昨日は繰り返し
はさみで、手を切ってしまった。
三日間で二度も、わたしは学んでは忘れるのです。
血が出ることがおそらくひとの倍は苦手なのですが、なにかおかしくてここに書きます。
一度目は、実家にて。
家を出るときにクローゼットにしまい込んできたわたしのありとあらゆるものを、そろそろ処分せねばと、そして何年も前に撮った、履歴書用の写真を切り刻んでおりました。
自分の顔を切り刻む、何ら抵抗はありません。今より少し幼い顔、かわいらしくて、ぴたぴたの肌。
わたしは世間というには及ばず、身の回りのことをおそろしく知りません。就職の頃になって化粧に興味がなくなってやめてしまったのもそれゆえかな。日常の表情やわやわであろう、でも何が楽しいかすら殆ど知らなかった。その顔を切り刻んで無心、気づいたときには現在の体まで、わたしは鮮血をぼどぼど落とし、ねこが首を傾げて見ていました。
二度目は職場。
使いたいはさみに糊のようなべたべたがあった。べたべたをさっぱりきれいに取り除くことって、相当たのしいことのひとつです。仕事をしなさいということですけれど、そのへんの紙にアルコールをつけてつよくこそいでいました。
鉄が、神経をなでた。鉄。鉄にふれた感覚が過去になかったものでした。鈍色を脳内で見た、どくどくどくどく、肉のなかを通ったことに気づいて、そこらのひとなら阿呆に呆れて泣いちゃうとこですね。
わたしはつよいこ。阿呆でも帰ったら映画なんか観たりしてよいのです。
絆創膏を両手の指に巻きつけている。
エアコンの冷気に秋のぬくもりが混じっているなあと起きぬけに思って、絆創膏の余ってしわになっているとこをなぞっていますが、氷いっぱいの椀で珈琲飲みます。体があついからね。
はさみは今日必要があっても、変わらずに使えるよ。