AS SOON AS –4/26〜5/2–
26日
ライブハウスの天井をぶっ壊した不届き者のせいで、Age Factoryがプチ炎上している。俺は元より「モッシュ」や「ダイブ」といったカルチャーは、ライブハウスやロックミュージックが持つ特殊性に隠れた暴力だと思っているのだけれど、今回の一件でさらに苦手意識が強まってしまった。音楽を聴いて肉体に生じる反応は大切にしたい。でもそれは、人やモノを傷つけていい理由にはならない。
Age Factoryは素晴らしいバンドで、6月にはじめて彼らのライブに行く予定だ。俺のような考えを持っていても、ちゃんと音楽を楽しめる空間になっていて欲しいと心から願っている。
27日
昼休憩、元同僚の後輩から連絡を受け、一緒にカレーを食べる。後輩とは名ばかり、ほぼ“連れ”的な間柄なので、まるで学生時代の旧友と当時の先生について語らい合うくらいの感覚で、役員や部長たちの話で盛り上がり楽しかった。
そんな彼ももう29歳になると聞いて、爆速で過ぎる時間の容赦なさに驚愕。社会人9年目。振り返れば様々なことがあった。あっという間はあっという間なのだけれど、その「あっ」の中に数えきれない程の喜怒哀楽が詰まっていたように感じる。こうして日記を書くまでは、1週間なんて体感84秒くらい、まさにAS SOON ASだったのだけれど、いざ記録として残してみると、それなりにグルーヴィーな毎日を送れているような気がしないでもないので不思議なもんだ。
28日
能勢邦子氏著「なぜか惹かれる言葉のつくりかた」を読了。著者の能勢さんはananの編集長、POPEYEの副編集長など、輝かしい経歴をお持ちの方で、確か宣伝会議の「編集・ライター養成講座」の講師も務められていたと記憶している。“惹句”をキーワードに、彼女のノウハウが綴られているのだけれど、オノマトペとか擬人化とか、割とベーシックなテクニックばっかりで、やや拍子抜け。
ただ、伝えたい対象に「自分を寄せる」という考え方は新鮮で、なるほど!と膝を打った。俺の場合、幸いにも好きなことがたくさんあるので、その分、視点やチャンネルも多いはず。この考え方を会得できただけでも、価値ある読書体験だったと言える。
29日
ショーン・ベイカー監督の「レッド・ロケット」を見た。「タンジェリン」も「フロリダ・プロジェクト」も、アメリカの影の部分を炙り出した良作だったのだけれど、キャラクターのテンションや“ヒリヒリ感”みたいなのが絶妙に肌に合わず、俺のフェイバリット監督リストにショーン・ベイカーが入ることはなかった。しっかしこの「レッド・ロケット」は最高だった。
「はみ出し者のフィルターを通して、アメリカ社会の暗部を描く」という切り口と、ポップなカラーリングやロケーションの綺麗さはそのままに、ショーン・ベイカー節が完全なる“アホ映画”として昇華されていた。煌びやかなエンタメ界の象徴として、インシンクのバイ・バイ・バイがしつこいほど使われていたのが印象的だった。
30日
大阪城ホールで1975を見た。彼らの音楽とともに大学生から社会人、コロナ禍、ポストコロナというタームを歩めたこと、現在進行形で歩めていること。俺は誇りに思う。こんなに大切なバンド、他にない。自分の人生にはない“ロマン”がこのバンドの曲にはある。例えば音楽を聴いてリズムに乗ったり、肢体をくねらせたりすることは、日本人の感覚としてはちょっと恥ずかしかったりするのだけれど、彼らの曲を聴いているときだけは、恥も外聞も捨てて心の底から踊ることができたりする。カッコつけたくなる。心が大きくなる。世界が輝いて見える。自分に期待したくなる。ああ、なんだか泣きそうになってきた。
ただ、素晴らしいライブを見た後なのに、精神的にちょっと参ってしまっている。余韻に浸りたいのに、悲しさやモヤモヤのノイズが脳内を駆け巡り、1975のメロディをかき消そうとしてくる。30歳でこの感じなんだから、もう一生この感じなんだろうなと思う。
1日
5月から会社の規定が変わり、ドレスコードフリーになった。早速アーセナルのプレゼンテーションジャケットを着て出社。俺は特別ファッションセンスに秀でてる訳でも、洋服が好きな訳でもないけれど、“好きを着る”ことにはこだわりたい。バンドTシャツやスウェット、映画Tシャツ、お笑いのTシャツ、アーセナルのジャケット。それらを身に纏って外に出るということは、社会に対するアティチュードの表明でもあるのだ。「俺はこのミュージシャンが放つメッセージを、このサッカークラブが持つフィロソフィーを、この映画が持つ切り口を、この芸人が持つセンスを、支持する。」というアティチュードの表明。それがモチベーションガソリンとなり、今日も俺を突き動かす。
2日
新作の公開を前に、7〜8年ぶりくらいに「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を見返した。やっぱりジェームズ・ガンはオタクの気持ちを心得ているな、と思った。音楽が人にもたらす影響を、銀河系規模で描くというアイディア。レコード屋でバイトしてる兄ちゃんのプレイリストを覗き見したかのような絶妙の選曲(ラストが超ベタベタな2曲で終わるのも◎)。愛くるしすぎるキャラクターの数々。これより面白いヒーロー映画は、後にも先にも出てこないと思う。新作、めっちゃ楽しみウヒョヒョヒョヒョ〜。