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【聞香会のアーカイブ】2022年7月27日・六国の会・真南蛮

このnoteは、香雅堂で行われる聞香会で話された会話の内容を(個人情報に関わる内容を必要に応じて削除したうえで)純粋に記録したものです。企画概要は以下リンクよりご覧くださいませ。
この企画は、お手伝いの方たちの大変ありがたいご尽力によって成り立っております。この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます、誠にありがとうございます。
麻布 香雅堂 代表 山田悠介

「会長」どうぞよろしくお願いいたします。いやー暑いのに皆さん(笑)
倒れそうになるんですけど。

「会長」本日は真南蛮を聴き比べるという会でございますが。初めてご参加の方おられますか。一人、お二人。えっとこれまで…。

「連衆」五味の会先月。

「会長」五味の会お越しになっている。そちら様は?

「連衆」私は初めてです。

「会長」そうですか。分りました。じゃあどうしましょうかね。ただ香木ってどんなもんかっていう何か疑問とかお持ちのことあります?

「連衆」とりあえずは皆さんのペースで進めていただいて。何かあったら。

「会長」そうですか。よく関心をお持ちの方でも例えば「沈香って元の植物何だろうか。」とか「植物なのか何なのか。」って、そういうことから疑問に思われている方、割と多いようなんですけど。まあもし…。

「連衆」なんとなく基本的な事は理解しているような気がします。

「会長」そうですか。分りました。じゃあもし何か気になることでもありましたら遠慮なくその場でおっしゃっていただいて。

「連衆」ありがとうございます。

「会長」お願いします。
じゃあ今回真南蛮ということで、お手元にある資料の通りに香木を用意してみましたが…
一等最初にインドネシアの沈香。これを炷き出そうと。前回もそうしたんですが、これはですね本来真南蛮っていいますと産地はタイ。真那賀と一緒ですがタイで見つかる。そういうものの中から聞香に耐えうる品質のもの、あるいは家元、あるいは御宗家が「これは真南蛮に分類できる。」というふうに判断されたものを真南蛮として使ってきたということになろうかと思います。

その判断の基準ていうのは、それは各流派、あるいは御家元、あるいは御宗家が手鑑香、手本木ですね。手本になる名香をお持ちで、それと照らし合わせて判断されるというふうなことになっていると思います。

どういう香木をどういう分類で香道で用いるかって言うのは、基本的には家元とか御宗家の勝手なんですね。で、流派っていうのは、香道っていうのはその流派があることによって成立している閉ざされた世界ですから、その中で何をどうするかっていうのは御家元なり、御宗家のご判断と言うことになります。

そういう中でも、でたらめにお決めになっているのではないということですよね。証拠となる、基本となる香りっていうのがあって、それと照らし合わせてどうこうっていう判断をされているということになろうかと思います。

なぜ、インドネシア沈香を最初に炷こうとしているのかということなんですけれども、本来はインドネシア産沈香っていうのは志野流で佐曾羅(あるいは寸門陀羅)として使われるんですね。で、御家流では使われない。そういう産地の木なんですね。今日、御家流系の方っておられますか。

「連衆」はい。

「会長」ああ、そう、はい。
御家流では本来インドネシア産の沈香っていうのは出てこないはずなんです。ところが、タイの沈香が年々少なくなってきて、どんどんどんどんちゃんとした真南蛮として使えるものが少なくなってきているんですね。その傾向っていうのがもう10年、20年前からずっと続いています。

そうすると、我々香木を扱っている業者が何件かございますが、真南蛮として売りたいんだけれど、ふさわしいものが見当たらなくなってくるんですね。それで多分、やむなくというか、苦肉の策で真南蛮として使えそうな香木を他の産地で探したところ、インドネシアのものが使えるという判断であっただろうと推測しています。それは、羅国も真那賀も一緒なんですね。ちゃんとした羅国、ちゃんとした真那賀、それがもう見つけられなくなっているというか、もうないのでそれでやむなく。

まあ味が一つ二つ、一つ二つって事はないですね。味が二つ三つしかないような伽羅を、あるいは香木になり始めてから採取されるまでの期間が極めて短いような、樹脂化の歴史が浅いような、そういう伽羅を羅国とか真那賀とかに使っている。そういう事がもう十数年前から始まっています。ですから、木所の特徴っていうのを本当に出せる香木っていうのが、どんどん少なくなっているということになろうかと思います。

我々が六国シリーズやろうっていう風に考えたのも、まあ正しくそういう理由からなんですけれど。ちゃんとした木所の特徴が出せるような香木がある間は、やっぱりそれをできるだけ味わうのが理想に近いかなというふうに思いますんで。ですから、私どものところに昔から残っている、残してある、そういうものをちょっと焚き出して味わっていただいて、あっ真南蛮っていうのは「こういう性格を持っているのかな。」とか、「真那賀とどう違うのかとか。」「やっぱり志野流の佐曾羅とは根本的に違いがある。」とかということを感じていただけたらいいなという風に思っております。

すいません。今私気がついたんですけど温度計がない(笑)その団扇を見て思い出したんですけど(笑)

あの、最近ですね炷き出してる香炉の銀葉の温度が何度位なんだろうというのを測り始めたんですね。それで私が測り忘れたらいけないので、こういう団扇を店で用意してくれまして、それを上げていただくとハッとして「あっ、温度何度」って測るということになっているんですが。すいません。今ちょっと連絡を取らしてください。

今ちょっと社長にヘルプを。
15:30
これから炷き出すインドネシア産の沈香ですが「霞める空」という仮銘をつけています。

(香木を回し始める)

こんな木ですね。帛紗で挟んでご覧いただければと思います。

インドネシア産の沈香を、まあ他の産地もそうなんですが、いろんなタイプが様々ございます。この「霞める空」っていうのは比較的オーソドックスといいますか、割とありがちなタイプのインドネシアの沈香です。インドネシアって言っても、ものすごく広いんですよね。島が一万以上あると言われています。

そういう中でじゃあインドネシア産って具体的にどの辺のことを言うのかということになりますと、私の存じ上げる範囲では、実際に山の中から切り出してくるっていう過程を見ているという。写真でですが確認しているっていう事からしますと、その範囲での知識なんですけれどもカリマンタンなんですね。カリマンタン。カリマンタンっていうのはボルネオ島の中のインドネシア領。
沈香って通常揮発性がそんなに高くないから常温ではあまり香りしないことが多いですが、それはちょっとしますよね。

「連衆」します。

「会長」はい。

「連衆」今はじゃあタイよりもインドネシアの方がまだ沈香が多く残っているってこと、見つけられるってことですね。

「会長」そうですね。産出量としてはインドネシアは圧倒的に多いんです。昔から。

「連衆」では今一番なくなってきているのはベトナムあたり?

「会長」うーん。

「連衆」伽羅とか。言われますよね。

「会長」そうですね。ベトナムもタイもいいものはほぼ出てこないですね。

「連衆」インドネシアに残っているかもしれない。

「会長」インドネシアは私がさっき言った写真で確認しているっていうのは数年前なんですけど、森の中からこんな丸太が3m位の丸太状の物が出てきたんです。それ買いませんかって写真が送られてきたから、それで言っているんですけれども。そういう事例はあるんですが質はあまり良くなかったですね。その前に出てきたもっと細長いやつは買ったんですけどね。

写真だけで流石にいくらプロでも買うわけにはいかないので見に行ったんですね。ただカリマンタンの産地の森の中っていうのは、普通我々が簡単には行けないような場所なので、危ないですし、それなのでバリ島まで持ってきてくれと頼んででバリ島まで見に行った。そしたら、実物を見たらまだ若いというか見つかってから2 、3年しか経っていないような丸太だったんですよ。で、15kg位あったんですね。だけど、見つかってすぐっていうのは、まだまだ水分含んでいるんですね。香木になっているんですが、全体的に香木になっているんですけど水分を含んでいる。だから、実際に使う段になるまで乾燥させると多分何%か重さがなくなる。実際にそれ丸ごと欲しい方がおられて販売してしまったんですけど、売るまでの間にやっぱり何百gか目方減りましてですね。我々目方でなんぼで買うので、ちょっと辛いですけどね軽くなっちゃうの。

で、問題はバリ島まで見に行って、じゃあオッケーとなるんですが、それ日本に持ってくるのが大変なんです。ワシントン条約で保護されてますから、まずインドネシアから国外へ出すには、政府に許可を得ないといけないんですね。産出地証明っていうものが。その書類はもちろん取れたんですけども、ただ、今度は税関で意地悪されるというか、税関のその職員たちが小遣い稼ぎをしようとする訳ですね。だから、彼らの許しがないと出せない。てなことになったりして色々大変なので、しかも現地の言葉話せないような者が税関通るのは非常に難しいので。

で、これをその、案内してくれた人に日本に持ってきてくれと。そしたら買うからと。日本に着いてここに来たのを確かめてからお金払うと言って、そして持ってきてもらう。やっぱり税関でなんか袖の下をちょっと払ってっていうことがあったらしいですけど。まあそれでも一応無事にきたのでよかったですけど。

一本丸ごと香木の状態で出てくるって事は極めて珍しいですね。過去に何本かはありましたけど、いずれもインドネシアでしたね。タイとかベトナムではそういう事は経験ないんです。だから、中にはあるお寺の広場のおとしがけ(落掛、落懸)って言うんでしたっけ?床の柱、床柱じゃなくてこの上の…に姿を変えたものもありましたし、ある著名な写真家のオフィスの和室の床柱になったのもありましたし。

そういう丸ごとで出てくるって例はちょこちょこはあるんですが。最近では珍しいですよね。今のこの細長いやつが出てきたのは7、8年前でした。だからまあ比較的最近でもまだ出てきたりはするんですけど、そんなに質のいいものがボンボンはもうないんですね。

良いものが出てきたら買うよって、昔からもう何年も前から言ってますけど、もう中国人なんかが現地まで行っちゃってますから先に取られちゃう。こんなの出ましたってサンプルが送られてきて、ああそれ買いますって言って、いくらいくらって言っていても、後から現地で中国人が来て現金でバーンとやられると取られちゃうんですね。そんな風なことが何年も前からありました。最近はもうそういうことすらなくなってきている。いいものが出てくるっていうことが本当になくなってきましたね。だからこんなものとかは、昔はそんなに珍しいものでもなかったですけど、今となってはこういうものが出てくるっていうことがほぼなくなっていますので貴重品と言えますね。

「連衆」今の回していただいたのは佐曾羅としてお買い求めに。

「会長」はい。志野流の佐曾羅としてお使いいただいてます。炷き出して聞香していただければ感じていただけるかと思いますけど、真南蛮が持っている味と似通ったものを持っているんですね。それをちょっとご理解いただいたらと思っています。だから、もう既にこういう風なものが真南蛮として売られている時代になっちゃってますから。ですから御家流の方でこれ聞かれて「あ、これ蛮だね。」って、もう素直に思われる方がおられるはずなんです。違和感がなく蛮というふうに受け止める方が実際だいぶ増えてます。
28:00

128℃で。霞める空です。

佐曾羅・霞める雲・1回目・128℃

「連衆」気温と湿度。

「会長」室温が25.4℃、湿度が54%ですね。
そうか。霞める空です。ちょっとすいません。火道具忘れたので取ってきます。

「連衆」佐曾羅っていうのはないんですよ。

「連衆」佐曾羅は白檀と赤栴檀。そこら辺を佐曾羅と言っているので、今回していただいているものは佐曾羅だと思います。

「連衆」でも六国ってあるんですよね。

「連衆」はい。

<聞き取れず>

「連衆」佐曾羅ってこんな香り?

「連衆」イメージですよね。

「連衆」志野流ですか。

「連衆」私は最近始めたばっかりです。

「連衆」なんかへー、わからない感じ。

「連衆」なんか今までで、一番香りが広がっているような感じがします。今まで出た。

「会長」あ、そうですか。はい。

「連衆」凄いいい香りしますね。

「会長」インドネシアの沈香って割と産出量が多かったんで、お寺さんでのお焼香とか使われている沈香ってみんなインドネシア産が殆どなんですね。だから、あんまりそんなに良くないイメージを持たれる方もおられるんですけどいいものはいいです。ものすごく。伽羅立ちするようなインドネシア産もあります。それはちょっと今回炷いてないですけど。いずれ何かの機会にそういうのも焚いてみようとは思いますが。

そうなってくると殆ど木所わからなくなってくるんですよ。良過ぎると、なんだろうって。それは他の羅国とか真那賀とかにも言えることですけど。沈香でも本当に品質が良いと伽羅みたいに立つし、木所がわからなくなることあります。

「連衆」香り自体というより広がりがすごい。香りは今までもたくさんいい香りがしたんですけれども、遠くからでもすごく香ってくる気がする。

「会長」ああ。そうでしたか、そういうことです。今日は条件が良いのかもしれない。54%湿度。

「連衆」こんなに香るって思って。近寄ってこないとなんとなくうっすらなんですけど、うわーって感じで。

「会長」なるほど。そっか。風の通し方をちょっと前と変えたのが影響しているかもしれないですね。前は向こう開けていたんですが、今こっちと換気扇でやってみて、その方が良いのかもしれませんね。

「連衆」風上だったのかな。

「連衆」急激に、一気にウワーっと。短距離走型っていうか。

「会長」次にですね、同じタイの沈香なんですが、真那賀をちょっと焚きたいと思います。真南蛮と真那賀っていうのは産地が同じなので木の特徴とか見た目とかもかなり似ているんですね。なので、非常にわかりにくいというか、真那賀を探すのが非常に難しいっていう風なことがございます。これちょっとね非常に面白くていい真那賀なんですが、もうちっちゃい。元々がちっちゃい欠片だったので、もうほとんど残っていないんですけど、珍しい真那賀なんでお焚きしようと思います。本当にちょっとしかなくてこんな欠片になってしまってますが。

「連衆」ほんとだかわいい。

「会長」ほぼ全体が樹脂化していて、もう樹脂の塊って言う感じです。ちっちゃすぎてつまみにくいですけど。

132℃ですね。

佐曾羅・霞める雲・1回目・132℃(戻り)

結構いいですよね。立ち始めに比べて、やっぱりこう帰ってきた時は甘さが出ていますよね。割と最初から一貫してしおはゆみ(鹹)があったかと思うんですが、そのしおはゆいって感じ、これ真南蛮にもあるんですね。ですから、そこら辺で真南蛮と混同しがち。この火末だけ聞けば蛮と思われる方がおられても全然不思議じゃないですね。
だけど、明らかに産地が違うんですよ。蛮とは。だから、これは蛮っぽいけど蛮じゃないです。

「連衆」これは産地が違うことを知っているから言えるのか、何にも知らなくて聞香した時にもわかる?

「会長」知ってるから言えます(笑)

<連衆皆笑う>
40:00
「会長」これ塊とか全く見ずにこれだけしか材料がなかったらわかんないですね。迷いますよね。ただこれを銀葉に置いた時からずっと火末まで聞いていると、それは蛮との違いっていうのは、まあ分かると思いますが、一瞬でこの欠片だけだったら見分けは非常につきにくいですよね。

「連衆」それが佐曽羅だとわからないですね。私は。

「会長」はい。志野流の方だったら、昔から長いこと志野流なさっている方であれば、その佐曽羅っていうのは何回も何回も出てきていますから。経験があるんで多分聞き外しはされないと思いますが、馴染みがあるので。御家流の方の場合はそういうのがないですからわかんないと思いますね。

112℃です。いま一声。

真那賀・いま一声・1回目・112℃

立ってますか?立ってます?

「連衆」はい。先ほどスタートダッシュが激しかったので緩やかな感じですね。

「会長」はい。ちょっと立ち始めのタイプが違いますね。はい。
こういうタイプの木がいっぱいあると嬉しいんですけど。こういう真那賀って本当に少ないんですね。で、真那賀の場合このおっきな木ってあんまり見たことないんですね。みんなちっちゃいんですよ。ことに品質がいいほぼ全身樹脂の塊みたいになっているようなものっていうのは、ちっさいものが多いです。この木なんか非常に貴重な、稀少なタイプですね。

「連衆」すいません。1番をわざと128度に。わざとっていうか、意識してちょっと高めにされたんですか。

「会長」はい。そうですね。だからそれもあって最初からバーッと立ったのかもしれないんですが。あの「いま一声」この真那賀はかなり古い木で、立ち始めがあまりさっとは立たないだろうとは思ったんですけれど、あまり高めにしてしまうとなにせ樹脂分が多く含まれているので、後々長く楽しめないかと思ってちょっと低めにしてます。

「連衆」伽羅っぽい感じがありました。

「会長」します?はいはい。

「連衆」伽羅立ちっていうのは伽羅的なですか。

「会長」あはは。おっしゃるとおりで。割と伽羅っぽく立つ真那賀って割と多いですが、大半は伽羅なんですよ。

「連衆」そうなんですか。

「会長」ええ。伽羅を真那賀として売っちゃってるんで。それはもう火末から、もう立ち初めから火末まで伽羅としてしか立たないですよね。だけど、伽羅立ちっていうのはそうじゃないんですよ。伽羅じゃない沈香が伽羅のように立って初めて伽羅立ちですよね。

だからこの「いま一声」が伽羅みたいな風にって聞いていただいたっていうのは、私も非常にわかるというか同感なんですが、伽羅立ちをする真那賀ですよね。こういうのが本当の伽羅立ちだと思います。

「連衆」伽羅ですって言われたら、ああそうなんだって思ってしまいます。

「会長」ああそうですね。かもしれないですよね。そこで、じゃあ伽羅とこの真那賀は何が違うかって事になると、私の感じ方では甘さ、甘さの質が違う。伽羅の甘さと真那賀の甘さは絶対違うんですよ。そこんところが聞き分け所になろうかと思います。
だから、真那賀の聞香会の時は伽羅も焚くようにしているんですけど。伽羅の甘さとどこが違うかっていうのを感じていただく。

「連衆」どう違いますか。

「会長」あ、もう違います。

「連衆」わからなかった。

「会長」真那賀の時も絶対出られた方がいいと思いますけど、あのね、真那賀の典型的な例っていうのは、勅命香があるんですよ家に。結構こういう時に炷けるくらいあるんです。二種類だけは。なので炷くようにしています。そうするとね勅命香の真那賀って、まあ勅命香だからという訳では必ずしもないと思いますけど、時の天皇が好まれてそれで真那賀として銘をつけたという木はやっぱりねいいんですよ本当に。まあ言ってみれば究極の教科書ですからね。それを焚けば真那賀っていうのはこういう立ち方をする。真那賀の持っている甘さっていうのは、こういう甘さなんだと。だから、伽羅を焚いていた時の甘さと聞き比べればやっぱり違いが出てくる。なので、そういう体験っていうのは勅命香位のレベルのものを聞かないと、正解らしいものがなかなかわからないんですよね。そういう点でとてもお勧めの体験になると思います。霊元院の勅命香が二種類真那賀があって『波間』と『雲間』っていうんですが、その両方ともたまたまあるんで。それを炷きますから。真那賀の時に。

今日は志野流の御家元に銘をつけていただいた真南蛮を後ほどお聞かせしますが、それもそれでね、志野流としての教科書ということは言えるんですけど。
52:00
まだ立ってますか。こういうのいっぱいあるといいんですけどね。本当に。

「連衆」あ、温度。

「会長」(笑)失礼しました。いいですよね、この団扇が。123ですね。危ない所でした。

真那賀・いま一声・1回目・123℃(戻り)

次のですね、割と典型的な真南蛮と思えるものをお回しします。これね元々、めちゃくちゃでかい木だったんですよ珍しく。真南蛮でもあんまりおっきな塊ってないんですけど、これはね2㎏以上あったんですね。元々は。とっても大きな塊でした。これ今上に向けてあるところの鹿の子状のこの辺ですよね。典型的な真南蛮の顔という感じですね。

「連衆」香りする?

「連衆」最初に佐曾羅とちょっと甘みが。

<聞き取れず>

「会長」116です。白雲です。58:42

真南蛮・白雲・1回目・116℃

「連衆」これは和歌が書いてありますね。これは和歌から取った銘なんですか。

「会長」はい、そうです。私が勝手にやってるだけなんですけど、一応名前付けとかないと、記号だけじゃわかんなくなってしまうんで。なるべく自分なりに感じたような匂いの感覚、それを表しているような歌を探して適当なんですけどやってます。

「連衆」わかりました。凄いですね。この<聞き取れず>

「会長」真南蛮にもやっぱり色んなタイプがありまして、比較的べったり甘いような真南蛮も見受けられますし、それから、物凄い癖のある真南蛮。なんかこう生臭いような風にも感じられるような、そういうのを特徴とするような蛮も結構沢山ございますよね。この「白雲」は比較的そんな癖はないタイプで割と穏やかな感じで…。
結構手に持ってずしっとしますが、この程度じゃ沈まないですね。

「連衆」そうですか。

「会長」さっきの「いま一声」あれはコトンと沈むと思います。

「会長」この辺黒いですよね。こっち側はやっぱりこういう、ここが続いてきてるんですよね。こういう所だけだったら水に浮かないです。だけど、ここら辺の組織がちょっとやっぱり樹脂化の密度が浅いです。なのでこの辺は軽いですね。だから全体としたら沈まないだろうと思います。だから同じ香木の塊の中でも、やっぱり微妙に立ち方が違うってことが起こりえますね。何が違うかというと、持ってる樹脂の性質は同じだとしても、例えばこういう所と、こういう所だとこっちの方が樹脂化の密度高いですよね。殆ど全部樹脂分で埋まってる。

こっちはそうじゃなくて全体が100だとしたら60位しか組織が樹脂で埋まっていないんですよね。その残りの40%の所の匂いが出てくるんです。炷くと。その違いが起きるんですね。だから厳密に言うと、この辺を試みにして、こっちを本香で出したらわかんない人がいっぱい出てくるんです。そういうことです。だけど、本当によく聞けば、60%でも100%でも同じ匂いの筋ですから考えればわかるんですよ。

「連衆」ただでさえわからないのに。

「会長」(笑)想像を逞しくすれば。あ、これはあそこちょっと薄い浅い所かな?っていう風に聞き分けることは理論上は可能なんです。

「連衆」理論上は…(笑)

「会長」ははは。でもそういう例って結構ありますよね。例えば、どっかの名香席なんていうところに仮にお入りになられるとして「全然よくないじゃないか。」っていうことが多々あると思うんですよね。それは同じ名香でもいい所と悪い所があるんですよね。だから、大体普通は結構いい所を聞きたいから、いい所を先に使っていくと良くないところが残ってきたりしますから。せっかくの名香席なのになんかちょっとカスみたいな感じって十分ありえますね。:
1:05:35

「連衆」このまま焚火に入れたら樹脂だから結構燃えるんですか?

「会長」これどうでしょうね。意外と燃えにくいかもしれないですよね。

「連衆」昔の歴史の中で大きな香木を佐々木道誉が桜の会で焚いたとか、ああいうのはどうやってやったのか。

「会長」塊のまま焚いたのかもしれないですよね。そんな逸話として残るくらいですから大胆なことをやったのかもしれないですよね。アラブでは塊のまま焚くっていいますから実際。でも、丸ごと例えば、そのでかい炭用意して、そこの上に塊ポンっておいて焚いてもそんなにいい香りしないと思いますけどね。焦げ臭くて。でも、アラブは実際そうやって塊で焚くらしいです。

何年か前にサウジアラビアの皇太子が日本に来た時に、記念品を用意したいって言われてそれで何がいいかって言ったら、香炉がいいって言うんです。香炉がいいって言われたから、皇太子のお土産にね香炉って言ったら古伊万里か古九谷とかねあんなやついいんじゃないかって思って探したんです。こんなかわいらしいやつがあって「これどうだ」っていったら、全然話にならないって言うんですよ。ちっさ過ぎるって。彼らはおっきくって派手なやつがよくて。
その大きな香炉どうやって使うんだって訊いたら、中に炭を入れてその上に塊をポンといれるんだと。それで初めてああ、そんな焚き方をするんだって知ったんですけど。それで、有田の知ってる窯ででかいやつ焼いてる人がいるから、そこでいくつか見繕ってもらってお土産はそれで何とかなったんですけど。初めて知りました。でかくないと駄目だっていう。

「連衆」文化が違うんですね。

「会長」はい。全然違いますね文化がね。彼らは昔から結構香木はよく使っていたみたいで。時間が合ったらお見せしますけど「王様のお香」っていうのがカタールにあるんですよ。練香みたいなもの。今日もし時間が余ったらご覧にいれますね。面白いです。

「連衆」ぜひぜひ。みたいです。

「会長」あははは。

「連衆」時間なくても見たいです。

「会長」(笑)そうですね。原料がね。麝香とか上等な沈香。伽羅、それと、もの凄い珍しいローズのエッセンシャルオイル何とかっていうの覚えていないんですけど。そういうのがブレンドしてある練香。

「連衆」練香。

「会長」はい。だから昔、平安時代に宮中で焚いていたような練香のやわらかい版みたいなやつなんですよ。えっとですね。次「朧月夜」これね非常にある意味珍しいんですが「朧月夜」です。
この木はね、江戸時代に姫路藩の家老の家にあったっていうことがわかっている木なんですよ。香木って出自といいますか、出所がはっきりしていることって珍しいんですね。いつ頃、誰の手によって採取されたのかなんていうことは、もうほぼ全くわからないんですけど、この間の私が言っていたカリマンタンの細長い沈香なんかはそれもわかりますけど、そんな例は殆どなくて、大半はいつどこで誰が採取したかなんてわかんないんですね。

この木の場合はさっき申し上げたように姫路藩の家老職の所にあったと。丸のまんまあったんですよね。手つかずで。もう一切削ってもいないし切ってもいない。で、銘なんかはついていないと。そういう放置されたような状態で何本かあったんですよ。それがまとまって出てきたんですどその中の一本です。当時、いろんな武家とかでも香木は関心持って集めたりはしていたんでしょうけれど、実際に大半の場合は…例えば宇和島の伊達さんなんかの所でもちゃんと使ったりした形跡はありますし、実際に使ってたりするんでしょうけれど、この場合はね全く手つかずでしたね。そういう点で非常に珍しかったですね。

「連衆」手にすることはないと思いますけれど、あのくらい大きな香木はどうやって保管するんですか?

「会長」沈香か伽羅でおっきく分かれますが。沈香であればそんなに気にしなくても大丈夫です。

「連衆」そのまま置いておいて?おっきいのはどうやって?引き出しとか入らないんじゃないかなとか。

「会長」あのですね。他の強い匂いが移らなければ。例えば石鹸が入っているような棚に入れたりとかされなければ。そんなに。冷暗所。比較的冷暗所といわれるような場所であれば、全然問題なく。例えばビニール袋に入れた状態でポーンと置いといても。そんなには劣化しないです。こういうのは高温多湿とか、それから乾燥、紫外線、それは怖いのと、それから人工的な匂いですね。それは吸着しますからそれは怖い。それ以外はそんなでもないです。意外と。

「連衆」伽羅だとまた。

「会長」伽羅の場合はやっぱり持ってる樹脂分の揮発性が沈香と違って高いので、どんどん揮発する。揮発はしていますけど、それを更に高めるような事態が怖いですよね。それと、より匂いを吸着しやすいような気がします。沈香よりも。
例えば香水線香のような化学香料の匂いが充満している部屋に香木を保管しておくと、線香と離してあったとしても、その香水線香の匂いって移るんですよ。どんどん香木がそれ吸っちゃって香木の外側は香水線香の匂いしかしなくなったりとか。それは石鹸で洗ったりしても落ちないんですね。簡単には落ちない。中に本当に浸みこんじゃっているんで。

「連衆」香水線香っていうのは原料はやっぱり自然のものですよね。

「会長」いや、全く違います。

「連衆」人工の香料とか使っているんですか。

「会長」はい。普通はほぼそうなんですよ。お線香って原料にお金かけたら儲からないので。それと、沈香とか白檀にしても比較的高価な原料をそんなにたくさん使うことによって、逆に品質が維持できないことがあるんですよ。香りが一定しないから。自然の物使ってたらこの塊とさっきの「霞める空」、例えば全然持ち味が違う訳ですから。そうすると出来上がった線香は同じ匂いにはならない訳ですね。

だから香りを一定にして、しかも原価率を押さえてってなったら、もう化学合成した香料が安定するしいい訳です。普通そういったものしか売られていないですよ。そんなにまじめに作ったようなもの売ってるところはほぼないです。だから「これが沈香の香りです」とかって言って、多くの人が「これいいね」って言っているものでも、ほぼ実態は化学香料で主に味付けされている。

「白雲」の帰ってきたやつが128℃。

真南蛮・白雲・1回目・128℃(戻り)

やっぱり今、「白雲」が帰ってきたやつをちょっと聞きましたけれどやっぱりしおはゆみってありますよね。これは「霞める空」とちょっと共通している部分かと思います。

121℃ですね。朧月夜。
1:23:18

真南蛮・朧月夜・1回目・121℃

「会長」これも穏やかな部類の「蛮」ですね。

「連衆」香木は水の中でってよく聞きますけれど、何て言うんでしょう。変化したり、それは海だったり川だったり沼だったりどことかそういうのはないのですか?

「会長」えっとね水の中?

「連衆」水で変化、そういうところでこう見つかるっていうか、変化したりっていいますけれど。

「会長」必ずしもそんなことないですよ。

「連衆」傷ついたりしてその場所で?

「会長」香木が香木になる変化をするっていうのは、あくまでも植物としての生体防御反応で、自分の体に何か起きた時に植物が身を守る手立てとして編み出した一つのやり方っていうのは、予め備えている管状の組織を使ってそこに樹脂分を送り出すっていう変化ですね。それは水の中にとかあんまり関係ないです。

「連衆」水に浸かったりじゃなく、そのまま何て言うんでしょ森の中でその生体防御反応をしながら。

「会長」そうです。植物って動物と違って走って逃げたり出来ませんから、居ながらにして自分の体をどうやって守るかってことですよね。そういう工夫の結果というか、むしろそういう風な工夫をしていた植物が生き残ったっていうことだろうと思いますが、水に浸かったりっというのは何かの<聞き取れず>説話みたいなものが残っているかもしれませんが、中国の文献で何かそんなのがあったのかもしれないですけどね。水に浸かって香木になるっていう、水に浸かったことを切っ掛けとして香木になるとか、そんな風な文献があったかもしれないですがそれはそんなことないです。結果として水の中で見つかったりとかっていうのはそれはあるかもしれないです。香木になった後で何年か、何年も何年も経ってたまたま木が倒れて水に浸かったら水の中で見つかることはあるかもしれないですが。

「連衆」結構湿地みたいな所で見つかったりするのかなって勝手に思ってました。

「会長」そんなことはないと思います。条件が整えば温室でも香木はできるはずです。

「連衆」海の方のはちょっと鹹のかな?とか色々考えていました。

「会長」多分、それは関係ないと思います。

「連衆」セットでお買い求めいただけますよ。

「会長」お家元の分は分木できるほどないので。ただ、いま一声もさっきみたいな欠片しか残っていないんですが、ただ、この聞香会セットには入れています。その分は頑張ってとりましたので。

「連衆」別でも、単独でもお買い求めいただけますけど。どうせならセットでどうぞ。

「会長」「散らぬ花」はこれから後で焚きますが、これはまだネットでお買い求めいただけるんじゃないかと思います。これもの凄く珍しい木ですけどね。

「連衆」どれですか?

「連衆」6番

「会長」6番。

「連衆」早く聞きたいです。

「連衆」「霞める空」も単品でありますよね。

「会長」これはさっきみたいにまだ残ってますんで大丈夫です。

「連衆」だからセットとプラスでこれがいいですよ。

「会長」いまセットでしかお求めいただけないのが「いま一声」と「雲のかけはし」ですね。

次、真南蛮。ちょっと珍しいタイプの伽羅立ちタイプの真南蛮ですね「雲のかけはし」。
これも結構使えそうな木だなあと思っていたんですけど切ってみたらダメな所がいっぱい出てきて残念でした。

「連衆」駄目ていうのは全く<聞き取れず>ないような。

「会長」そうですねそれもありますし。これの場合はそうですね。中に空洞があったり、切ってみないとわかんないことがでてくるんで。

「連衆」朧月夜だ。

「会長」136℃ですね。
1:32:58

真南蛮・朧月夜・1回目・136℃

「連衆」今の朧月夜ですよね。

「連衆」そうですね。

「連衆」1番2番3番って蛮の特徴かなって思ったら、4番きたらあれ?って。

「連衆」でもなんか付いてる名前とはは合ってるような。

「連衆」ああ。確かに。

「連衆」しおはゆみっていうんですか。それ香りって蛮なのかな?って来てたのに4番来たらあれ?って。

「連衆」そうですよねしおはゆくない感じだったかも。大人しい。

「連衆」伽羅立ち?

「連衆」伽羅立ち。

「連衆」さっきの2番と。

「連衆」今の真那賀です。

「連衆」これも蛮です。

「連衆」蛮ですよね。

「連衆」業界用語を覚えた感じがします。

「連衆」三番目の和歌の読み手と五番目の和歌の読み手の方は違う方なんですか。三番目のこの和歌の詠んでる方は京極前太政大臣でしょ、で五番目の詠んでる方は後京極摂政前太政大臣っていう違う方ですか。

「会長」そうですね。違う方でないかと思いますね。紛らわしくてわかりにくいですが。

「連衆」そうですね。

「連衆」四番目の朧月夜は源氏物語の中の朧月夜というのではないんですか。

「会長」えっとですね、源氏の中でこの歌詠まれていると思いますね。

「連衆」朧月夜って言っていましたでしょ。

「会長」あの時になんか誰だったかが、扇仰ぎながらこれ詠みながら歩いてくるっていう。あれだと思う。

「連衆」朧月ですね。やっぱりあそこからきているんですね。

「会長」私もこれ珍しい木だなと思って、あの、でもイメージとして割とこうのほほんとした感じがあって、それでこの歌を引っ張り出して仮銘にさせていただいたんですが。

さっきもちょっと話が出ましたけど、香木がこれがインドネシア産だっていうのがわかっているから木所に当てはめるとしたら佐曾羅か寸聞多羅。志野流のね。だろうというのが非常に成り立ちやすいんですけど、この朧月夜はさっき申し上げたように、よそんちの家から出てきた木なんで、元はわかんないんですよね。どこで採れたかっていうのは。それで私もこれを真南蛮にするかどうかっていう時には非常に迷ったんですね。色々。多分最終的にこれは蛮でいいんだろうという風に思っているだけで、これが絶対的なものではないんです。

113℃ですね。「雲のかけはし」
1:40:13

真南蛮・雲のかけはし・1回目・113℃

「連衆」伽羅立ちということで意図的にちょっと低くされたんですか。

「会長」はい。113℃でもいきなりちょっとこれ今立ってますね。もうちょっと低くてもよかったかもしれないですね。本当に火加減って難しくて、木によって千差万別ですし、まあ気候の条件によっても大分変わりますから本当に難しいんですけど。

「連衆」本当に炭団を使ってやると、どうかすると、わあ煙が立ってるとか、焦げたね、燃えたねって。それは電子香炉でもあるんですか。

「会長」もちろん高くし過ぎたら煙は出ると思います。

「連衆」伽羅じゃないんですか?って感じですよね。

「会長」伽羅みたいに聞こえました?

「連衆」伽羅。

「会長」こんな木なんですよ。全然伽羅じゃないんです。

「連衆」ちょっとしょっぱい?

「連衆」いやーでも、全然伽羅でした。私の中では。

<連衆会話聞き取れず>

「連衆」さっきのいま一声より伽羅ですよね。全然わからない(笑)

「連衆」<聞き取れず>

「連衆」違いが判らない。

「会長」でも、伽羅を聞くとやっぱ違いますよ。

「連衆」でもさっきのいま一声よりはより伽羅かなと思ってしまった。

「会長」ああそうでしたか。はい。
そうですね「いま一声」は割と複雑な立ち方をしますからね。

「連衆」<聞き取れず>

「会長」蛮らしくない蛮が続きますが。これはね「散らぬ花」っていう風に仮銘つけましたが、本当に訳の分からない香木です。どういう風に木目がどうなっているのかさっぱりわからない。だから切る時に非常に苦労してきれいに長四角になかなか切れないんですね。これ明らかに見た目はシャムの沈香、タイの沈香ですね。これは明らかに。だけどこんな風な木目の香木ってあまり他に例を知らないくらい変わってます。で、香りも変わってるんです。
何が変わっているかっていうと、まあ後でこれから焚きますが、いわゆる杏仁の香りがするんです。杏仁の香りってあんずの種の実を割った時の匂いらしいですが、非常にフルーティーな香りですね。

「連衆」<聞き取れず>

「会長」本当にそれ、どうゆう植物のどうゆう部分がどうなったらそんなのが出来るのかって本当に不思議ですが。

「連衆」そうなんですね。

「会長」ちなみにあの。ちょっと走ってしまって。110℃です
1:50:00

真南蛮・散らぬ花・1回目・110℃

この杏仁の香りっていうのは昔の文献によると、奇気と言われることがあります。それがこれに該当するかどうかはちょっとわからないんですけど。奇気っていうのは五味の他の「気」ですね。五味に当てはまらない味。

「連衆」奇気。

「連衆」<聞き取れず>

「連衆」なんか不思議な。

「会長」真南蛮と思えないですよね。
ありがとうございます。

「連衆」戻しで。まだ温度が測れてない。

「会長」125℃ですね。いったん切れてたからちょっと正確じゃないかもしれないけど。

真南蛮・雲のかけはし・1回目・125℃(戻り)

「連衆」さっきの「きき」っていうのはどんな字を書くんですか?

「会長」奇妙な奇です。

「連衆」奇妙なき。きはぼく。

「連衆」奇術の奇、奇跡の奇。奇跡の奇。大書いて可ですか。

「連衆」奇怪な。

「連衆」下のきは。

「会長」気候の気です。

「連衆」気候の気。これじゃなくて。

「連衆」気持ちの気。

「会長」気候の気ですね。

「連衆」元気の気ですね。

「会長」そうですね。奇妙な気っていうことですね。

「連衆」奇妙な気持ち。

「連衆」初めて聞きました。

「会長」通常は名香にしかないって言われますが。
歴史的な名香で奇気が出るっていうものの代表的なものとして私が知っているのは時鳥(ほととぎす)ですね。多分、香木を加熱し始めてまだ低い温度の時にだけ立つような香りだという風に理解しているんですけど。この「散らぬ花」の場合は結構出し続けるんですよ。だからそれが奇気といえるものかどうかはちょっとわからないんですけど。確かに杏仁の香りって言われたらああこんな風かなっていうようなちょっとフルーティな香り出しますから、もしかしたらっていうことはあるかもしれないんですが、いずれにしてもこれが真南蛮かって立ち方をしますよね。

ちょっとせっかくですから、今お聞きいただいている間にその例のカタールの王様のなんちゃらっていうやつをちょっと持ってきます。

「連衆」ずっと見えてました?六国の会。

「連衆」そうですね。4月からずっと五味六国の毎月。

「連衆」先月も来てらっしゃいました?

「連衆」先月はあそこで一番奥でこれの担当だったんで。

「連衆」あの方か。

「連衆」今日はちょっと担当の方がいらっしゃらないんで急遽。

「連衆」来月も埋まりましたね。

「連衆」うっかりしてました。

「連衆」昨日でした。

「連衆」送ろうか?とっとけばいい。画面を。自分で検索して。

「連衆」ありがとう。

「連衆」今の咲き初めての歌の意味を。

「連衆」歌も素敵。

「連衆」最初の方が強かったですね。

「連衆」そうですね。

「会長」115℃ですね。

真南蛮・散らぬ花・1回目・115℃(戻り)
1:59:45

「会長」本当に変わった木ですよね。

「連衆」これも古い香木なんですか。

「会長」これ古いでしょうね。いつ頃日本に入ってきたかはわかんないんですけど、これ昔から京都の家にあった木で、だから多分少なくとも5、60年より前でしょうね。入ってきてるのは。ここまでなると本当にいつ頃どうなったのか全く分からないですね。ただ、家の京都の店にタイから輸入されてきたことはわかる。それは間違いないです。何年前かわからないですけどね。本当に変わった木ですよね。こんな木はあまり他に例がないので。だけど、見かけはもう明らかにシャムの沈香なので、木所に入れるとしたら真南蛮か真那賀か。でもこれは真南蛮だと思ってます。確証はないんですね。だから家元にこれを差し上げて一部ね。それで木所を鑑定していただくとはっきりするかもしれないんですが、それとて絶対的なものではないのでね。本当に変わった面白い木だってことだけは言えますが。こんなんがいっぱいあったら面白いんですけどね。

「連衆」混乱がまた。

「会長」もうちょっとお時間よろしいでしょうかね。皆さん。もしお急ぎの方おられましたら。あ、じゃあ最後のこの「乱れ雲」。これ志野流のお家元に昭和61年に銘を。

「連衆」すみません。よろしいでしょうかお先に。

「会長」はい。

「連衆」昭和60年?

「連衆」61年。

「連衆」61年っていうと<聞き取れず>

「会長」この乱れ雲も、ある種、家元に極めをいただいたということからすれば代表的な蛮だと言えるかとは思いますが、一般的な真南蛮のイメージからすると皆さんがお持ちの真南蛮のイメージっていうのがどんなものかってよくわからない面がありますけれど、一応ある種代表的な蛮らしい蛮といえるかとは思います。ただ、よく時々見かけるような甘ったるいような蛮にありがちな甘さは持っていないですね。

「会長」これは家元が何をどうお考えで「乱れ雲」とつけられたのかは不明です。

一応、持って参りました「王様のお香」。

「連衆」わあ。

「会長」今までの香木の香りがどっか飛んでいく。

「連衆」そんな感じですね。素敵な香り。

「会長」シェイク ハマド イン アブドラ アールサニー殿下がお使いのお香。

「連衆」長すぎ(笑)

「連衆」へえ。

「連衆」ありがとうございました。

「会長」すいません。お急ぎの所失礼しました。

「連衆」お気をつけて。

「連衆」今までのと違うのにわからないですね。

「連衆」凄い香り。なんていうのかコクがあるというか。香りがコクがあるというか。

「会長」ああ、はいはい。

「連衆」渋いですよね。仁丹っていうかなんか薬っぽいっていうか。なんでこれが真南蛮なんだか。これが真南蛮なんですね。だからポイントがね。今までは。。。

「連衆」うっかりしてました。(温度)

「会長」あ、115℃
2:07:50

真南蛮・乱れ雲・1回目・115℃

「連衆」これしおはゆいって感じておかしくないですか。

「会長」あると思います。ただね家元がね極め書いて下さいましたよね。そこにはねしおはゆいは確かないですよね。

「連衆」そっかそっか、それ見ればいいんだ。

「会長」あ、ありました、ありました。苦・鹹ですからもうはっきりとしおはゆいでてますよね。

「連衆」ああ、よかったです。

「連衆」苦いと鹹が塩の方ですね。だから苦いからさっきの辛酸っぽいのは合ってるんだ。なんちゃって。

「連衆」重いっていったのがそこで出て。でもなんかしおはゆいって最初からそうおっしゃってた。二番、三番とか共通するのかなって。鹹ってそうなのかなって。

「会長」そうですね。真南蛮としての持ち味がしおはゆいかどうかはちょっと別として。わからないんですけど。一応共通して。

「連衆」<聞き取れず>

「会長」甘いになってますかね。

「連衆」志野流はね。お家流はしょっぱいになってる。ネット情報だからわからないけど。

「会長」確かに。しおはゆいっていうのは合ってると思いますね。甘いっていうのもわからなくはないんですけど、私が知ってる真南蛮で品質の高い木でそんなに甘ったるいものはないんですよね。
これもね「乱れ雲」は結構おっきな木でした。

「連衆」ちっちゃくなっちゃった?

「会長」はい。だって志野流のお家元に極めをいただくと皆さん待っているんですよ。それを分木するのを。もう2、300人待ってますから、で、それに皆さんに2gずつ販売するんです。そうするとあっという間になくなるんです。

「連衆」極め、大事なんですね。

「会長」だから本当に志野流の門弟にとっては教科書になりますから、これ聞けばあっ、これが苦いでこれがしおはゆいでってねえ一応勉強出来ますから。皆さん家元の極めがついた香木は必ず買われるんです。欲しがられる。逆に私なんかのお尻を叩くわけですよ、偉い先生が、もらってこいって言って。お弟子さんたちに分木してあげないといけないから。家元から銘をもらってきなさいって。お尻たたかれて、それで香木探してそれでお願いして。やるんですけどね。

「連衆」この大きさなんですか?いつも極めって。

「会長」これはね、もうちょっとこれよりも大きいですね。もうちょっと大きいです。これコピーを取って折りたたんでいるのでこのサイズですが。通常はこれくらいですかね。
これはコピーです。
それで、すいません時間がなくなってしまっているんですが、さっき申し上げた。何回読んでも忘れてしまう。シェイクハマドビンアブドラサーニ殿下。これね中に入っているのが殿下が普段使われている焚かれている香木のサンプルなんですけど。まあこれはいいとしてこれ書き写されるんだったらどうぞ。

「連衆」シェイクハマド…ビン

「会長」これは2019年に頂いたものです。鑑定してあげたんですよ。こういう香木を手に入れたけどこれ使っていいのかしらって聞いてきたんですよ秘書官が。

「連衆」これが王様の?

「会長」違います。そこに書いてあるのが殿下の名前がわかるために回してます。

「連衆」殿下の名前。

「会長」お香はこれです。すごい匂い強いんで、香木の周りは<聞き取れず>
これは龍涎香、麝香、沈香、薔薇のオイルそれから沈香オイルがブレンドされていると聞きました。

「連衆」すいませんもう一度お願いします。

「会長」龍涎香、麝香、チベットですね。沈香、薔薇のオイルなんか特殊な薔薇らしいです。あと沈香オイルなんかが入っているという感じですね。これがそうです。これを多分ちょっちょとしてつけて。

「連衆」これ開けてもいいんですか。

「会長」どうぞどうぞ。オリエンタルな香りしますよね。

「連衆」うーん本当だ。すごくあちら風ですね。

「会長」はい。

「連衆」アラブの人きついの好きですもんね香り。

「連衆」超貴重品。

「連衆」龍涎香って入っているんですよね。

「会長」入ってるらしいですよ。

「連衆」一回混ぜてるから。

「会長」ちなみに。

「連衆」体臭がすごいから。

「会長」沈香のオイルって入ってると言われていますが、沈香のオイルってこんな感じです。

「連衆」じんこうって沈香か。

「会長」はい。沈香です。沈香を煮詰めるんですね。蒸留法。窯で一週間くらい100℃位で煮詰めるんです。そこから出てきた気体からオイルを取る。

あ、開けなくても匂いするからこのまま。

「連衆」これはこのまま。

「会長」だから抽出したオイルじゃなくて蒸留した油です。だから焦げ臭いです。1週間位100℃位でグツグツ煮詰めたそっから採った油なんで臭いです。

「連衆」臭い酸っぱい。

「連衆」香木を聞いているって凄いですね。やっぱり強い。

「会長」強いですね。で、アラブの人たちはこれをそのままつけて使うんですね。

「連衆」こういうってためてためて聞く。

「会長」香木焚いている時にとてもこれ焚けないですよね。

「連衆」私聞きました。沈香オイルでした。

「会長」帰ってきた。これは乱れ雲か133℃ですね。

真南蛮・乱れ雲・1回目・133℃(戻り)

「連衆」最後凄く上がった。ちょっと感じが変わったもんね。110℃

「連衆」115℃

「連衆」温度高くなってきたら乱れ雲<聞き取れず>

「連衆」そうですね。ちょっと薄くなったような。

「会長」これしかし非常にシンプルというか単純なね。味が二つしか書いてないけど実際にそんな感じです。

「連衆」珍しい。

「連衆」華やかで。

「連衆」もっと高い。

「連衆」アラブのセレブの人たち。

「連衆」どんだけ薔薇使ったんだって感じですよね。高いと思いますこれ。

「会長」なんか面白い香りですよね。そんなに、別に嫌じゃないですよね。

「連衆」そうですね。

「会長」薔薇のオイルって言っても、もの凄く貴重な薔薇らしいです。本当にレアものの。

「連衆」駄目ですよね。近づいちゃ。

「会長」上等の貴重なやつを使ってるらしいです。王様ですからね。何といっても。

「連衆」凄いお金持ち。

「会長」ここに入っている香木は割とちゃんとしたものでした。だから昔はこんなの使ってたと。だけど、今はもうそういうのなかなか手に入らなくなってきたんで、色んなところで色々香木を入手するんだけどもっていうことで、いくつか塊を持ってきたんですよ。その秘書官が。秘書官って言ってもこの殿下が日本に来た時だけアテンドする秘書官が日本にいるんですね。その人が持ってきてどうですかって聞かれて、焚くのは勝手だけどこれは偽物ですよって。化学合成オイルを含侵させたもの。元の植物が沈香や伽羅になれる素質を持った植物とは違う植物。それにオイルを浸みこましている。もうやむなく今はそういうのを焚くしかなくなってきてて、まあ使ってるみたいです。でっかい香炉で燃やしてる。

「連衆」でっかい香炉でやるんだったらそれでいいと思います。

「会長」まあ化学合成オイルが毒っていう訳じゃないでしょうから、燃やしてもそんなに体にねえ極端に悪いってことはないのかもしれないし。香りが出ればそれでいいんだったら。だって、サウジアラビアに何件かお香屋さんがあるんですよ。で、どうゆうの売ってるかっていうと、こういう香木の欠片みたいなものをガサーって売ってるんです。ところが、私が一度、鑑定っていうか売りに来た人がいて昔。もう十数年前ですかね。

サウジアラビアから帰ってきた。スーツケースいっぱい香木を詰めて帰ってきたんですよ。これを売りたいと。で、言われて見たんですが、私が見る限り全部作りもんなんです。サウジアラビアに何件かあるお香屋さんではみんなそういうの売ってる。で店が違うと匂いが違う。それは使ってる化学香料が違うからそれで匂いの違いが出てる。みんな欠片にやっぱり。多分植物はジンチョウゲ科アキラリア属の植物ではないと思いますが、何だかわかんないようなものに浸み込ませているんですね。そういうのをガサっと売っているんですね。だからそういうのをつまんで多分焚いているんでしょうね。

「連衆」中国の方が香木買いに行くって。中国の方はどうやって使うんですか。

「会長」中国人は本当にしょっちゅう買いに来ますし、本当にいつ来てもおかしくないくらい今でも来ますが、何のために買うかというと沈香の塊を使って加工品を作るんです。ペンダントヘッドとかブレスレットの玉とかですね。そういう風なものに加工する。何故いい伽羅が必要かというと、赤珊瑚とか玉とかと一緒で、もの凄い価値があるもので加工品を作るっていうことが、それを人にあげた時に喜ばれるんですね。だから富裕層が偉い人にプレゼントするのにそういう香木の製品を使うんですよ。それはもう赤珊瑚とかそういうのと一緒で。希少価値がある。もらった人が非常に高価な貴重なものをもらったということで喜ぶ。そのために材料を日本に探しに来ている。

何故日本に来ているかって言うと、昔は我々は30年40年位前は逆に香港とかに買いに行っていたんですね。集積ポイントでしたからシンガポールと香港辺りが。中国に一旦みんな来ていたんです。それ大昔から多分そうだったと思うんですけど。
我々はシンガポールや香港まで香木を仕入れに行っていたのですが、ウチを含めて2,3社の卸売り業者さんが輸入した香木は、最上級の伽羅の塊だけでも通算合計して4tとか5tとかになると言われます。それを日本中に販売している。その販売した香木がまだ残ってますよね。一方、中国ではもうなくなっているんです。もう何年か前から中国行っても全然ないっていう。

だから今度は中国から日本に探しに来てて、我々が昔売ったものを掘り出しに来ているんです。お寺さんとかそれから昔景気がいいバブルの時代に塊を買ったようなお線香屋さんとか仏壇屋さんとか、そういう所は実際は必要としていないから札束積んで買いに来られたらほいほい売っちゃうんですね。それでどんどん日本から買って帰る。今ではまた向こうの方が日本よりもたくさんあるっていう状態になってます。

「連衆」所謂、お香を聞くとかそういう感じでは使われないんですね。

「会長」そのはずですけど。ただ最近はね私なんかは逆に日本から流出しちゃったいい伽羅を買い戻そうとしてたんですけど、最近は中国でも需要が出てきちゃったからあんまりないって。しかも安くは売ってくれない。一部ネットでも出してますけど、緑油伽羅のお徳用の小割の伽羅って、あれは買い戻したやつ。そんなには量はないです。
なので、中国なんかが聞香始めたらもういっぺんになくなっちゃいますよね。

「連衆」数の力で凄いですよね。

「会長」そうですよね。マグロとかサンマとかと一緒ですよ。いま今度ウナギが危ないんですけどね。

「連衆」ウナギもホタテもやられちゃったしね。どこに行ってもないんですよね。

「連衆」どこにいってもないんだもん。

「会長」そうですよ。彼らが本当にね聞香始められたら本当に怖いですけど。今の所そこまでいってないと思いますけど人口が規模が違いますからね。

「連衆」中国だとあっという間に何々流って中国の流派できてそう。

(全体笑う)

「連衆」え?何それ?っていう。

「会長」彼らは平気ででたらめな事やりますから。

「連衆」ですよね。

「会長」うちのお客さんなんかで北京の金持ちがいるんですけど、お香の店作ったから来てくれと。ご招待。

「連衆」北京でですか?

「会長」北京で。ご招待ですよ。それで一回行ったんですよ。したら、すごい玉とかばっかり扱っているような凄いブランドショップみたいのが軒を連ねているビルがあって、そこの一室にお香の店がある。そこで加工したブレスレットの伽羅の玉とか、こんなのブレスレットなんかにするなよっていういいのがいっぱいあるんですよ。そういうの見せられてそのビルの入り口にディスプレイがあって動画を流しているんですよ。そこで中国香道っていうやつのそれこそお点前をずっと配信しているんですよ。見たらめちゃくちゃな事やってる。

「連衆」あそうなんだ。

「連衆」オリジナルのですね。

「会長」そうそう。どこで真似してきたんだかわかりませんけど、ちゃんと道具が、火道具があったり、それから阿古陀香炉があったり。阿古陀香炉になんか炭団が入っててそれに灰押さえで灰を掻き上げてとかやってるんですよ。めちゃくちゃやってるんですよ。涼しい顔でやってるんですよ。中国香道。

「連衆」チャイニーズ香道ですね。

「会長」すみません。そんな訳でまた30分ほど長引いてしまって申し訳ございません。

「連衆」どうもありがとうございました。失礼します。

「連衆」すみません。終わってから質問をさせていただいてよろしいでしょうか。
白檀と沈香とかの具体的な<聞き取れず>白檀、沈香、伽羅。<聞き取れず>それこそ小さいセットになってて1.5cm角くらいの<聞き取れず>これは何の木なのかなと。変な言い方なんですけど。

「会長」白檀は白檀、沈香は沈香。お店にもよりますけど。伽羅も<聞き取れず>

「連衆」<聞き取れず>なんの伽羅っていう。沈香だけは伽羅って<聞き取れず>

「会長」拝見しないと何とも言えない。

「連衆」<聞き取れず>

「会長」現物があればわかります。

<聞き取れず>
2:32:00


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