握することができます。
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2枚組写真のすゝめ
Xでは4枚組の写真が多く2枚組写真はあまり見かけませんが、意図が伝わりやすく4枚組より手軽にできるので皆さんもやってみてはいかがでしょうか。
2枚組はいいぞ。