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Second memory(Sarosu)21

 その後はいつも通りだった。
 食材を調達し、後はそれを調理する。そう……いつも通りだ。
 
 家に帰ると、ピスティは疲れてしまってたのだろうか? 目の前のソファに飛び込むと、そのまま眠ってしまった。
 
 仕方ないな……と、一つ息を吐き、ピスティを起こさないようにそっと毛布をかけ、キッチンへと向かった。
 
 ……さて、俺が調理出来るものなんて大したものはないんだけどな……。

 だいたい、今日は豪勢にすると言ったのは、ピスティのはずだったのに……まさか、寝ちまうとは……。仕方ねぇやつだな。
 
 気づけば俺は、何故か笑っていた。
 
 ……そう言えば、前にも似たようなことがあった……いつだったかな?
 

 まっ……それはそれとして。

 いまだ気持ちよさそうに眠っているピスティに対し、昔ヤチヨにやられた悪戯を思い出す。

 スープの中にお玉を入れ、手で触ってやけどしない程度の熱さにしてからピスティの頬に近づける。

「おい、そろそろ起きろよ。ピスティ」
 
 そして、そのままピスティの頬に少しだけ当てる。

「あっつー!!!」
 
 ピスティが驚いて飛び起きる。

 ……そんなに熱かったっけ? 確かめたはずつもりだったが確認が甘かったかも知れないと少しだけ、反省する。

「……いつまで寝ぼけてんだ? 飯、冷めるぞ」
「あ・ん・た・っねー! もう少し、起こし方ってものがーー!!」
 
 聞こえないフリをして、キッチンへと逃げる。

「……飯できてるぜ。ピスティ」
「…………」
 
 起きたはずだが返事がない……しまった悪戯が過ぎたか……もし、拗ねているなら面倒だ……。

 確認のためもう一度呼んでみる。

「おい、ピスティ」
「……今、行く……」

 後ろを向いていて背中しか見えないが、少し震えているような気がした。

「おいっ……どうした? ピスティーー。えっ!? ……お前、なんで泣いてるんだ?」
 
 状況が理解できない。なんで泣いているんだ? あれか、そんなに熱かったのだろうか?

「あのピステーー」
「ごめん、ごめん。あー。その、目にゴミが入ってさ。」

 なんだか、その泣き姿が重なる。

「……お前、意外と泣き虫なんだな。ヤチヨみたいだ!」
「えっ!?」

 ぽつりと零した言葉にしまったと思うが、俺以上にピスティが動揺しているに見えた。

「あー……やっぱ、姉妹って似るものなんだな!」

 なんとも言えない空気を変えるため、俺はなんとかおちゃけてみせる。

「……ピスティ?」
「……星の見える丘」
「えっ?」
「二人で……アカネさんに怒られるの覚悟で見に、行ったよね?」
「ピスティ?」
「途中であたし泣きだして……サロス、すごく困って……あの時、サロス。文句ひとつ言わずにずっと慰めてくれて……頭撫でてくれて……」

 懐かしむようにしてピスティは続ける。

「真っ暗で、何も見えなくて、サロスだって不安なはずなのに……でも、慰めてくれた。励ましてくれた……優しい言葉をかけてくれた」
 
 ピスティが、次々と矢継ぎ早に思い出を語り始める。

 その内容は、本当に……些細なことばかりで……

__星の見える丘に行ったこと。

____俺が、きのこを食べてアレルギーを起こして大変なことになったこと。
 
______かあちゃんの誕生日を、ヤチヨと二人でサプライズパーティーにしたこと。

________かあちゃんとシスターの三人で色んな歌を歌ったこと。
  

__________俺の知ってること、知らないこと。


 それをピスティは楽しそうに話した。

 俺が抱いていた違和感、疑念は……遂に確信へと変わっていった。


続く

作:小泉太良
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