【断章】グロテスクさについて

死化粧や死後婚という習慣にうっすらと、あるいは濃密に漂うグロテスクさは、化粧や結婚という習慣がもともともっていたグロテスクさがいわば「裏側からあてがわれている鏡像」を剥がされることで正体を現したものだろう。

だからテクニックとして「何かをグロテスクに見せる」ためには、そのうしろにあてがわれている鏡を外してやればいいのである。

むきだしの鏡像そのものはグロテスクなものだが、それが何かのうしろに置かれているかぎりにおいて、その何かを親しみのもてるものにかえる。

むきだしの鏡像は「けっしてうしろに鏡像をあてがえない」という意味で、もっともグロテスクなものなのかもしれない。

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