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Second memory(Sarosu)14
「あー!! 何してるのよ! それ、一本ずつしかなかったのに!」
「おっ、、お前が!!!」
「? あたしが?」
「……なんでもねぇ!!」
口が裂けても、言えるはずがなかった。きっと言えば、またからかわれる気がしたからだ。
「……綺麗だな」
「えっ!? いきなり何言ってーー!!」
「このセンコウハナビ」
「あっあぁー! なーんだそっちかぁ!!」
ピスティはわざと大きな声を出して誤魔化そうとしていたが、恥ずかしさから顔を赤らめていたのを俺は見逃していなかった。
でも、俺はそのことを言及はせずに何気なく上を見上げた。
「……なんか、この星空みたいだな」
「星空? わー! 綺麗」
「おい! そんなに勢いよく立ち上がったら落ちーー!!」
「えっ!? 何ーー? あっ……」
ピスティが立ち上がると同時に、火の玉が地面に落ちてやがて消えた。
「あーあ〜、最後の一つだったのになぁ」
「……なぁピスティ、少し付き合ってくれないか?」
「どこに? 明日は早いんじゃなかったの?」
「少しだけ、な」
俺はこの時、あの場所にピスティを連れていこうと思った。
なんでそう思ったのかは、わからないけど……。
ただあの場所へ行った記憶は子供の頃のものだし、たどり着けるかどうかも正直微妙だったが、、行ってみれば不思議とあの頃よりも簡単にたどり着けるんじゃないか。そんな気持ちになっていた。
「まだ着かないの?」
「もうすぐだ、ここを抜ければ着くはずだ」
森を抜けた先には、俺が望んでいた世界が広がっていた。
星の見える丘。
それは、時が止まったみたいにあの頃と同じ景色があった。
「……綺麗」
「へへ、いいだろ? 俺の秘密の場所さ」
「へー、ねぇ、そんな大事な場所をどうしてあたしに教えてくれたの?」
「……なんで、だろうな?」
「サロス?」
正直、不思議だった。どうして、ピスティにこの場所を教えたくなったのか……。
ふと、丘から下を見てみると、あの頃は知らなかった一つの事実があった。
「天蓋………ここから見える場所だったのか」
星の見える丘、、そのすぐ下には、今も尚、ヤチヨがいるであろう場所、、天蓋があった。
もしかして、ヤチヨが俺をここに呼んだのではないかと錯覚してしまいそうになる。
「ねぇ、サロス? 聞いてる?」
「……なぁ、ピスティ」
「何?」
「お前、とうちゃんはいたのか?」
「なんで、いきなりそんなこと聞くの?」
「俺のこれまでの人生には、、とうちゃんって存在がいたことがないんだ」
俺の一言で、辺りの空気が重たくなったのを感じた。
「そう、、なんだ」
「あぁ。ガキのころから、かあちゃんとシスターと三人で、、まっ、途中でヤチヨも加わって四人で暮らしていたんだけどさ。正直、とうちゃんなんていなくても俺は特に気にしていなかった」
「まぁ、、あたしもぱーーお父さんには、あまり良い印象がないから気持ちわかるよ」
「で、最近思ったんだ、、ヤチヨに対する俺の気持ちって……そのとうちゃんが子供に対して思うような感情なのかなって」
「……んっ? どういうこと?」
「……俺がヤチヨのことを大事に思う気持ちって、そういうのと同じなんじゃないかなってさ」
とうちゃんって存在が俺にはどんなものかは分からねぇけど。
かあちゃんが俺を、、母親が、子供を思う気持ちがこんなにも強いのなら、きっと同じ親っていうものであるとうちゃんも同じくらい強いんじゃないか……。
ヤチヨを救いたい。守りたいという気持ちは、父親のいない俺の心が、無意識のうちにヤチヨをそういう意味で大切に思っている結果なんじゃねぇかなって。
ってことは……俺は、ヤチヨを大切な家族だと、そう思っているんだろうな。
続く
作:小泉太良
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