Second memory(Sarosu)23
「……やっぱ別人、、、なんだな」
「……残念だった? あたしがヤチヨじゃなくて……」
「……あぁ、まぁ、な……」
思わず、本音をぽつりと零す。
「ねぇ、あんたヤチヨのこと、好きなの?」
「ばっ、馬鹿。そんなんじゃねぇよ!!」
言えるわけねぇだろ!! 俺だってまだよくわかってねぇんだし……!!
つか、なんてこと聞いてきやがるんだ!! ヤチヨ! お前、お前ぇぇぇぇ!!
「アハハ、それじゃあそうですって言ってるようなもんよ。誤魔化すんならもうすこーしうまーくやらないと」
「だっ、だから違うって言ってんだろ!! だいたい、俺はヤチヨのことなんてーー!!」
「じゃあ、なーんでそんなにムキになってるの?」
不味い。
冷静になれ……。
このままじゃ、余計なことまで口走っちまう。
「ねぇ、あたしにだけこっそり教えてよ。サロスの本当の気持ち」
「いや、だからーー」
「待った! ちょーっと待った」
そう言って、あいつが俺から離れていき。戸棚からグラスを取って、どこにしまってあったのかわからないオレンジ色の液体が入ったビンを取り出してグラスに注ぐ。
確か、母ちゃんもたまに飲んでたな……確か、酒、とか言う大人の飲み物だったか?
「さっ、良いわよ。話しても!」
「……いやだからなんで、お前に言うことになってんだよ!!! だいたい、お前にバラしちまったら、ヤチヨにも伝わっちまうんじゃねぇのか?」
こうなれば、お前が作った出来の悪い設定を利用させてもらうぞ。
こっちはそれくらいしか切れるカードはもうない。
「あーそれなら、心配ないわ。ヤチヨが天蓋に入ってからそういう不思議な感覚は一切なくなっちゃったから」
「……なんかめちゃくちゃ都合よすぎる能力だな」
「んーあの中は、きっと特別な空間なんでしょ? きっと」
「……適当だな。お前」
だから、粗が目立つんだよ。子供の時なら納得できたけど……流石に今はバレバレだ。
「……知ってるでしょ。そういうところも」
「…………まぁあな」
俺たちは、二人で笑いあう。楽しい時間だと思った。
たぶん、今だけ、神様ってやつが俺にくれた幸せな、夢みたいな時間なのかもしれない。
「じゃあ、あたしの好きな人の話もしてあげるから本当のこと教えて」
ピスティは赤い顔で、目も虚ろだった……飲み過ぎじゃねぇか?
「えっ!? はっ?? えっ!? お前、好きなやつなんているのかよ!!」
しかし、そんなことよりもその発言が気になってこちらもそれどころじゃない。
ヤチヨに好きなやつがいる……それが本当なら、知っておきたい情報だった。いや、知らない方が寧ろいいのか? ああー、わっかんねぇ。
「何よ、その言い方。あたしにだってそういう人がいたって良いじゃない」
「……へー、ふーん、ほぉー、そうなのかー」
「ん~? 気になる? 坊やぁ?」
グラスを傾け、酒を煽る。もう、半分くらいの量になっていた。継ぎ足すこともせずヤヨは話を続ける。
「だから坊やは止めろって……そりゃ、まぁ、どんなやつかっていうのは、ちょっと、ほんの少ーし、いや、こんくらい微かだが、気にはなるかな」
人差し指と親指の間を僅かに開けるようにした手をピスティに向ける。なんでこんな動揺してんだよ俺。
「じゃあ、教えてあげるから。サロスも本当のこと教えなさいよね」
「はー……わかったよ。でもピスティ、言うのはお前が先だからな」
……まぁ、適当に誤魔化せばいいか。
俺は、あいつよりは、嘘をつくのうまくなったはずだから……。
「……良いわよ~でも、約束よ。サロスも、本当のこと教えなさいよ」
ピスティは満足そうな表情を浮かべ、残りのグラスの酒を一気に飲み干す。
「おう。男に二言はねぇ」
続く
作:小泉太良
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