【日記超短編】ミスター・セルフカット'21

 必ず行きますと言いながら結局パーティーに来なかった者たちのことを考えている。そんなに多くのパーティーにかかわったことはない。十年で四回というのは少ないほうだろうか? 煙の中を手さぐりで歩いてるみたいに、アルコールをかき分けてはるばる玄関までたどり着く。勝手に上がり込んできた女と鉢合わせ、髪の毛より長いあくびをしてから女がこう言った。
「ミスター・セルフカット'21は来てる?」
 誰だよそれは、と思ってわたしは腹を抱えて笑った。女は鋼鉄の無表情を保ったままで、自分の質問への答えが世界のどこかからもたらされるのを気長に待っている。

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