First memory(Hinata)Last
まぁ、言葉の通りよくそんな時間があるなと思うくらいには遊びにきてフィリアを誘惑して私をからかって帰っていくのは変わらずだ。
ただ、、お土産として食料や医薬品をこっそり補充して帰っていく辺りが憎みきれないのという所があり余計に腹立たしい。
「ドライとは仲が良いみたいだね。定例会の後も少し二人で話していたみたいだけど何の話?」
「大した話じゃないわ。ただの雑談よ」
「ふーん、、雑談か」
「女の子はそういうの好きなの! 知ってるでしょ?」
「まぁね」
ドライは年も近いためか、割と何でも最近は話すようになってきた。
仕事の事、プライベートな事、フィリアの事、、
彼女は、気が強いためか誤解されがちだが誰よりも女の子らしい女の子なのだ!
私とフィリアについて本気で応援してくれているし、本人も良い人を見つけたいと最近は良く零すようになってきた。
曰く、まともな男が自警団にはいないとのこと……。
きっと、ヤチヨちゃんがいれば三人で仲良くなれたと思う! まぁ、、アインも入れて四人になっていたかも知れないけど……。
「フィリアこそ、ツヴァイと随分話こんでたじゃない?」
「あぁ。また模擬戦をやろうと誘われたよ」
「嫌なの?」
「うーん、、次の日の体の痛みを考えるとね」
そう言ってフィリアは苦笑いを浮かべる。
ツヴァイについては、実際あまり良くわからない。
私からすると、温和でいつもニコニコしている模擬戦好きのおじさんという印象だ。
ただ、模擬戦終わりにボロボロの体で帰ってくるフィリアを見る限り彼はかなり好戦的な一面があるのだろう。
そして、治療する私が勝敗を聞くと大体フィリアの勝ちか引き分けらしく、、あの巨体を治療する事になるドライの苦労を考えると私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
サロスとは、仲良くなれそう、、よね……。
なーんて、さっきから二人のことを思い出して少しだけ暗い気持ちが甦る。
気分を変えるために私は上を見上げた。
星の見える丘の景色だけはあの頃と何一つ変わっていないような気がする。
「わぁー、、今日は、綺麗な星空ね」
見上げた先には見とれるほどに、満点の星々が広がっていた。
「あぁ、そうだね」
フィリアも私の言葉で上を見る。
こんな夜空は、あの日を思い出す。
ヤチヨちゃんとサロスとフィリアと私の四人で見たあの流星群を、流れ星がたくさん流れたあの夜を……
「ヒナタ?」
私は、今とても幸せを感じている。
でも、そこに居て欲しかった二人はいない。
私達の話をきっと誰よりも喜んでくれるヤチヨちゃんも、、
それを聞いてフィリアをからかうサロスもここにはいない……。
本当は、それが一番幸せで。当たり前の光景だったはずなのに……。
「どうして泣いているんだい?」
心配そうに聞くフィリアの声で、私は自分がいつの間にか泣いていることに気づいた。
「どこか痛いのかい? それとも――」
そのまま強く彼に抱き着く。
フィリアは何も言わずにそんな私を抱きしめ返してくれた。
私は思わず、心から溢れ出る言葉をぽつりと呟いてしまう。
「なんで、、なんでここに……ヤチヨちゃんも、サロスも、いないの――」
「――ヒナタ……」
それ以上は私たちに言葉なんていらなかった。ただ、お互いに声もなく。ただ、抱きしめ合いながら涙を零した。
いつの間にか楽しい思い出より、悲しい思い出の方が多くなってしまった…………。
私はここにいない二人の親友と、四人揃ってこの場所でいつまでも語り合う。
そんな、夢物語を思い描いていた。
これがもし、幸せな結末の物語の途中であるのなら。
きっと、この場所でいつかまた笑い合える。笑い合えるはずなの。
そんな未来が来ることを
私は今もまだ
静かに
強く
祈り続けている。
ヒナタ編Fin
作:小泉太良
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