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Second memory(Sarosu)12

「なーに、そんなとこでぼーっとしてるの?」
「ピスティか……もう気は済んだのか?」
 
 突然ピスティが行きたいと駄々をこねたので、俺は付き添いで近くの海に訪れていた。

 無理矢理に連れ出された俺は、特にやることもないので静かに寄せては返す波打ち際を眺めていた。

 そう言えば、昔もこうやって海を見た日があった気がするな、、と、ガラにもなく昔のことを思い出していた。

「なぁに一人で黄昏てるのよ。こ~んな美女が水着姿で目の前にいるのよ? 今にもその肢体にむしゃぶりつきたくなる衝動みたいなものが、こう、、ムラムラ~っと湧き上がってきたりするものなんじゃないの? 健全な男の性ってやつが!」
「……少なくとも、自分からムラムラ~とかいうやつに対しては何も湧き上がらないね。俺は」
「はぁー。まーったく、可愛くないわねー。この坊やは」
「坊やは止めろって言ったろ? 子供扱いすんな!」
「そういうムキになるところが坊やなのよ~。そんじゃ、あたしもう少し遊んでくるわね」
 
 そう言って、ピスティはまた海の方へと駆けていった。

 まったく、、どっちが子供だよ……。

 それに、、海に来て一人でどうやって遊ぶというのだろうか……。夏とはいえ。もう、日も落ちてすっかり暗くなって気温も下がってしまっているというのに……。
 
 まさか、、今から泳ぐ、なーんて馬鹿なことは流石にしないだろうが。

「サロス、ちょっとこっち来てみなさいよ」
 
 ピスティが大声で俺を呼ぶ。やれやれと呆れた気持ちになるが、逆に無視でもしようものなら、、後々、面倒くさいことになるのは目に見えている。

「んで、なんだよ一体?」
「じゃーん、見てみて。立派なものでしょ?」
 
 ピスティが誇らしげに砂で作った城を見せつけてきた。……まぁ、、確かに見た目は完璧な砂の巨城だった。一人で作ったとは思えないほどに。
 
 ……ただ……いい年した女が砂の城を誇らしげに見せつけてくる。俺は、そんな滑稽さに思わず頬を緩ました。

「あっ、馬鹿にしてるな?」
「別に、、ただ俺のことは坊や扱いするくせに、こーんな子供っぽいことするんだな、、って思っただけだ」
「むー。あっ! じゃあ、、大人っぽい夏のことする?」
「なんだ、そりゃ?」
「ふっふふ。昨日、たまたま見た資料に面白いものが載っててね。試しに作ってみたら思った以上に簡単にできてしまったブツがあるのだよ~」

 資料? あの部屋にある資料なんてシスターと主に母ちゃんが趣味で集めていた大昔の風習や、嗜好品の類をまとめたもので……。

 んっ? 嗜好品?

「おいっ! ピスティ。それって―――」
「のんのん。答えは、実物を見てからのおったのしみ~。さ~て、、そろそろちょうど良い具合に暗くなって来たし、帰ろ! サロス」
 
 まったくマイペースなやつだ。
 さっきまで帰る兆しなんて微塵も見せていなかったはずなのに。 

 今、ピスティが何を考えているのかはわからないが、、あの部屋にあった資料から作ったというのなら変なモノではないだろう。

 俺は考えることを止めて、ピスティが運転するバイクの後ろに座り込んだ。

 水平線に少しずつ沈んでいく夕日をただぼんやりと見つめた。思い出すのはやはりあの頃の記憶だった。

 確か、、あの時は遊び疲れたヤチヨが寝ちまって。フィリアと交代でヤチヨを背負いながら夕日を見たんだよな……。

 その次の年は、、ヒナタも交えて……んで、また今年もかよってボヤキながら笑ってたっけ……。

 そうだ……また今年も……って、、そう、思ってたんだよな。


続く



作:小泉太良
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