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「福岡市 教師によるいじめ」でっちあげ事件報道検証 終章~デマ記事は西岡研介さんの焦りから発生したのか

「事件」を最初に報じた朝日新聞西部本社版

 この「事件」を最初に報じたのは朝日新聞西部本社版でした。福田ますみ著「でっちあげ」によると記事は次のようなものでした。

《福岡市立小学校で、40代の男性教諭が4年生の男子に、「ミッキーマウス」や「ピノキオ」と称して鼻や耳を引っ張るなどの行為を繰り返し、学級担任を外されていたことがわかった。児童の親は、家庭訪問の際、教諭に、母親の曾祖父が米国人であることを話したのを境に急に態度が変わったとしており、差別意識が背景にあると主張。学校側は「家庭訪問で『血が混じっている』など不適切な発言があった。問題になった行為との因果関係ははっきりしないが、人権意識が欠けていた」としている。
 学校側によると、問題が表面化したのは5月中旬。下校前、この児童にだけ10秒で荷物を片づけるよう命じ、できないと、「耳を引っ張る「ミッキーマウス」、鼻をつかんで振り回す「ピノキオ」、ほおを引っ張る「アンパンマン」など五つの「刑」から一つを選ばせ、実行していた。いじめは約半月続き、児童は耳が切れて膿むなどしたという。
 5月末に両親が学校側に抗議し、教頭ら5人が交代で授業に立ち会うようになったが、その後も顔をたたいていたことが判明。教諭は6月23日に担任から外された。
 児童は家庭訪問の際、担任の発言を耳にし、両親に「僕の血は汚いの」と尋ねるようになったという。両親は「二つの文化にまたがる個性を誇ってほしかったのに、教諭の言動は子どもを深いところで傷つけた」と話している。
 校長は「教諭からは『血が混じっているんですね』と言ったとしか確認できず、耳を引っ張るなどの行為との因果関係ははっきりしない。だが、その後に問題が起きており、差別と受け取られてもやむを得ない」と釈明。教諭自身は「『汚らわしい血』と言った覚えはなく、(児童に対する行為も)差別が理由ではない。ただ、自分の行動で子どもを傷つけた責任は負いたい」と話している》

福田ますみ著「でっちあげ」

 そして、この新聞記事が掲載された朝に地元テレビ局のローカルニュースが報じていたことが明らかにされています。

 この日の朝、川上は、新聞を開くより早く、テレビのローカルニュースがこの記事を取り上げているのを見て愕然とする。

福田ますみ著「でっちあげ」

完全に後追いであった週刊文春の西岡研介さんの記事

 朝日新聞西部本社版の記事と週刊文春の西岡研介さんの記事を比較すると、小学校教師がハーバライフのマルチ商法をなしていたとするデマ記事の部分以外には目新しいものはなく、週刊文春が完全に後追いであったことがわかります。西岡研介さん自身は、「鳴物入り」で移籍した週刊文春の専属記者時代について「スキャンダルを追え!『噂の眞相』トップ屋稼業」でこう述べています。西岡研介さんのこの著書は「俺はこれだけすごい人間なんだ」と自己主張する自慰行為に近いものですが、この中でこれほど弱気な記述がなされているということで、週刊文春専属記者時代の迷走が炙り出されるものとなっています。

 話を私の「週刊文春』記者時代に戻そう。前述の調活キャンペーンで『文春』デビューをなんとか果たした私は、『噂眞』にいた頃と同様に、いやそれ以上に腰を据えて、政財官界のスキャンダルを書きまくった。だが、それらの記事は特に『週刊文春』の右トップや左からトップを飾ることもあったが、残念ながら「噂眞』時代のような"特大級"のスクープを放つことはなかなかできなかった。

西岡研介著「スキャンダルを追え!『噂の眞相』トップ屋稼業」

 西岡研介さんの立場に立ってみると、「噂の眞相」で名を上げて大きな期待とともに週刊文春に移籍したにもかかわらず、期待されるほどのスクープを放つことができていない状況の中、朝日新聞西部本社によって「特オチ」して、朝日新聞西部本社のように小学校教師に対する取材も成功しなかったわけです。その焦りは筆にあらわれ、ろくな取材がなされていないのにもかかわらず断定的に記事を書き、「特オチ」を巻き返そうと表現が過激になっていったのではないでしょうか。その結果、権力者ですらない市井の小学校教師に対し、まともな取材を行うこともできないまま「殺人教師」と決めつける記事を書くことになったのかもしれません。ただ、その記事には真実がないばかりでなく、誹謗中傷された者が自ら死を選んでも不思議ではないほどのものでした。それに対するまともな謝罪すら行っていない週刊文春と西岡研介さんを決して許してはいけないと思います。