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First memory(Hinata)07
「やっ、やったぁぁぁぁ!!!」
私は、らしくもない大声で喜びを叫んでしまった。
外の天気は、先ほどまでの悪天候が嘘だったかのように満点の星空が広がっていて、まるで私たちを祝福してくれているかのようだった。
「まだだ!! 警報はまだ鳴っている!!」
シャッターで切断されたままで未だに足を掴んでいる警備ロボの腕を投げ捨てフィリア君が叫ぶ。
「みんな、もうひと踏ん張りだ!! あそこまで走るぞ!!」
私たちはサロス君が指をさした方向。学院から少し離れた見晴らしのよい展望台の方まで最後の力を振り絞り走った。そして、ようやく少し一息付ける場所へとたどり着いた。
「楽しかったね! ヒナタちゃん」
「もう、こりごりよ……」
息を整える。こんなに走ったのは初めてかも知れない。
「もう、無理だ。動けねぇぇぇ」
「だらしないな、君は。まぁ、少し休みたいのには同意だが」
「ねぇ、ヒナタちゃん」
ヤチヨさんが急に立ち上がり。私の目の前に立つ。
「ね、付いてきて、あたしの秘密の場所を教えてあげる」
「えっ!? ちょっとヤチヨさん!!??」
彼女はそういうとどこにそんな元気があったのか急に走り出した。
私も慌てて彼女を追うように走った。途中、後ろから男の子たちが絶句する声が聞こえた気がした。
「おまっ、嘘だろ……」
「ヤチヨ!? なんで動けるんだ……」
聞こえないふりをすることにした。
息も絶え絶えに私達のすぐ後に到着した二人は、そのまま原っぱへと倒れ込んだ。
「ごめんね。二人ともあたしのせいで」
「だったら、、、、ぜぇぜぇ」
「もう少し、、、、はぁはぁ」
もう、言葉にならないくらいに二人は疲弊しきっていた。もちろん私も。
「ヤチヨさんだけのせいじゃないです」
そうだ。私がもっと早くにメンテナンス日であることを思い出して場所を移していれば、彼らにこんな大変な思いをさせることもなかったはずなのに。
「まぁ、結果的にみんな無事だったし。いいんじゃね?」
サロス君が、何事もなかったかのようにへらへらと笑っている。
「無事って、あなたたち二人は怪我まで!!!」
そう。私を庇うために二人は何度も警備ロボの攻撃を受けていた。
「この程度、何でもねぇよ。なっ、フィリア」
「あぁ。そうだな。僕は、、、、だがな」
フィリア君は、サロス君の怪我した箇所を軽く叩いた。
「ってー。何しや、がんだ! フィリア!!」
サロス君も、それに対してお返しとばかりに、フィリア君の怪我した箇所を軽く叩いた。
「っつ! 君こそ、よくもやった、な!」
二人は、急に取っ組み合いの小さな喧嘩のようなことを始めた。
「ちょ、ちょっとふたりとも!!」
私の声も聞こえないほどに二人はヒートアップしており、既に双方とも立ち上がって戦闘態勢に移っていた。
うろたえている私の横をヤチヨさんがため息をつきながら通り過ぎ。二人の足を思いっきり踏んづけた。
「「ったぁぁぁぁ」」
二人は、痛みに悶え。その場で小さく跳ねながら痛む足を擦っていた。
「喧嘩しないの!! 喧嘩するぐらいなら、明日の勝負で決着つけなさいよ!!」
すごい。あの二人の剣幕に一切動じることなく。この場を一言で終わらせた。この私より小さな彼女のどこにそんな力があったのだろう。
私は、素直に感心してしまった。
――続く――
作:小泉太良
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