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5 学園内区画

 この学園の生徒たちはこの学園内に住む形で生活拠点として過ごしている。基本的には学外に出る事は許されていない。学園を出るという事は無事卒業となるかまたは退学となるかのどちらかである。

 生徒達が住んでいるこの東部学園内の敷地には大きく分けて――

校舎棟区画…生徒たちが勉学、座学などを行うエリア

教員棟区画…先生たちが待機しているエリア 外部との交信対応はここでしかできない

自由公園区画…憩いの広場となっている。軽度な運動訓練はここで行う事もある

生徒宿舎区画…生徒たちの住む場所で食堂などもこのエリアに存在する

練兵場区画…様々な状況が想定されているかのような広大な土地に自然が広がり、それらがそのまま戦闘訓練などに使われているエリア

商店・娯楽区画…騎士職以外のスキルも積み重ねたい生徒が店を開いたりできるエリア
旧校舎棟(遺跡)区画…立ち入り禁止のエリアとなっており立ち入るには許可の必要なエリア。

 こうして7つのエリアに分かれている。

 西部学園にはこれに加えて独自に闘技場区画というものも存在する。単騎、個での戦闘の能力値の高い生徒が生まれやすい西部ならではの区画であるといえる。

 東部学園はその分、練兵場エリアに山岳や森林、砂漠など西部にはないような様々な環境があり、応用力や臨機応変さが必要となる。その辺りの差異が東西の考え方の違いや特色となり反映されているのだろう。

 どちらの学園も生徒達によって自治を行うというような特徴があり、低学年時に存在する固定授業以外には学びの自由度は高い。代わりに学園内での実力というのは自主性と主体性を用いて行動できるものだけが成長をしていける環境になっている。

 またこの学園内自治というのは非常に権限が強く、国ですらこの学園の内部には一方的には干渉が出来ないというような決まりになっている。
 そこまでそれぞれ個の意識と取り組みを重んじるがゆえに優秀な人材を生み出してこれたという背景があり、国を背負うという事をこの年代から意識させることのメリットはこれまでには大いにあったことだろう。

 だがその実、近年においてはこの強国シュバルトメイオンは周辺の国を傘下に入れ、事実上の統一を果たしており大きな戦は行われなくなっている。東西の学園同士で行われる定期的な戦が国で最も大きな戦いになってしまっているのだからその点は皮肉と言わざるを得ない。

 かつて大きな戦いが沢山起きていた時代には考えられなかったが、国内では騎士の制度そのものを疑問視する声も現れて始めている。争いのない時代において騎士の必要性は確かに近年では下がっているのは事実だ。

 そしてそれは、騎士を目指す生徒達の意識の低下をも招いていた。かつて誇り高い騎士であった者達も学園にいた頃は戦いに憧れ、戦果を上げて国の英雄となることを夢見て学園に来るものばかりであった。が、ここのところ騎士になれたとしても行う事は国内のトラブルへの対応や小悪党の討伐などでそうなれば当然、華やかな過去の大戦などの輝かしい活躍には程遠いものとなり騎士を目指す過程でその現実に幻滅する者も多い。

 ただ、国の問題として浮き彫りになっているのが人材不足だ。国土の拡大がこれまでの歴史において信じられないほどの早さで進んでしまった反動で、各領土の騎士の振り分けや管理、貴族のいない地域の統治をする人材などが圧倒的に不足してしまっている。
 シュバルトメイオンという国が大国となるまでの過程の礎となって戦で多くの優秀な人材の命が散っていった事も重なり、様々なほころびがこの国の中には現在は生まれている。

 騎士がこれまでの歴史のように活躍できる戦場などがほとんどなくなってしまっている中で、騎士となることを夢見ている若者自体は少なくはないのもまた事実であり、この人材をいかにして意識を落とさせずに生かし成長させ、どのようなタイミングで役割を与えるのか。

 それを考えるのが何よりも学園の先生達にとって急務であったが、人は急には育たないし成長もしない。その難しさに誰もが頭を抱えるのだった。


続く

作:新野創
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