Second memory(Sarosu)01
「はぁ、、どうすりゃ良いんだよ」
隣には、泣いているヤチヨ、辺りは真っ暗。
珍しくヤチヨが提案して来たというのに……。
数十年に一度のステラ流星群、ヤチヨはそれが見たいと珍しく駄々をこねた。
母ちゃんもシスターも、家で見ることを提案したがヤチヨは一向に首を縦に振らなかった。
だから俺に白羽の矢が立ったというわけだ。部屋に来るなりヤチヨは俺の手を握り涙目でこう言った。
「一緒に来て」と
俺がヤチヨのお願いを簡単に断れるわけがない。
まして今みたいに泣かれるのは一番困るわけで、、、
、、、俺たちは完全に迷っていた。
以前ヤチヨがママと一緒に見たという星が見える丘っていう場所。
そこに俺を連れていこうとしたわけだが……
ヤチヨは最初はぐんぐん前を歩き俺はただ付いて行っただけだった、行ったのが随分と前だったからかしばらく経ってから、あれ?とかこっちじゃなかったっけ?などの不安を煽る独り言を口にしていたのが耳に入る。
なんとなく嫌な予感はしていた。
ヤチヨは多分、いや、おそらく、信じたくはないが絶対に方向音痴ってやつだ。何度も言った道ならまだしも、一度行っただけの道を覚えていられるようなやつではない気がする――
――――この俺の直感は割と当たると俺の中で有名だ――――
「なぁ、ヤチヨ。帰ろうぜ」
幸い、帰り道ならわかる気がする。どんな入り組んだ道に行こうがこの辺は俺の庭みたいなもんだ。(たぶん)
なんとなく、うちにならたどり着ける自信がある。
「…………」
しかし、当のヤチヨは一向に首を縦に振ってくれない。
こうなったヤチヨはだれより融通が利かないし、どんなことがあってもその場を離れてはくれない頑固者のわがままに早変わりだ。
この状態のヤチヨに言う事を聞かせるのは俺の母ちゃんでさえも至難の業だった。
結局、こうなったヤチヨは時間を置くか、納得するまで付き合うかの二択しかない。と、言っても俺はすでにどうするか決めていた。
「サロス?」
立ち上がった俺を見て、ヤチヨが不安そうな声を上げた。
「いつまでもここにいても仕方ねぇし。歩こうぜ」
「でも……」
「大丈夫だ。お前が、どんなに変な道を行こうが絶対にうちには帰れる。それだけは心配すんな」
「サロス……」
「ただ、その星の見える丘って場所は俺にもわからねぇ。だから、お前だけが頼りだ。頼むぜ、ヤチヨ」
俺の言葉に、ヤチヨは安心したのか涙を拭いて立ち上がり。また、歩き出した。
とヤチヨの手前、見栄を少し張ったが、実際この辺りは俺も初めて来るような場所だった。これ以上入り組んだ道に入り込まれたら俺も自信が――。
――いや、俺が弱気になってどうすんだ。
何があったって家には帰る。
内緒で出かけたとしてもそれだけは今までも守ってきたんだ。
だから、絶対。ヤチヨと一緒に。
ヤチヨの歩くスピードが遅くなってきている。もう、何時間歩いたかわからない。
俺も足が痛くなってきた。ヤチヨはとっくに限界を超えているだろう。
今ヤチヨの足を動かしているのは、絶対に星の見える丘にたどり着くんだという強い想いの力に違いない。
急にヤチヨの足が止まったかと思うと。大きな木を見上げた。
その木は、周りに比べてひと際大きく40mはあろうかという高さで、幹には幾つもの傷(?)のようなものがついていた。
ヤチヨはその大きな木の幹のあたりで急に止まったのだった。
「おい? ヤチ――」
「大きな幹から数えて三番目にある木の先……」
ヤチヨは、独り言をポツリと呟くと、急に走り出した。
「おいっ! 待て!! ヤチヨ!!!」
俺も、慌てて駆け出し。ヤチヨを追いかけた。
とても、走れるような状態じゃなかったけどそれでも、足がとれちまうんじゃないかって思うほど痛かったけどそれでも走って付いていく。
続く
作:小泉太良
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