【聞香会のアーカイブ】2022年8月24日・五味の会・辛
「会長」 こんにちは。どうも、ようこそいらっしゃいました。なんか暑かったり、にわか雨が降ったりでややこしいお天気ですが。
また今日も五味は三回目、辛い、「辛」ということで,焚いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
「連衆」 よろしくお願いします。
「会長」 あの、15分で切れてしまう電気香炉なので、もし切れていたら教えていただいて、ご自分で入れていただいても結構ですが、よろしくお願いします。
で、前にも回しているかと思いますけど、この五味(注:古五味香)
の由緒といいますか、出所はこういうものです、っていうことはまたお話させていただきます。
「連衆」 前とおんなじものですよね。
「会長」 そうです、そうです。だから、たいてい皆さんご覧になっているはずだと思いますが。
米川常伯が一番最初に選定したと言われる、オリジナルの五味の手本木ということになります。
「会長」 ちっちゃな欠片なんですが、一応、こんな木ですよっていうのを入れてお回ししますね。これビニールのまま、色んな角度からご覧いただければと思います。『薫風』です。
ちなみに今、室温が、26.3℃、湿度は64%です。
『薫風』一回目110℃くらいで焚きだしてみようと思います。
『薫風』です。(香炉を回す)
これ大分古い木ですからね、みんな。今の旧暦で安永四年てありますけど、大体1776年くらいですから、その頃には五味とか言われているんですから、それよりもっと前に日本に入ってきているわけですよね。
そういうのを何百年ぶりかで焚くわけですから、そんなにパッとは立ってこないですよね。
とりあえずは、ちょっとおとなしめの温度設定で始めて、あと時間が余れば、あ、今まで時間余ったこと一度もないんですけど…あとでまたちょっと火を強めて回してみようと思います。
「連衆」 8月になってちょっと火加減難しくなったかな。
「会長」 そうですね。
「連衆」 何ででしょうね。
「会長」 いや、そんなに条件変わってないんですけどね。
「連衆」 これが不思議で、湿度とかそんな変わってないじゃないですか。
「会長」 はい。
「連衆」 それなのに、立ちが遅いっていうか。
「会長」 遅いですね。
「連衆」 遅いですよね。
「会長」 はい。
「連衆」 風の梅が香を炷いた時に、最初ちょっと弱めでやったら香らなくて、少し強めにしたら香ったということがあって。
「会長」 ああ、そうでしたか。
今日はね、午前中の部で風の梅が香は、最初からもうばっちり辛く立っていました。
「連衆」 素晴らしい。
「会長」 それは、まあ、たまたまと言うか。
「連衆」 何度くらい?
「会長」 覚えていないんですけど、大体110度くらいだったと思います。
「連衆」 110度くらいでやったんですか。すごいたのしみです。前炷いていた時もすごく良く立ったから、あれを念頭に置いて炷こうとするんですけど、なんか分離するなみたいな時があって。
「会長」 ああ、そうですか。
午前中炷いてみて、古五味もさることながら、風の梅が香一番辛かったです。一番辛みが良く分かった。
「連衆」 上手に炷くと無茶苦茶良いですよね。
「会長」 そうですね、あれもなかなか良い伽羅ですわ。丁度、塊の外見が宇和島の伊達家の『芝舟』とクリソツなんですよね。はい。もちろんあっちの方がきめ細かいですけど。だから、似たようなタイプの木じゃないかなと思っています。
「連衆」 楽しみにしています。
「会長」 そうですね、はい。
「連衆」 あの、『薫風』が。あの辺ですね。すごく良く立ち始めたので、『薫風』が。
「会長」 あ、あの辺が立ってる。
「連衆」 ここまだ立ち始めだと思うので。
「会長」 そうですね。そういう点でも、火加減設定難しいですからね、どうしても。いい火加減にしようと思うと、最初の方は不利ですよね。まだ良く立っていないから。
「連衆」 でも、あの、それでも良かったと思いますけど。
「会長」 畏れ入ります。(『薫風』の実物を指して)これ欠片ですけど、見る限りやっぱり辛そうなタイプだなっていう風に見えます。
こういう風な顔している伽羅は結構辛い。そんな感じはありますね。
次の孟筍はもっとそうです。もっと辛そうに見えますね。
「連衆」 結構喉にくる辛みですよね、これ。
「会長」 まあそうですね。「
連衆」 結構、伽羅を辛みで表すところありますもんね。
「会長」 ああ、そうですね、伽羅の持ち味としてね。はい。羅国も持ち味が辛いということがありますが、やっぱり沈香の辛みと伽羅の絡んでくるような辛みとタイプが違いますよね。そこが聞き分けられるとOKなんですが。
「連衆」 楽しいですよね。
「会長」 うん、なかなか難しい。
「連衆」 古五味の会楽しいですよね。
「会長」 今日は伽羅以外で辛そうな、ちょっと辛さに特徴があるのをいくつか揃えてみましたが。
「連衆」 でも、やっぱり、風の梅が香は辛いですよね。
「会長」 辛いですね。あれはね、終始辛いですね、立ち始めから火末まで辛い。火末に至っては、ほぼ辛さしか出てない様な気がしますね。
「連衆」 辛みは、緑油伽羅とかと黄油伽羅で、例えばそのどっちが甘いとか、辛いに偏るとか、そういった特徴はあるんですか?
「会長」 はい、まあ、あると言っても差支えはないかと思いますね。
「連衆」 じゃあ、黄色い方が割と辛め。
「会長」 はい。
「連衆」 で、緑の方が?
「会長」 緑の方が甘さ、苦さに特徴があることが多いです。
あとはそれの他にどれだけ味があるかっていうこととか、バランスの取れ方で変わってくると思いますけど。
「連衆」 はい。
「連衆」 ちなみに『薫風』は、分類すると何色系ですかね。
「会長」 はい、多分、黄色の系統だと思いますが。
孟筍はね、もっと明らかに黄色いタイプだろうなって気がしますが、薫風はちょっとはっきりしないとは思いますね。
これ、手本木にしては、色々混ざり過ぎなんですよね、味が。まあ、私の印象ですけど。
「連衆」 確かに、最初の立ち方として、ちょっと固いかな、みたいな。固いやつって、やっぱりすっごい混じっているじゃないですか。どんどんほぐれていく感じ。
「会長」 はい…。手本木であるからには、焚き始めからパーンて辛いのが出るか、あるいは、火末の方でずっと辛い辛いになっていくか、だとわかりやすいんですけれど、『薫風』っていうのは、そのどちらのタイプでもない気がしますね。だから、手本木というにはちょっと中途半端な気がします。まあ、個人的な印象ですけど。
「連衆」 木としては面白いけど、面白くちゃ手本じゃないだろう、そんな感じですか?
「会長」 そうですね。
何でこれを手本にしたのかな、って私は思いますね。
特に炷き始めが、この文献によるとですよ、炷き始めが、甘く、酸っぱく、ってあるんですよね、で、次第に辛みが出るという風に…文献て言うのは、『蜂谷流品香集説』ですが、そこに書いてある内容から言えば、そういう風に書いてある。途中から、次第に、って書いてある。
「連衆」 甘さ、酸っぱさあったかな、ってそんな感じですよね。
「会長」 はい。次第に辛みが出るって…
次第にって、いつからやねん?って思いますよね。はっきりしない。
「連衆」 もう最初から辛かったよ、みたいな感じですけどね。
「会長」 はい。
「連衆」 最初から結構辛かったですよね。
「会長」 辛みは結構ありますよね。逆に、甘いとか、酸っぱいとか、どこら辺だったんだろうっていう。
「会長」 これ電源入れなおしてから、しばらくちょっと温まらないですよね。
「連衆」 あ、なんかすごい。
「会長」 いいですか。
「連衆」 すごいです。いいです。
「連衆」 今、来てます。
「会長」 そうですね。
「連衆」 うん。やっぱり<聞き取れず>
「会長」 次第に、というのは、良くわからんですけど、まあ、まだまだ、火末にはまだまだ、という感じです。今114度ですね。やっぱり回し始めた時よりは多少上がっていますよね。
「連衆」 最初のところに若干酸味が少しあったかなという感じではありましたけども。今の方がやっぱりぱーっと開いているんで。
「会長」 えーっとですね、次に『孟筍』ですね。こちらの方がね、見掛け辛そうなんです。あのー、個人的な印象としては。で、『孟筍』っていうのを、どういう意味合いで付銘されたか、ちょっと記憶が何も残ってはいないんですが、あの、午前中の参加者の方が、もしかしたら、孟子と荀子、それを一文字ずつとったんじゃなかろうかと。
「連衆」 こてこて儒教みたいな感じですか。
「会長」 はい、片っ方が性善説を唱えて、片っ方が性悪説を唱えたとか、そういう対比で何かそれが香りの持ち味の中で現れているんじゃなかろうかという風に。その方は。
「連衆」 いいなあ、その自由な発想。
「会長」 そうそう。面白おすなあと言ってたんですが。例えば、立ちはじめ、結構辛く立つんだけど、終わりの方は別の味が目立ってきてっていうので、立ちはじめと火末の方で、対比を面白いからっていうんで、そこから命銘されたかもしれない、てなことを思いながら、午前中聞いてみたんですが、まあ、午後はどうなるか、聞いてみましょう。
「連衆」 たけのこっぽかったですか?
「会長」 いや、最初はそっち系かなと思ったんですけど、あんまりたけのこっぽくはないですよね。孟子と荀子なんじゃないか、と、そっちの方に惹かれましたね。なるほど、と思いました。
「会長」 『孟筍』。二回目。うちわが今上がりました。
「連衆」 すいません。温度。
「会長」 あ、ありがとうございます。110度くらいです。
「連衆」 すっごくいいです。
「会長」 ねえ。最初から辛いですね。
「連衆」 そうですね。バリバリ辛いですね。風の梅の香に非常に似てます。
「会長」 ああ、おっしゃる通り。
「連衆」 すんごい似てる。だから、連続でこれ出たら、うん、すごい楽しみです。
「会長」 はは。
「連衆」 これでも<聞き取れず>31分43秒じゃないかなって。
「会長」 うん、思います。はい。
「連衆」 木そのものが結構さっきより辛い香りしますね
「会長」 本当?あ、そう? あはは、すごい!常温で、ある程度嗅ぎ分けるんですね。
「連衆」 さっきのとは全然違う。こっちの方が明らかに辛い香り。
「会長」 はい。
「連衆」 なんか常温の状態だと、さっき、そのビニールの袋の、すごいさわやかな感じがしたんですけど。
「会長」 〇〇さん。
「連衆」 はい。
「連衆」 常温で、結構さわやかな感じがしたんですけど。
「連衆」 今のですか?
「連衆」 そう。
「連衆」 ああ、そうですね、さわやかな感じ。一つ目のは、何て言うか、温かみのある柔らかい香りだった印象が木の香りとしてあったんですけど、今のはそういった意味では、さわやかというか、辛いというか。
「会長」 もっとシンプルな感じで?
「連衆」 そうですね。
「会長」 うーん、なるほど。常温で嗅ぎ分けられたら、炷かなくても楽しめますよね。
「連衆」 一同笑い。
「連衆」 永遠に楽しめる。
「会長」 その方が長いこと楽しめる。
「連衆」 多分小さいビニール袋の中だからだと思います。
「会長」 ねえ、それでクンクンしてたらなんか危ない人みたいですけどね。
「連衆」 そうそう。危ない感じがしますが。
「連衆」 この『孟筍』気に入った人だったら風の梅が香絶対気に入りますよね。
「会長」 いやいや、そんな気はします。午前中炷いてみて、そう思いました。ちょっとだけ。だから、もし、あの、風の梅が香の存在を志野流の家元に知られたら、危ないなっていう。はい。取られちゃうかもっていう^^;
「連衆」 結構小さくなってますよね。
「会長」 もう大分小さいです。
「連衆」 もとのも結構ちっちゃかったですよね。
「会長」 はい。はい。次に回しますけど、最初からそんなに大きくなかったのが、どんどん小さくなってます。
「連衆」 どんどん小さくなってる。
「会長」 はい。
「連衆」 この味わいが現代の木だとほぼ見つからないから。
「会長」 あ、そうですね。後継者はなかなか出てきてないですね。
「連衆」 でも、これ(『孟筍』)、すごくぶわーっと広がりましたね。
「会長」 ああ、はい。
「連衆」 初回からこんだけ広がるっていうのは古い木だと珍しいな思って。
「会長」 やっぱり、名香なだけありますよね。単純に辛い、そういうもんじゃあないですよね。
「連衆」 先ほど見た目が辛そう、っておっしゃったんですけど、辛そうな見た目って例えばどんな特徴があるんですか。
「会長」 いや、そこなんですけど、あの、午前中もちょっと聞かれたんですけど、例えば、いかにもベトナムの沈香らしい羅国っぽい香ってどんな香ですか、ってよく言われるんですが、あの、合理的な説明はできなくて、なんとなく、あの、経験上、体験上、そういう風に思ってしまう、くらいな感じなんですよ。はい。特に根拠がなくて、だから説明できないんですよね、はい。
「連衆」 刑事の勘
「会長」 ああ、うん、そうですね。で、確かにそういうのが、いわれもないというか、根拠が説明できないような感覚なんですけど、割と当たることが多いんですね。『薫風』と『孟筍』の違いで言えばね、見かけが、『薫風』よりも『孟筍』の方が、なんかこう固い感じしません?なんかこう、なんとなく。シャキッとしたような感じ?『薫風』とは同じ欠片ですが、見かけのタイプが全然違うんですね。『薫風』を見ても、これ、黄色い伽羅の系統じゃないかな?、とは言えないんですけど、『孟筍』の場合は、これ黄色そうだな、っていう風な。
「連衆」 もろ黄色い。
「会長」 思います。
「会長」 ありがとうございます。で、風の梅が香は、おっしゃるように、大分ちっちゃくなってしまいました。
「連衆」 それでもまだこれくらいはあるんですね。
「会長」 はい。残ってますね。もう少し少なくなったら…まだオンラインショップで販売はできてると思うんですけど、もうちょっと少なくなったらストップさせてもらって。で、あの、これ、香木のどちらが表か裏かとなったら、多分こっちが表なんですけど、裏の表情ですね、この顔、いかにも黄色いタイプの伽羅、黄色いと言ってもこの程度ですから、まあ、こんな感じです。で、さっき申し上げてた宇和島の伊達家の『芝舟』が、まあ、こんな感じなんです。これのもっと緻密でもっとねっとりした感じっていうのが、あの、『芝舟』ですね。『芝舟』もあちこちに色々あって、どれが本物だかわかりませんけど、少なくとも、宇和島の伊達家の『芝舟』はこういう(顔をした)伽羅ですね。
「連衆」 あの鑑定団に出ていたやつですね。
「会長」 あれ、出ましたっけ、ああ、そうだ、あれ、鑑定団じゃないんですよ。
「連衆」 あれ、鑑定団じゃないんですか。
「会長」 じゃないんですよ、はい。
「連衆」 あれ、なんでしたっけ。
「会長」 あれはね、なんだったっけかな。日本テレビです。
「連衆」 日本テレビのやつ。はい。
「会長」 はい。お宝がどうのこうのっていう、まあ、(鑑定団と)似たような感じだったんですけど。
(香炉を回して)風の梅が香です。
「連衆」 これたまたま8月14日だったんですよね。
「会長」 はい?
「連衆」 8月14日に炷いたんです。はい。
「会長」 あ、そうですか。へえ。
「連衆」 毎回感じるのは、火が難しい。
「会長」 はい?
「連衆」 毎回感じるのは、火が難しい。
「会長」 あ、難しい。はい。そうですよね、だから、気候条件によって、かなり、何か違うんでしょうね。
「連衆」 ですね。
「会長」 いつも同じように立つように香炉(の火加減)を設定するっていうのは、至難の業ですよね。うん。
「連衆」 多分、これは、夏の時期しか、湿気の多い時期しか炷かない方がいいかもしれない、というくらい、そのくらい難しいな、と私は感じてます。
「会長」 なるほど。うーん。そうですか。
「連衆」 乾いてくるととたんに立たなくなる。調整がほんと難しい。
「会長」 じゃ、湿度が影響しているっていうことですね。
「連衆」 湿度が。うん。
「会長」 今ここの湿度が57%にちょっと下がりました。室温は今26度1分。
「会長」 風の梅が香。これも110度くらいですね。
「連衆」 先ほど『薫風』の時に、手本木と呼ぶには中途半端な印象が、っていうお話があったかと思うんですけども。
「会長」 はい。
「連衆」 あのー、古五味の手本木っていうことになると、例えば、甘いとか辛いとか、特定の香りがある種際立った、というか特徴を持っていることが、一つの基準になると思うんですけども、一方で名香と言われる良い香木は、5つの香りが重層的にというか、複雑に絡み合うというところにその素晴らしさがあるというお話を伺ったと思うんですけども、その意味でやっぱり手本木と名香というところは、どちらも価値があるものとしても、やはり基準として違う部分があるということなんでしょうか。
「会長」 ええ、違うと思います。だから、いい香木の中でも、やっぱり、より何か際立つのが持っているのを手本木として選ばれていると思いますね、はい。まあ、なんていうか、言ってみれば、ちょっと癖がある木ですよね。だけど、癖があるって言っても、昔のレベルの高い香木がわんさかあった時代のものですから、やっぱりそれなりに癖があると言っても良い香木に違いないというところでしょうかね。色んな味の力加減がみんな拮抗していたら、こんな風には聞こえないので。
「連衆」 余談というか、今のお話に関係してなんですけれども。
「会長」 はい。
「連衆」 先日、あの、増上寺の志野流の会に行って献香式に私は参加してないんですけども、私はその辺でちゃっかり香りを聞いてしまって、これは明らかに『蘭奢待』だなという香りがあったんですけども、あの、まあ『蘭奢待』・『東大寺』の特色としては、5つを持っているというところにそのすごさがあると言われているけど、私は、甘っ、というすごくそういう印象を、で、あまり他のにおいとの重層的なものを感じることはできなかったんですけども、山田さんとしては、まあ、今までは山田さんが正倉院の『蘭奢待』についてのお話を何度もうかがってはいるので評価も分かってはいるんですけれども、そちらはどのように、香りのミックスという意味ではどのように感じられますか?
「会長」 こないだ炷きだされた『蘭奢待』のことですか?
「連衆」 はい、こないだの方です。頼政ではないです。
「会長」 でも、あれは、伽羅でしたよ。
「連衆」 あれは伽羅の方だったんですか、『蘭奢待』ではないんですね。
「会長」 蜂谷家の『蘭奢待』は複数あって…私の記憶だと三種類ありました。そのうちの一つで銀の箱に入っている、そんな大きくはないんですが、それは頼政だと思います。こないだ炷きだされたのは、どこのだかは存じ上げないです。
「連衆」 あれは伽羅だったんですか。私はてっきりあれは黄熟かと思ってたんですけれども。
「会長」 黄熟じゃないです。
「連衆」 正倉院のでは、正倉院のものですか、あれは?
「会長」 いや、違うと思います。
「連衆」 正倉院でも頼政でもないもうひとつのものということなんですか。
「会長」 正倉院のものだったら黄熟香ですから。
「連衆」 てっきり私は正倉院のものだと思って伺ってたんですけれども。
「会長」 私は、まあ、断言はできませんし、お家元にどれ切りましたか?とか、よう聞かんのですんで、わかりませんが、(本堂での献香式で)炷き終わった後に片づけを手伝った時に(次期御家元の)弟さんにお断りしてちょっと写真を撮らせていただいたんですね。貞朋さんもカチャってやっていましたから、私も横でいいですか?って言って。
「連衆」 おかしいね。終わった後?頼んで?一人で?見ました直に。
「会長」 ああ、そうですか。
「連衆」 ちょっとだけど。その時はもう香りが。
「連衆」 伽羅でした?
「会長」 伽羅っぽかったでしょ?伽羅っぽくなかったですか?
「連衆」 そんなにすごいとは思わなかったけど。
「会長」 あはは。
「連衆」 あの、たまたまなんですけれども、あの会の後、別の日に展示の方拝見させていただいていたら、若宗匠がその日あそこで行われた体験香席のお客様をご案内されて、ツアーをされていて、解説をしていたのをまたちゃっかり聞いてしまったんですけれども。
「会長」 ちゃっかりが多いですね。
「連衆」 その時におっしゃられたのが、献香式で焚かれたのは正倉院で切られた三つの内の明治天皇から下賜されたものっておっしゃっていたので、私はだから、正倉院ので三つ分木されているうちの明治天皇から下賜されたものってご説明されていたのを聞いたんですけれども。
「会長」 はい。だとしたら、黄熟香の蘭奢待ですね。ちょっと今出てこないんですけれども、あの炷空(たきがら)の感じはそんな感じじゃなかったですけどね。
「連衆」 違いますか。
「会長」 うん。
「連衆」 戻ってきてます。
「会長」 ああ、ありがとうございます。なかなか今写真が見つからなくて。
「連衆」 『孟筍』は、もしかして本当に孟子と荀子かもしれないですね。
「会長」 うん。
「連衆」 最初のイメージと全く違いますね。
「会長」 そうですね、あの、炷き始めと、まあ、まだ火末になってないかもしれないですけど、大分変わってきますよね。
「連衆」 ただ、あの、風の梅が香のイメージがすごくある感じはします。
「会長」 はい。これまた後で温度高めて回してみましょうね。あれ、あの画像がどこ行ったんだろう。消しちゃったのかもしれないですね。
「連衆」 増上寺でお手伝いさんしてたんですか?
「会長」 いやー、もう、しょうがないと言ったら怒られますけど、準備の段階で、増上寺側、とにかく大変なイベントですから、お寺も大変なんですよね、準備が。だから、何十人のお寺さんと、志野流サイドで何回か会議を持ったんですけど、あのー、私は全然そんなにタッチはしていなかったはずだったんですけど…
「連衆」 そしたら蘭奢待だったって。
「会長」 いや、そうじゃないんですけど、あ、まあ、その、それはテーマくらいは知っていましたけど、はい。そのうち気付いたら、「志野流松隠会東京支部世話人」とかになってて。何やそれはと。
「連衆」 京都じゃなかったでしたっけみたいな感じですよね。
「会長」 そんなん聞いてまへんがなって言う。私、所属は銀閣寺教場ですから。まあ、とにかく。はい?
「連衆」 じゃあお土産は香雅堂さんかしら?
「会長」 あんな恥ずかしいことはしません。
「連衆」 一同笑い。
「連衆」 でも、あの、広いお堂で、あんなに小さい蘭奢待があそこに香りが満ち溢れるんですかね?
「会長」 ある程度やっぱり広がるとは思ってました。はい。
「連衆」 え、そんなに広がってました?
「会長」 いや、そこそこは広がってますよね。あの、どこで聞かれました?甘いっていうの。
「連衆」 私は、まず参加してないんですけれども、きっと終わったころに戸が開いたら匂うだろうと思って、そこを狙っていったんですよね。で、そしたら、あの、お寺なんで、あの、お賽銭するところに、お線香炊いちゃったりしてるから、あ、もうこりゃだめだな、と思ってたんですけど、別の戸が開いているところから、明らかに別の香りがしたので、あ、これが今日炷かれたものかな、と私は勝手に思っただけなんで、もしかしたら違ったかもしれないんですけれども、それが非常に甘い香りがして、その日に参加していて、幸いその風の流れで蘭奢待の献香式の香りを聞けた方が、とても甘い香りがしたとおっしゃっていたので、あ、じゃ、私のあれだなと結びつけただけなので、もしかしたら、私の、違うのかもしれないんですが。
「会長」 なるほど。ああ。可能性はあります。というのは、それこそ事前の会議で、当日はとにかく香りが出るものを一切焚くなと。法要だから、お焼香、普通、焚きますよね、だけど、焚かないでくれってお願いして、そういう風に計らってもらいましたから、当日は線香も焼香も焚かれてはいないんですね。ですから、まあ、香りがしたとすれば、(本堂で献香された)香木だった可能性はありますね。まあ、いきなり会議に出ろとか言われたけど、何か訳わからないで出ましたけど、まあ、最低限の役目は果たしたつもりではおりますが。
ちょっとごめんなさい。(献香された香炉の画像を見つけるためにスマホをいじって)こんなん探している場合じゃないねん。
「連衆」 一同笑い。
「会長」 ついつい。
「連衆」 香りの薄れ方とかすっごい似てますよね。
「会長」 『孟筍』と?これが?はい。
「連衆」 なんか、似たタイプなんじゃないかって私は思いますけど。
「会長」 あの、こういう感じは、確かに似てます。似てる気はします。
「連衆」 あの、何て言うんですか、(風の梅が香を)炷いて、すごくうまく炷けた時の香りが、『孟筍』の一炉目(と同じ)だったんです。
「会長」 ああ、そうでしたか。
「連衆」 あれ、同じもん炷いたんちゃうか、みたいな感じ。
「会長」 あはは。うん、まあ、年代は大分離れているとはいえ、この、風の梅が香もそんなに最近の木ではないですからね、割と古木の風格は持ってますね。
「連衆」 そんなはっきりしてないかな、風の梅が香。<聞き取れず>57分55。
「連衆」 風の梅が香、多分あの辺のが香ったんですね。だから、戻ってくるの待ってっていう感じですね。
「連衆」 強い感じ。
「連衆」 強かったです。もうここより強かった。タイミング非常に難しい木なんで。当たるとすごくいいんですよ。
「連衆」 何かでも、『孟筍』はストレートに辛い、って思ったんですけど、今の風の梅が香はちょっと酸味を感じるような。
「連衆」 他のね、要素をね。
「連衆」 そうですね、その時々によって違うのかもしれないですけど、むしろ『薫風』よりのような気がしちゃいました。今聞いたのが。よくわかんないですけど、『薫風』がちょっと酸味があるな、って思ったんで、何か、『孟筍』はただ、あ、辛いって素直に思ったんですけど、梅が香もちょっと酸味を感じたんで、ま、たまたまその部位がそうだったのがよくわかんないんですけど、私の鼻がおかしいのかもしれないんですけど。
「連衆」 おかしくはないと思います。
「連衆」 場所によって違うからね。
「連衆」 そうそう。あと、回ってくるタイミングによって、これだけ香りが違うことあんまないんで。
「連衆」 お隣の人と違うから。どこ行っても。ちょっとしたら違いますよね。
「連衆」 ただ。はあ、難しいな。また返ってきたときに。
「会長」 私も、まあ、風の梅が香は、酸味をもちろん感じましたから、それでこう、梅っぽさでああいう証歌から(仮銘を)探したんです。
「連衆」 ああ。
「会長」 はい。
「連衆」 なるほど。そういえば、先生の本を読んでいて、あのお若い頃に。
「会長」 先生って私?いやいや。ははは。山田で。
「連衆」 一同笑い。
「連衆」 あ、先生、会長さんの方で。あの、お若いころに、その、志野流のところに香木を持っていったら、かわいらしいおばあさまが、こんな香木は炷けん、とかなんとかって言われたって、その香木の、何でそれはだめだったのかなあというのをお聞きしたかったです。
「会長」 ああ、はい、それはちょっと私の名誉のために言っておきますが、私が持っていった香木じゃないです。はい。よく、お家元には、これで極めをくださいって、業者さん、うちの同業とかが行くことがあるんです。そういう中の一つです。で、それに対して、言い方としては、『こんなもんは、銀葉によう載せられまへんなぁ』とおっしゃった。要するに、香木として認められないということです。少なくとも志野流で炷く香木としては認められませんと。だから、品質が良くないということですね。
「連衆」 あ、品質が良くないことなんですね。
「会長」 そうなんです。要するに、ボロカスに言われたわけですね。
「連衆」 私は手本木にならない、と言うか、色んな香りが混じっているようなのだったのかな、とか色々考えていたんですけど、純粋に香木の質がちょっと。
「会長」 劣悪だったんでしょうね。
「連衆」 あー、わかりました。ありがとうございます。
「会長」 泉先生っていう方なんですけど、本当に辛辣なんですよ。まあ、正直な人なんですよね。
「連衆」 なんか、『孟筍』の後半戦に似ている気がしました。
「会長」 おー、はいはい。
「連衆」 戻ってきたときの、とちょっと似ている。
「会長」 はい。
「連衆」 『孟筍』の前半戦をダイヤとした感じ。
「会長」 ダイヤ。
「連衆」 そうですね、あの後半戦がすごく似てるなあと。
「連衆」 これが、あの、同時に立つ炷き方が非常に難しいんです。うん。でも、この香木は同時に立つんですよ。環境によって。それが千変万化の風の梅が香のすごいところなんです。
「連衆」 面白い。
「会長」 今戻ってきたら120℃くらいになっていますね。多少は温度高くなっていますね。
「連衆」 ちょっと高めにしなきゃ今の8月の時期は立ちづらいんだなとそれで。
「会長」 あー、そうですね。
「連衆」 今120℃。
「会長」 うん、帰ってきたとき120℃くらいでしたから。
「連衆」 最初が110℃。もし後で何ならもう一回温度上げて、そうするともっと辛みも他の味もクリアに出てくると思いますね。苦みが出てくるかもしれない。
「連衆」 『孟筍』の戻りは何℃くらいでしたっけ。
「会長」 やっぱり120℃くらいでしたね。
「連衆」 120℃くらい。
「会長」 110℃くらいから炷き始めて、大体帰ってくると120℃くらいになっていますね。
次に、沈香の辛いのを…そんなにはっきり辛さだけ目立つという感じではないかもしれないんですけど、これベトナムの沈香のある種典型的な顔していますね。いわゆるドロ沈香ですね。
「連衆」 これが辛いんですね。
「会長」 辛いと思います。
「連衆」 ふーん、楽しみ。
「会長」 多分、羅国の持ち味でもあると思うんですよね、辛さっていうのは。
「会長」 120℃くらいですが。花の袂。
「連衆」 むちゃくちゃ辛いですね。辛って感じ。
「会長」 はい。意外と。
「連衆」 これ『薫風』の初期の辛さにちょっと似てますね。うん。
「会長」 あ、そうですか。へえ。
「連衆」 でも、もろ辛って感じで。
「会長」 そうですね。うん。
割といつも申し上げていますけど、最近、伽羅が(羅国として)売られていることが増えてきて、そうすると、言ってみれば全然羅国っぽくないんですけど…。でも、こういうのを聞くと、沈香の羅国っていうのは、こういう感じかな、っていう。一つのいい例だと思いますね。
「連衆」 羅国いいな、って感じですね。
「会長」 まあそうですね。はい。
「連衆」 これいいっすね。
「連衆」 これ辛いっすよね。のどガーって来ますよね。
思いっきり山椒系の香りがぎゃっと。
「会長」 何系?
「連衆」 山椒
「会長」 山椒?ああ、はい。
「連衆」 何か辛さが違うような気がするんですけど、でも説明はできない。
「会長」 うん、あの、多分、多分ですけど、ここら辺が伽羅の辛いのと沈香の辛いのの違いじゃないかと。
「連衆」 伽羅の辛みがオブラートで包んだ、オブラートの甘味でできてるんで、それで丸くなる感じですよね。
「会長」 ああ。うん。
「連衆」 そんな感じだったと思います。
『薫風』だと、特にそんな感じのイメーがあります。
「連衆」 何か違うんですけど、何て言ったらいいのか。
「連衆」 羅国は鋭かったですよね、スパッと。
「連衆」 あ、そうですね。
「連衆」 辛っ、みたいな。
「連衆」 辛い。
「連衆」 これは早く回さなきゃって思いました。
「連衆」 ああ、最初の。
「連衆」 これ120℃だとしたら、最初からスパートかけた感じで始まってるから早いかもしれないですね。
「会長」 そうですね、はい。
沈香ということもありますから、最初からちょっと高めにはしていた。
「連衆」 最初から油がじくっと横に。
「会長」 あ、出てました?
「連衆」 ペコって出てました。
「会長」 ああ、はい。
「連衆」 もう最初からいいのがポーっと出ていた。
「会長」 うん。
「会長」 上がった。
「連衆」 唐辛子を火の中に入れて。
「会長」 ああ、はいはい。
「連衆」 燃やす匂い。
「会長」 うん。
「連衆」 昔そういうことやったんですかね?
「会長」 やったんでしょうね、きっとね。だから、そういうことやらないと物理的に辛いっていうことの説明がつかないでしょうね。
「連衆」 何かイタリアンの料理人がよくわかりそうな説明ですよね。
「会長」 あはは、はい。
「連衆」 これ帰ってみたら唐辛子燃やしてみた方が良いですね。
「連衆」 そうですね。
「会長」 うーん、あのー、そうですね。あと、丁子を噛むとかね。
「連衆」 歯が痛い時に丁子を噛んでたんで、それはわかります。
「会長」 へえ、そっちの方が多分やりやすいかもしれないですね。唐辛子燻すより。
「連衆」 はい。でも、すごく気になります。唐辛子を燻すことが。
「連衆」 (聞き取れず)
「会長」 うーん、やっと(増上寺の本堂で献香された香炉の)画像が出てきましたが、これ黄熟じゃないと思うな。これ、伽羅だと思いますけどね。
「連衆」 伽羅ですね。間違いなく伽羅ですね。これは伽羅ですよ。
「会長」 どう切られたのかがちょっと良くわかんないですけど、まあ、皆さんに説明されるのと、実際必ずしも合致していないこともありますからね。はい。
「連衆」 正倉院の黄熟はこの色はしていないですよね。
「会長」 うん。そんなにあの、何て言うか、加熱されて樹脂っぽくなるってことはないですよね。
「連衆」 私が見た時もうちょっと薄かった。
「会長」 いや、あのもう、それしかないです。
「連衆」 でも何か発表っていうか、何かで見た時に正倉院の黄熟香って見たような気がするんですけど、あの会の。
「会長」 はい。あの、『蘭奢待』っていうと、その大層に言われているものが正倉院のものですから、そういうものじゃないとかっこつかないっていうのもありますよね。だけど、実際それ炷いて、本当に良い香りがバーッと広がるかって言ったら…
「連衆」 なんか伝説が微妙に重なっていますよね。
「会長」 そうですね、だから、あの、何ていうかな、私なりの考えですけど、『蘭奢待』が一種類しかないって言うのにまず無理があるんですよ。それにこだわるのがややこしいい元なんで。複数ありますと。その中で一種類は正倉院のものです、もう一種類はいわゆる頼政公が持っていたと言われるものです、で他にもあと二、三種類あると、言う風な前提でやっていくと、何て言うかな、説明に破綻を来たさなくていいと思うんですよね。それを無理やり、あの、正倉院、正倉院って崇め奉るので、ちょっとややこしくなるんだと思います。
「連衆」 よかったです。記憶を書き換えておきます。
「会長」 はい。だから、正倉院のは正倉院ので、あれは国宝クラスの名
香っていうのは、それはそれで構わないんで、はい。それ以外のものもあるんだということでいければ、もっと楽になるんじゃないかと思いますけどね。はい。みんないいんだと。
「連衆」 多分、炷かれた徳川家康公は、あれ?って。笑
「会長」 笑。家康公は多分全部炷いたと思いますよ。
「連衆」 そうですよね、全部炷いてるはずなんで。
「連衆」 それなんで、多分、あれ?って。笑
「連衆」 追善法要だったから。
「会長」 はい。あれはね、会議でも色々もめたんですけど、いやいや、何のための法要か、何のための献香か。なぜ家元が献香するのか、っていうのが(寺院側の認識が)そもそもはっきりしていなかったんですよ。
若宗匠は、もう何年も前から献香式の企画はされていて、お寺に何度も何度も話はされていて、ようやく実現したということなんですが、もともとの意向としては、徳川家康公の遺影に献ずるんだと、まあ、家康公の追善だということで、増上寺でやることに意味があるという、そういうことだったですね。
「連衆」 本拠地尾張だからですか?
「会長」 あの、増上寺は、徳川家康と。
「連衆」 増上寺はそうなんですけども、自分たちが本拠地尾張だからですか?
「会長」 ああ、いや、というよりは、志野流のお家元として家康公に敬意を表して献香すると。
「連衆」 でも志野流のお家元としてっていうのが。
「会長」 あ、歴史的なつながりがどうこう、というわけでは多分ないと思いますよ。
「連衆」 ですよね。
「会長」 はい。
「連衆」 それ言ったら、あの、家元の献香全部なしになっちゃうから。
「会長」 はい、もちろん、その、全く縁がなかったというわけでもないと思いますけどね。そこらへんはちょっと私忘れてしまって。
「連衆」 確か、尾張家とはちょっと何か縁があったんですかね。
「会長」 うーん、あったんじゃないでしょうか。だって、どうでしょうね。今は、同じ名古屋ですからね。で、今のお殿様は今の若宗匠のことをかわいがっておられますしね。
「連衆」 それで炷いてなかったって言う感じなんですかね。
「連衆」 え?
「連衆」 銀葉ですか?これは特別な銀葉ですか?これは銀葉の一部なんですか?
「会長」 あ、銀葉ですか? 名香を焚くときの銀葉は、八分で縁なしです。
「連衆」 あ、じゃこれも名香だ。
「連衆」 一同笑。
「会長」 で、隅(すみ)も切っていないですね、真四角ですね。
それはね、ちょっと私ね、あの心配しました。縁がないから、家元も若宗匠も慣れていますから問題ないんですけども、受け取った御坊さんが、それを献香台まで持っていく間に走るんじゃないかと思って、銀葉そのものが。
香木は多分伽羅ですから、銀葉に張り付くんで動かないですけど、のっけた縁なしの銀葉が、縁がないから、とめどなく走るんですよね。それを一番心配しました。だけど、ちゃんと最後まで載ってて安心しましたけどね。
「連衆」 これ蘭奢待拝見があったっていうことですか?
「連衆」 ないです。一人だけ。
「連衆」 横からちょいと断って、スタッフにいいですか?って言ってその方と一緒に。いいです、って言ってくださったんです。皆さんは、他の、あの、見果てて出て行った。
「連衆」 多分増上寺緩い。笑。
「連衆」 あの、スタッフの方は。
「連衆」 あ、撮ってくださいって。
「連衆」 どうぞどうぞって。
「連衆」 写真撮っていいんですか?
「連衆」 なんか、これが近い。すごく。大きく下から黒く見えたけど。若干茶色。
「連衆」 でも、香炉これでいいんですか、献香の時。
「会長」 青磁ですよね。
「連衆」 青磁ですね。
「会長」 はい。青磁の無紋ってのは一番格が高いです。
「連衆」 なんかあの後『蘭奢待』を聞く会あったの?なんか『蘭奢待』を(聞き取れず)脳科学者の中野さんとか、(聞き取れず)やってたみたいだけど。
「連衆」 中野さん来ていらした。
「連衆」 あ、そうですか。
「連衆」 うん、中野さん来てたと思いますよ。
「連衆」 なんかマツコ・デラックスの番組。
「連衆」 みんなで『蘭奢待』を聞いたっていう番組があったって。
「連衆」 やってなかったそうでした。
「連衆」 (聞き取れず)
「連衆」 袴は使わないんですね。頭後は。
「連衆」 私は最初から見ていただけで。そういうテレビ番組で放映して。
「連衆」 ええ。
「連衆」 あ、その時に一緒にいらしたんですか?
「連衆」 お友達と一緒に行って、宗匠の後ろの方の席だったんですけど、香ってこなかった。だから、最後にスタッフに頼んで法要したお香を見せていただけます?っていったら、どうぞ、って言って、一緒に連れて行ってくださって。
「連衆」 ああ、別の場所で。そこではなくて。
「連衆」 伽羅ですよね。
「会長」 まあ、そう思いますけどね。
「会長」 あーっと、それでは、今はベトナムの沈香でしたけど、今度はタイの沈香で。真那賀ですね。
「連衆」 ああ。
「会長」 あれ、これ失礼しました。
「連衆」 山田さんのご本に、『蘭奢待』徳川美術館には、5つとか6つあるって書いていらっしゃったと思うんですが。
「会長」 確か4つだと思います。
「連衆」 それも、あの、正倉院のを除いては全部伽羅なんですか?
「会長」 いや、私全部見ていないんですよ。その、大河内さんっていう、当時副館長待遇の人と話をしたときに、その話を聞いて…あの人、徳川美術館の香木に関する論文を書かれたんですけど、そこにも書かれてありますね。確か4だと思います。実物は全部つぶさに見ていないです。
多分、黄熟香以外はみんな伽羅だと思いますけどね。『蘭奢待』っていう名前を後からつけるからには、やっぱりいい香木のはずですから。
「連衆」 やっぱ大内みたいなものってことですよね。
「会長」 はい?
「連衆」 『大内』みたいなもの。
「会長」 『大内』はねえ、ちょっと微妙ですね。
「連衆」 『大内』も、大内の『蘭奢待』って。
「会長」 言いますね。
「連衆」 言いますよね。
「会長」 言いますけど、どうなんだろうな。
大正7年の売り立てがあって、そこで『大内』が出て、『小倉山』と一緒に写真が撮られていて、それが今そのまま出てきてて、ある方の手に渡ったんですが、頼まれて截香に行ってきましたけど、なんかちょっと不思議な木ですね。はい。
場合によってはオフレコで。あの、『大内』と言えば、『蘭奢待』よりも好きだっていう人がおられるぐらいの伽羅なんですよ。で、五味兼備。
百二十種ですけどね、六十一種じゃない百二十種だけど、ものすごく格も高いし、上質だと言われているんです。
で、大正7年に出てきた際に写真が撮られていますから、その写真と見比べたら、今出てきている『大内』がそのままですから、まあ、間違いはない。なおかつ、備わっている書付が、志野流の十八世、頑魯庵宗致がしたためているんです。
で、頑魯庵の字(筆跡)は私知っていますから、花押も分かってますから、それも合ってる。ということは、由緒書きも、香木もOKなんですね。はい。『大内』のはずなんです。
ところが、『蘭奢待』と並び称されるような伽羅であれば、見たらわかるんじゃないですか。それが、現物見て、のこぎりで挽いたんですけども、その挽いた感触や断面とかが、あの頼政所持の伽羅とは似ても似つかない。
だから、『大内』ってこれでいいんかな、っていう、そういう不思議さ。
実際いいと言われている『大内』が他にあって、持っている人がおられますから。それ、今度9月3日に多分聞くんですけど、それとべてみないと何とも言えませんが、どちらも本物の可能性があるので、不思議なんです。そういう意味です。
「連衆」 なんか、ちっちゃく、こう伝承されている奴のはみんないいやつだった、っていう。
「会長」 そうかもしれない。
「連衆」 そういう落ちもあるかもしれない。
「会長」 そうかもしれないですね。
「連衆」 要は、いいところだけ本当にちょんちょんと落としてある。
「会長」 その可能性もありますね。
「連衆」 でも、伝承でっていうか、人に聞く噂のやつは、よだれが出るようなって感じで言われますもんね。
「会長」 うん、なんですけど…あれ、私、のどけき峰って回しましたっけ。
「連衆」 はい、回ってます。
「会長」 あ、はい。あの、香木の方は炷いていない?
「連衆」 回ってないです。
「会長」 回ってない、あ、あれ。
「連衆」 これは花の袂です。
「会長」 あ、はい。そこに何かちっちゃい香木の包み乗ってます?
「連衆」 はい、入ってます。
「会長」 あ、それですね。あはは。
「連衆」 あはは。
「会長」 ありがとうございます。こいつがないとね。
「連衆」 あはは。
「連衆」 忘れちゃうわよね。
「連衆」 逆に、載せるの忘れたって言ってて、代わりにそっちが出ちゃったのかもしれない、お香が、うん。
「会長」 あ、そうでしたね。これをその時に回収すればよかったんですけど、そこは気が付かなかったですね。
「連衆」 今何℃くらいですかね?
「会長」 あ、はい。ちょっと待ってくださいね。
「連衆」 実は、あの、最初の勢いと全然違ってたんで、やっぱり120℃くらいだと飛ぶの早いなと。
「会長」 ああ、なるほど。ちょっとまだ載せて時間が経ってないから。
「連衆」 飛んでましたよね?
「連衆」 うん、結構飛んでました。
「会長」 でも、まだ辛みが残ってますね。126.7、127℃くらいです。
「連衆」 多分、さっきのスタートとしてはちょっと温度高めだったみたいです。
「会長」 うん、そうですね。
「連衆」 最初はね、少し強かったですよね。
「連衆」 そうですね。あの、まあ、私は得しましたって感じですね。
「連衆」 二回目はマイルドにね。
「連衆」 うん、そうですね。
「連衆」 柔らかくなりました。
「会長」 まあ、この花の袂もね、樹脂化がすごく進んだいいところの塊ってわけではないんですけどね。
「連衆」 へえ。それであんなに香るんですか。
「会長」 そうですね。
「連衆」 すごいですね。
「会長」 むしろあの、何て言うかな、意外とシンプルにわかりやすく立つかもしれないですね。あんまりこてこてじゃない方が。
「連衆」 これ手本木(手鑑)でもいいんじゃないっていう感じでしたよ。
「会長」 あ、そうでしたか。よかったです。
「連衆」 これは良い木です。
「会長」 辛いのって結構色々あるんですよね。色んな木所で、割と良い香木で辛さもってるなー、っていうのが色々あって。
今回たまたま真南蛮が入っていないんですけど、これは、あの、特に理由はなくて、たまたまです。いろいろ伽羅以外でも辛いやつって選んでたら、一応上限5種類っていう風に決めていたので、たまたま、真南蛮以外で(5種類を)決めちゃったって感じですね。
「会長」 120℃くらいに設定したつもりだったんですけど、今計ったら、110℃くらいしかなくて、よくわかんないですが、一応まあ立ってはいますから。
「会長」 電池切れかな。
「連衆」 がっつり立ってます。
「会長」 立ってますよね。
「連衆」 立ってます、立ってます。
「連衆」 110℃ですね。
「会長」 111℃くらいでしたね。
「連衆」 111。
「連衆」 これと比べると伽羅の辛み、バランスの良さが。
「会長」 うん。
「連衆」 うん。なんか真那賀とか羅国の辛さと、まあ鋭くやっぱ行っちゃいますよね。ここが落とされているんですよね。伽羅だとここもあるんですよね。こういう感じなんですけど、こうなるんですよね。
「会長」 はい、はい。オブラートね。
「連衆」 オブラートない感じが、(メニューにある)4と5の。羅国と真那賀の。
「連衆」 これ伽羅立ちかな、とちょっとおもっちゃったんですけど、すいません。
「会長」 あはは。
「連衆」 まだ、まだまだ。あはは。
「連衆」 でも、伽羅立ちもちゃんとしているから、それはそれでいいと思いますよ。
「連衆」 なんだかよくわからない。そういう表現力が。
「連衆」 前半の方が辛いようなイメージでして。
「連衆」 基本、御家流では出てこない真那賀ですね。
「連衆」 大体静かな感じがする。静かですよね、伽羅って。
「連衆」 あの、なんか、静かに、でも主張する感じの。
「連衆」 難しいですよね。
「連衆」 おとなしい感じ。
「連衆」 でも、なんか前のイメージのはんなりさんではちょっと、なかったような。後半にはんなりさんが出てくるんですかね。
「会長」あの、のどけき峰ですか。ああ、どうでしょうね、今日は。
「連衆」 あの、みんなの内裏見ているっていうか。
「会長」 そんなに、ね、高い温度設定じゃないので。
「連衆」 もうほんと出てきそうですよね。
「連衆」 大体香炉の方の回るの高いですよね。聞いて。
「連衆」 高いですね。
「会長」 はい?
「連衆」 香炉?の方の温度、全然高いですよね。電子香炉より。
「会長」 あ、それは、あの、香炉作られる方の。
「連衆」 あれにも寄るけれど。だいたい。
「会長」 一般的には皆さん高めにされます。はい。
あんなんじゃ煙出ちゃうのにって心配されることが多いですよね。
実際、煙出ることは多いですね。
「連衆」 百炷で煙がこう笑。ね。
「連衆」 煙が出るともうアウトだけど。
「連衆」 まじか、って思う時が。
「会長」 結構遭遇しますよ。煙出てるのに。
「連衆」 ですね。
「会長」 だから、そういうお席だと、せっかくの香木がちゃんと味わえないから、もったいないですよね。でも、たいていの場合、香炉を用意される方が、その香木を初めて炷かれるっていうことが多いみたいですから、どのくらいの設定で炷けばよいのか、ということをつかんでおられないんじゃないですか?
「連衆」 通常、あの言われる通りならば、正客が返すべきものですよね。
「会長」 本来はね。はい。
「連衆」 でも、みんな遠慮して返さないし。
「会長」 なかなか、できないですよね笑。
「連衆」 お稽古の時だったら、別にガンガン返すけど。
「会長」 うん、それと、普段使われている香木の質が、どうしてもそんなにいいものばっかりじゃない、ということもあると思うんですよね。そうすると、ある程度温度を高くしないと何も聞こえないっていうことが、多分、あると思います。だから、皆さん、温度設定は高めで慣れてしまっておられる、っていうことだと思います。
「連衆」 おそらく大体伽羅は火末の香りですよね。
「会長」 ま、そうですよね。はい。
「連衆」 あれも、伽羅の香りとして覚えちゃうと最初の華やかな、こう、フワフワ、としたような、あそこの部分が、みんな聞けてないんだろうなって。
「会長」 はい、そうですよね。
「連衆」 もったいないですよね。
「会長」 まあ、最初から温度設定が高すぎると、
「連衆」 飛んじゃいますよね。
「会長」 いきなり火末になってしまう、っていうか、低い温度でこそ出るような香りが、出てこなくなるっていうか、出てるんだけど、もう燃えちゃってるみたいな感じで、それは非常に勿体ないですよね。
「連衆」 だから、なんか甘だけで終わってるっていう。
「会長」 まあ、そうですね。
「連衆」 辛みとかどこいっちゃったのっていう。
「会長」 ああ、うん、はい。
「連衆」 そういうの、結構ありますよね。
「会長」 特にあの、杏仁の香り、みたいな。
「連衆」 ああ、あれ。
「会長」 フルーティーな、とかって言われるやつは。
「連衆」 ほぼ10秒で飛びますからね。
「会長」 早めになくなっちゃいますからね。
最初から火加減強くしてたら、それがわかんなくなって。
「連衆」 あっという間にわかんなくなって。
「連衆」 逆に低すぎる時はどうしたら?
高い時は、こう、煙でわかるんですけど、低い時は立ちづらいと思うんですけど、ちょっと待ってればいいのか?この間ちょっと低すぎちゃって、多分あの、上に灰が厚すぎたのか、あの、よくわかんないんですけど、ちょっと低くなってどうしようって。
「会長」 はい、立ちはじめから低すぎる時って、まあ、あの、困りますが、事前の準備で灰を炒っておく。もうカンカンに炒っておくんですよ。それで湿気も飛ばせるし、入ってきた塵も埃も全部焼き飛ばしてしまう。と、ふっかふかになりますから。それで香炉に移せば、結露もしないし、最初から炭団の熱を奪いませんから、コンディション抜群。だから、その時に立ちはじめで低すぎるっていうのは、まず起きないです。
だから、最初低いのは、多分、灰が炭団の勢いを奪っちゃっているんです。だから、予熱したほうが良いです。灰を。
「連衆」 あ、予熱を、あ、そうなんですね。わかりました。まだ未熟者なので。
「連衆」 ご自宅でですか?
「連衆」 あ、ちょっとあの、友達の会があって、琵琶の会でちょっと炷かせていただいたんですけども、その時に、まあ、皆さん全然初心者の方ばっかりだったので、あの、それでも少し香っただけでも、良い体験ができたっておっしゃってくださったんですが、あの、本当にね、そういう会の時に低すぎたらどうしたらいいの?と思って。
「連衆」 私、指で押しますよ。
「会長」 ははは。
「連衆」 あ、指で押すんですね。ははは。なんか穴を二つ開けたらいいのかな、とか色々考えたんですけど。
「連衆」 ああ、穴二つ開けるのもいいですね。
「連衆」 あ、そうですか。
「連衆」 あの、斜めから差し込んでく。そうすると、火穴が二つ開くんで、それで結構強くなるんですけど、でも押した方がいいです。
「連衆」 押した方がいいんですね。ちょっと初心者すぎてわからなかったんですけど。
「連衆」 でも、おっしゃってもいいわよ。香元に。香り立ってますって言うとやってくださるから。
「連衆」 あ、そうですよね。
「連衆」 ちょっと(聞き取れず)に上げたり、灰を
「連衆」 (聞き取れず)。
「連衆」 あはは。
「連衆」 あ、いえ、大丈夫です。
「連衆」 その時は銀葉挟みでぎゅってする。
「連衆」 あ、はい。
「連衆」 それをもっと押した方がいいですね。
「連衆」 そうですね。
「会長」 はい、次はインドネシアの沈香ですね。
インドネシアって言うと、たいていの場合、ボルネオ島ですね、ボルネオ島のインドネシア領のものが品質がいいですね。今お回しする、うすき衣っていうのは、これインドネシアで見つかる沈香の中で、パッと見て、あ、これそうだな、っていう、典型的なタイプとはちょっと違うんですけれども、インドネシアで見つかる、銀葉に載せられる品質の沈香の中では、佐曾羅に分類できるものと、その他に分類できるものと2つありますが、これは、寸聞の方ですね。
志野流の佐曾羅も寸聞も酸味に特徴があると言われていますが、寸聞多羅の酸味っていうのは、もう、味っていうよりは、気、なんですよね。香気っていうか。
嗅覚っていうよりは、本当、感覚ですね。だから、こう、酸味と言っていいのかわからないんですが、とにかくスーッと鼻から脳に突き抜けるような、そういう香気が特徴ですね。
今回これ、そういう酸味の他に、辛みも持ってると思ったんで、ちょっと選んでみました。
「連衆」 でも、寸聞多羅は、あの、お家流だと出てこないじゃないですか。
「会長」 あ、そうですね。
「連衆」 で、何これー、とか言われちゃうんですよ。
「会長」 あ、そう、あはは。この手の香はお家流では出てこないんですね。
お助けで出てくるかもしれないですけどね。
「連衆」 あと、羅国も出てこない。
「連衆」 出てこないですね。うん。
「連衆」 あの、伽羅のあれを使うから。
「会長」 ああ、はい。そうですよね。
「連衆」 辛い羅国は出ないですね。
「連衆」 あの羅国、皆さんよくわかってないから、出てきますよ、志野流でも時々。教場によって結構。
「連衆」 はい、ね、やる方によって、最近色んな羅国、だいたい。
「連衆」 そうそうそうそうそう。だから百炷とかだと時々出てくる。
「連衆」 そう、出ますもん。百炷だと、え?いつもと違うけど、って言う。
「連衆」 聞き取れず
「連衆」 黄熟香と(沈香の)寸聞多羅と結構共通項あるような私は気がしているんですけど。
「会長」 ああ、そういうことも十分考えられますね。
「連衆」 ですよね。
「会長」 はい。
「連衆」 それなのに、なんか、あの、寸聞多羅を、ここの社中で炷いた時に、あの、私が炷いたわけではないんですけど、なんかぼろくそ言われてたから。それ濁点がついてるかついてないかの違いだけなんですけど。何だろうな、知らないってこういうことなんだなって言う。
「会長」 どちらを炷かれたんですか?沈香の寸聞を炷かれた?
「連衆」 沈香の寸聞多羅を炷いて。
「会長」 ああ、はい。
「連衆」 要は、あの、先生が持ってきて。
「会長」 はい。
「連衆」 あの、お三人の先生のうちのどなたかが持ってきて、こういうのもあるのよ、これ志野流だと寸聞なのよ、って言う感じで、炷いてみたときに、え、全然違うって言うんですけども、共通項見いだせないんだーって。
「会長」 ははは、そうでしたか。
「連衆」 そういうことがあったので、御家流だと多分全然違うイメージなんだろうなあって。
「会長」 うーん。
「連衆」 すもたら、とすもんだらって。
「連衆」 寸聞多羅っていうのは、御家流で使う黄熟香なんですよ。
「連衆」 あ、そうなんですね。
「会長」 これ、うすき衣。
あの…すもたら、と、すもんだらって、同じものなんですけど…読み方が違うだけ。もっと言えば、もともと当て字なんで。
「連衆」 温度って言われました?
「会長」 120℃くらい。
「連衆」 これは何ですか?のどけき?
「連衆」 120?
「会長」 ほぼ120℃。
「連衆」 120℃。
「会長」 結構数値が揺れ動くんで、いい加減なんですよね。
「連衆」 あはは。
「連衆」 なんか辛みの梅と立花の間みたいな。
「会長」 おお。
「連衆」 そんな感じの辛みですね。
「会長」 はい。
「連衆」 それがのどけき?
「連衆」 真那賀みたい。
「連衆」 薬屋さんみたい。
「連衆」 うん、そうですね。あの、なんかボルネオ沈香の特徴ですよね。
「会長」 うん。
「連衆」 うーん。
「連衆」 すもたら、と、すもんだら。こっちが御家流。すもんだらが志野流。
「連衆」 のどけき?
「連衆」 そうですね。のどけき。
「連衆」 灰を炒るって言うのは、フライパンですか?
「会長」 あのね、一番いいのは、ゴマとか煎る(より正確には焙じる)ようなのが売ってるんですよ。
「連衆」 ああ、焙烙みたいな?
「会長」 うん、焙烙。で、煎るところとそれから持ち手が穴開いてて、持ち手から出せるっていう。
「連衆」 ああ、あの、お茶とかゴマとか煎るやつですよね。
「会長」 そうそうそう。あれが便利。
「連衆」 ああ、あります。
「会長」 ははは。あったらそれはもうお使いになると、全然違いますよ。
「連衆」 それ使った後に食べ物。
「連衆」 あ、それ絶対ダメです。
「連衆」 ダメ。ははは。
「会長」 ふふ。
「連衆」 じゃ、専門にもう。
「連衆」 専門に。
「連衆」 あ、わかりました。
「連衆」 あのー、ドン・キホーテとかで500円とかで売ってる片手鍋でもいいですし、ホーローのものでもいいですし。
「連衆」 でも、そのゴマのあれ、使ってないのがあるから、専用で。
「連衆」 ある?じゃ、それでやったほうがいいですよ。あれは、本当にいいですよ。土系のやつでやると本当に。ふかふかになります。
「連衆」 わかりました。今度はそうします。
「連衆」 それか、あのー、(予熱用の)炭団を一個こう入れといて、火つけておいて入れておいて、それが消える頃にはもうふかふかになる。でも、それやるとすっごい時間かかるから、それよりもフライパンでやったほうがいい。
「会長」 (うすき衣を聞いて)結構、インドネシアには、こういうタイプも割とあるんですよね。
「連衆」 えっと、この状態のが、なんかあの、柑橘っぽい香りが、ちょっと表面にある。
「会長」 御家流でもこっち系の寸聞使われたら面白いと思いますけどね。
「連衆」 うん、ただそれ、多分蛮で使ってます。
「会長」 あ、次に炷くの、これは完全に、皆さん蛮で使う。
「連衆」 蛮で使う。だからみんなもう、訳わかんなくなるんです。ただ、もう簡単な方の蛮とか、ボルネオ沈香は、あの、そういう風に言われます。
「会長」 だから、それね、お店がいけないっすよ。もう、タイの沈香の真南蛮がなくなってきてるから、みんなインドネシアの香木を、真南蛮ってインドネシア産です、とか言って売り始めちゃったから、それ十数年前、だから、それ以来、蛮はインドネシア産です、とかって言ってるから、全然わかんなくなってきましたよね。
「連衆」 だから、結局、百炷香とかだと、香木のネタ探しに大変だから。
「会長」 うーん。
「連衆」 そろえるのが大変だから。
「会長」 そうでしょうね。
「連衆」 それで苦肉の策で出してくる。なので、あまり難しくなると、要はその、百炷の人たちの全体からの評判が悪くなるから。ここあの会だよ、みたいな。
「会長」 高得点が取れなくなって?
「連衆」 そうそうそう。そういう空気の読み合いとかもあって。年配のおばあちゃんとかは、すっごい難しいのとか出してくるっていう。
「会長」 ああ。その方が面白いでしょうけど、でも、百炷となると大変ですよね。
あの、今もちょっと話が出ましたが、最近は真那蛮という木所も非常にややこしくなってきていて、売られている香木が、本来だったら真那蛮って言うのは、タイの香木から探すんですが、なかなかいいものが見つからなくなってしまっていて、もう十数年前から、真那蛮としてインドネシアの沈香を売るようになってきてるんですね、結構そういう風になってきているので、十数年前あたりからお稽古始められた方にしてみたら、真那蛮ってインドネシアの沈香だと勘違いされている方の方が多いという風になってきています。
今の寸聞多羅、(沈香の)志野流の寸聞ですね。それすら、それだけ特徴が際立っている香木なんですけども、あれも、今聞いたら、蛮として使われることもあるという風におっしゃっておられる。
「連衆」 うん、そうです。
「会長」 で、これから回すのは、同じインドネシアでも、佐曾羅、志野流で言う佐曾羅ですね、こっちの方が鹹(しおはゆみ)もあるので、多分、真那蛮として使われやすいと思います。
これ、春宵という仮銘ですが、昔よく香木を買いに来られた方で、佐曾羅大好き人間がおられて、で、もううちにある古い佐曾羅に軒並み、仮銘つけていいですか?って言われて、それで、こちらで考えなくて済むから、どうぞ、って言ってて、そしたら、軒並み漢詩から(仮銘を)取られたんですね。で、これは春宵一刻値千金の、あの蘇軾の漢詩から仮銘取られてます。ほかにもね、まだ5,6種類、みんな漢詩の仮銘が。
ま、これもある種、典型的な、ボルネオ島インドネシア領、いわゆるカリマンタン、の典型的な香りを出しています。
「連衆」 これがどうして春宵なんでしょうね?でも、この歌だと、中国とかだと、本当にあの、結婚初夜の歌ですよね。春宵一刻値千金って。
「会長」 ああ、はいはいはい、ええええ。
あの、どういうところから、これをつけられたのか、分かりませんけど、多分、あの、「花に香あり」とかって、そこら辺を引いて来られたんだと思いますよ。どこまで深く感じ取られてこの仮銘にされたのかは、ちょっとわからないんですが。
「連衆」 中国の文化背景まで考えると、この春宵ってつけるのは結構勇気要りますよね。
「会長」 ああ、なるほどね、はい。女性だったんですけどね。
「連衆」 へえ、すごい、面白い。
「会長」 はい、女性なんです。
落城の玉笛とかね、あと何だったっけな、色々漢詩の銘がありますよ。
「連衆」 漢詩大好きなんですね。
「会長」 うん。
「会長」 うん、これも120℃くらいから行きまーす、春宵です。
「連衆」 これもですね、いい木ですね。
「会長」 はい。
「連衆」 多分これ、最初にすんごい出ちゃう。
「会長」 あ、はい。
「連衆」 10秒で出るやつ。
「会長」 うん、はい。
「連衆」 が、あるんで。
「会長」 うん。
「連衆」 やっぱり、ボルネオ系のって最初にすごいいい部分がぴょこって出るんですかね、結構こんだけ固い奴。
「会長」 はいはいはい。
「連衆」 さっきの(聞き取れず)でしたけど。
「会長」 うん。
「連衆」 寸聞は結構酸味強いですよね。
「会長」 はい。まあ、寸聞は独特の酸味ですね。
「連衆」 うすき衣?
「連衆」 はい。
「連衆」 あそこで研究会が行われてます。
「会長」 はい?
「連衆」 あそこで研究会が行われてます。
「会長」 ああ、ははは。御熱心で。
「連衆」 (聞き取れず)
「連衆」 (聞き取れず)ってるけど、あの、結構、何て言うんですか、みかん系?
「会長」 はい?みかん?
「連衆」 みかん系、みかん系です。柑橘系。
「会長」 ああ、みかん系ね。はい。
「連衆」 はい。
「連衆」 うん。面白い木ですよね。
「連衆」 なんか甘く感じたんですけど。
「連衆」 ねえ、前よりねえ。スパイシーな柑橘系のさわやかなのがちょっとなくなったよね。
「連衆」 なんか、二回目回ってきた時、違う木かなって思っちゃって。
「会長」 うん。まあ、あの志野流の寸聞っぽいていう、そのスーって言うのは、割と最初には出るんですけどね、今はそういう感じではなくて、落ち着いてますよね。
「連衆」 うん、落ち着いてるもんね。
「連衆」 どの辺からこうなっちゃうんだろうって気になりますよね。
「連衆」 ねえ。だから、地域(着座位置)によって違うんですけどね。
「連衆」 酸味を感じる。
「会長」 もしかしたら、6,7人目くらいからは、ああいうスーって言うのは感じられなくなっているかもしれないですね、うん。
「連衆」 だからと言って温度下げれば。
「会長」 出てこないし。
「連衆」 そうそう、出てきづらいんですよ、この固い木は。
「会長」 だから他の味がなかなか立ってこないって言う感じかもしれないですね。
「連衆」 だから難しいなって。
「連衆」 難しいよね。あれ。(聞き取れず)
「連衆」 人数少ない会だとすごく、もう。
「会長」 はい、くるくる回ってくるとね、変化がわかりやすいですけどね。
「連衆」 聞き取れず。
「連衆」 あ、温度、温度、終わりの温度。
「会長」 ああ。ちょっとごめんなさい、もう切れちゃった。すいません。多分、あの、最初よりは数度高くなっているくらいだと思います。はい。
ええ、すいません、もう10分経過してしまいましたが、えっと、まだお時間許せば、あの、最初の古五味のどちらかだけでももう一回炷きますが。
「連衆」 両方。
「連衆」 両方。
「連衆」 両方大丈夫です。
「会長」 大丈夫ですか?
「連衆」 急ぎで、一息でね、一息でもいい。
「会長」 じゃあ、最初よりちょっと高めに設定してみますね。
そうすると、そうか、銀葉はいらないんだ。
「連衆」 逆さにしますか。
「会長」 うん、ちょっと一旦落ろして、それで、銀葉を温めてみて、反対側にしましょうか?はい。やっぱり、伽羅だけあって、銀葉にがっつり張り付いていますね。
「連衆」 ふーん。
「会長」 『孟筍』はそうでもないですね、『薫風』は、もう、銀葉にびったし張り付いてる。だからこれ、銀葉に残った樹脂だけでくんくんできますね。
やってみましょうか、一回。
「会長」 はい。これ120℃で、樹脂だけバージョン。
「連衆」 うーん。
「連衆」 すごい?
「連衆」 一息です。ふふふ。
「連衆」 一息で。
「連衆」 ふふ。
「会長」 結構いけるでしょ?はい。ケチってるわけじゃなくて。
「連衆」 ふふふ。
「連衆」 すごいですね。
「連衆」 甘くなっちゃう。
「連衆」 何でしたっけ?
「連衆」 『薫風』。
「連衆」 いい香り。
「連衆」 もう香炉変えて回した方がいいかもしれない。
「会長」 あ、じゃあ次の香炉で。これがね、充電がまだ戻ってないかもしんないので、不安なんですけどね。
「連衆」 でもこれぐらいなら大丈夫でしょ。
「会長」 えっと、そしたら、どうしようかな。
「連衆」 一息でさっと。
「連衆」 一息。
「連衆」 一息か。
「会長」 えっと、120℃弱ですが、えー、『薫風』の二回目、一回目を今度、裏返してます。
「連衆」 何でしたっけ?
「連衆」 『薫風』の温度高い版。
「連衆」 の裏側。
「連衆」 これ結構いいですね。
「会長」 ふふふ。
「連衆」 ふふ。
「会長」 いいですよね。わかりやすくて。
「連衆」 結構いいですね。すごいわかりやすい。
「会長」 なまじ、木のかけらが載っていない方がわかりやすい。
これでずっと、まだまだいけるうちは、まあ、香木の欠片も同様だということですよね。だから、火末が、あの、まだまだ先まであって。
「連衆」 いきますね。なんか黄油ですよね、完全に。
「会長」 黄油ですね。
「連衆」 完全に黄油っていう。『薫風』、黄油だった、みたいな、そんな感じの。
「会長」 ですね、こうやってみると、本当に、あ、黄油だったんだなって、よくわかる。
「連衆」 黄油ですね。樹脂だけのやつは、はっきり黄油ですね。
「会長」 125℃くらいに、今、してみました。まだまだ。
「連衆」 これ面白いですね。
「会長」 うーん、なんか、最初より辛いのがよくわかるようになってきますよね。
「連衆」 なんか、これすごくいい。
「連衆」 なんか、名香アロマエッセンスですね。
「会長」 はい?
「連衆」 名香アロマエッセンス状態ですね。
「会長」 ああ。はい。
「連衆」 油をこう。
「会長」 なるほど、はいはい。
「連衆」 抜いて出したやつ。
「連衆」 こういうエッセンスだけで銘香を聞けるとすごいですね。
「会長」 あはは、そうですね。うん。
「連衆」 黄油の特徴って多分これですよね。すごく良くはっきり出て。
「連衆」 『薫風』?
「連衆」 うん、『薫風』のオイル(樹脂分)だけです。
「連衆」 さっきの一息したやつのもうちょっと温度高いやつ。
「連衆」 また回りました。
「連衆」 一息?
「連衆」 一息で。
「連衆」 『薫風』二回目の方がはじめ甘く酸っぱくっていう、それがあったような気がします。
「会長」 ああ、はいはい、うーん、なるほど。
「連衆」 一回目は酸味と辛みが来た感じがしたんですけども、二回目は甘味が混じっている感じがしました。
「会長」 うん、甘みも感じますよね、うん。
やっぱり、伽羅で全く甘さを出さないのって、ちょっと考えられないですもんね。
「連衆」 あの、香木って、
「会長」 はい。
「連衆」 あの、お客様をお迎えしたい時、お線香とかだと30分くらい前にやっといた方が結構残りの香りでって言うか、良く聞いたりするんですけど、香木の時は、このくらいの大きさだったら、直前?
「会長」 うん、できれば直前の方がいいでしょうね、化学香料の匂いと違って、香木の香りってそんなに長く留まらないですから、あの、湿度がかなり高いときだったら、まだましですけど。だから、普通はちょっと直前くらいの方が、狙った方がいいと思いますね。
「連衆」 じゃあ、まあ、玄関で、その、温めておいて、来る直前に乗せるって言う感じ。
「会長」 はい。はい。焚きっぱなしの方もおられますけどね、そんなに高価なものは難しいですけど、いわゆる空焚きで、はい。
「連衆」 お客さん迎えるとき、結構空焚きがいいかもしれないですね。
「会長」 そうですね。
「連衆」 はい。そしたら、まあ、できるだけ直前。
「会長」 はい。に用意して、着かれる頃にはまだ焚いてる、ってくらいな感じでも、いいんじゃないかと思いますね。
「連衆」 植木鉢の影とか、隠しておくんですよ。
「連衆」 ああ。
「会長」 春宵が返ってきたときは124℃になっています。
「連衆」 124℃。
「会長」 うん、これ結構いいですよね。
「連衆」 いいですね。
「会長」 うん。
「会長」 間違いなく真那蛮で売られそうですね、これ。
「連衆」 ふふふ。
「連衆」 (聞き取れず。)
「連衆」 会長さんに質問なんだけど。
「連衆」 なんか質問だそうです。
「会長」 はい。
「連衆」 正倉院の蘭奢待をお聞きになったことございますよね?
「会長」 まあ、欠片はありますが、ただ、あの、本物かどうかって言うのは、わかりにくいんですけどね。
「連衆」 ああ。
「会長」 まあ、大体でも、黄熟ですから、大体似たようなもんですから、どれも。
「連衆」 ああ。
「会長」 はい。あのー、黄熟香としては、色んな黄熟香のタイプ、色々あるんですよ。私が集めたサンプルだけでも、十数種類ありましたから、その中で、あの正倉院のやつは、どのくらいのレベルかって言うと、まあ、下の上くらいの感じですよ、黄熟香としては。だから、大体どんな立ち方するかって言うのは、想像はできます。はい。
「連衆」 うーん。じゃ、黄熟香をちょっと聞香すると、ちょっと風情が近いと。
「会長」 はい、あ、うん、あの、うちに置いているのは、多分遥かに良いと思いますよ、あれより。うん。
「会長」 あれ(正倉院の黄熟香)の価値は、もうあくまでも、香りがどうこうじゃなくて、別のところにありますから。
「連衆」 絶対そうですね。
「会長」 うん。
「連衆」 黄熟としての価値があれではね。歴史とかもね、色々。
「会長」 だから、香木としては、私、全然興味はないです。黄熟香としては、あれよりレベルが高いものはいくらでもあると思います。
だけど、本当にあれはそういうもんじゃないんですよ。歴史的な価値ですから。
「会長」 ちょっと、じゃあ、あの、折角なので、時間オーバーしていますが、『孟筍』も炷きますね。
「会長」 これ128℃くらいです。ちょっと高めにしてみました。
さっきの『薫風』は、銀葉に張り付いていて、樹脂分が残っていましたけど、『孟筍』はちょっとタイプが違うんで、そんなには樹脂が溶けて出てきていなかったですね。
「連衆」 うん、でも出てますね、『孟筍』っぽさが、がっつりと。
「連衆」 風の梅が香は、『孟筍』と『薫風』の合いの子ですかね。
「会長」 おお、そんな高評価を頂いて。
「連衆」 多分、そんな感じですね。
「会長」 近・現代の伽羅としては、善戦していますね。
あれも、いつ頃日本に入ってきたかわかっていないんですけど、風の梅が香。はい。
「連衆」 そうなんですか。
「会長」 あ、そうだ。
それから、蛇足ですけど、さっき午前中の方から、やすらひ(聞き取れず)っていう今月の推奨香木、あれが、非常に変わった蛮だって(noteに)書いてあったけど、実物見たいって言われたんで、ご覧に入れたんですが、ちょっとこれ、塊で欲しいと言われた方がいて、割ってしまっていますが、こんな風に変わってます、っていうのを、ついでにお回ししておきますね。大分なくなってしまいましたけど。
あの、普通は、これポンと割ると、木目がこういう風に通っていますけど、これ、普通と逆なんですね。
「連衆」 やすらひ(聞き取れず)は、下に切ったのはございますか?
「会長」 はい?
「連衆」 切ったのはございますか?
「会長」 あ、ございます、はい。
「連衆」 切るときは木目に沿って切るんですか?それとも、輪切りっていうか。
「会長」 えっとですね、あの、普通はですね、これは判りやすいんですけど、これ、木がこう生えていて、で、この、皮に近い一部が、樹脂化して、香木になってます。で、木目がこう通っています、で、我々截香する場合は、これをこう挽くんですね。こうやって挽いたのを、次に、上からとんとんとんとんと割っていくと、短冊状にできるんですが、やすらひは、こう落とした段階で、もうそのまんまにしかならないので。
だから、90度木目が普通と違うんです。ちょっと説明しにくいんですけど。だから、落としたら、もう落としたまんま、計量することになります。
「連衆」 ある程度までは、切ってもらっておく。多分、自分でカッターとかで割りづらい。
「会長」 そうですね、ただ割った状態でお納めしますから、それを今度は、カッターナイフでお好みの幅に切っていただくしかできないです。あの、長さを揃えたりはできないですね。やりにくいです。はい。
「連衆」 でも、心配するほど変えないですけどね。
「連衆」 一同笑い。
「会長」 あはは。
「連衆」 自分で揃えたのね。いろいろ。代替品で。7つか8つ道具で。
「連衆」 なたを大きめにしてますね。
「連衆」 なたも、みんな小さ目ね、普通のよりは。小さめのをね、色々探して。
「連衆」 あ、切るやつを。あー。
「連衆」 うん、まな板の厚いの底(香割台)にして切って。
「連衆」 あらあ。
「連衆」 そうですよね、切る道具も(聞き取れず)。
「連衆」 高いですもんね。やっぱり自分で代替品のね。
「連衆」 私カッターで切ってますけどね。
「連衆」 あ、そうですか。
「連衆」 あの、こういう塊はカッターじゃ切れないんでね。
「連衆」 あの、要はピラニア鋸みたいなやつで、鋸で挽いて、でカッターでピピピって。
「連衆」 あー。
「連衆」 その時は相談させていただきます。
「連衆」 ふふふ。
「連衆」 外に出られなくなったら、うちで粛々やって。
「会長」 あ、そうだ、これがそうだ。
「会長」 これ落とした、ポンと落とした欠片がこれです、そう言えば。こんな形になるので。
「連衆」 あー、大変だこれ。
「会長」 はい。だから、もう、それの幅を適当に切って使っていただくしかなくて。
「連衆」 こう筋目に?
「連衆」 まあ、それは、それで、こう割りづらいじゃないですか。
「連衆」 うん、こうはできない。こうでしょうね。
「連衆」 たけのこ(聞き取れず)。あはは。
「連衆」 たけのこみたい。
「連衆」 それ絶対ばりばりばりって。
「連衆」 あはは。
「連衆」 あ、勢いに差があるのかな。
「連衆」 あの、結構おっきめの刃物で一気にグッていくか、もうゆっくりやったらばりばりばりって。
「連衆」 絶対木のまな板を買って。あはは。
「会長」 あはは。あの、弾け飛びますからね。はい。周りを囲っていただかないと、何かで。
「連衆」 よく旅立ちますよね。
「会長」 あの、専用爪切りかなんかで。ぶちっと。が一番安全です。はい。
「連衆」 一応倣って、揃えたんです、お道具を。カットしたり、上のせる、切ったり。安物だけど塊を買って。
「会長」 うん。はい。あの、自分で截香するの楽しいですからね。本当に。香木のことが良くわかるようになりますから。
「連衆」 きれいにね、会長さんのようにキレイに切れない。
「会長」 あはは。私はもう、それが仕事ですから、はい。
「連衆」 料理人のお肉みたいなもんですかね。
「会長」 あはは。いや、しかし、本当に、いきなりステーキの肉切る人、すごいですよね。100gとか言ったら、100gで切りますもんね。なかなか、あの域に達するには大変ですよ。
「連衆」 いやでも、1g大体わかりますよね。
「会長」 大体わかります。はい。この間も、大内、100gぐらいでって言われて見当つけて挽いたんですよ。そしたら、実際97gぐらいしかなくて、それはあれなんですよ。私が思ったより中がスカスカだったんです。なので、ちょっと狂っちゃったと。大体いい線いっていました、100g。はい。
「連衆」 いやでも、あの、黄油、黄油らしいのががっつり出てくる。だから、相の子なんですよね。風の梅が香。
「連衆」 あー。
「連衆」 そうよね、際立ってないわね。
「会長」 あー。
「会長」 『孟筍』、火末が苦くて(聞き取れず)ってなってますけど。
「連衆」 まだそこ(火末)まで行ってない感じがして。
「会長」 まだまだ、辛いです。あ、今(電源が)切れちゃった。
「連衆」 もう、結構なお時間ですけど。
「会長」 そうですよね、もう、すいません、いつも、遅くなっちゃいましたーって言ってても、大体30分だったんですけど、今日は40分経ってます。失礼しました。
「連衆」 ありがとうございました。
「会長」 どうもありがとうございました。
「連衆」 ありがとうございました。