【育児コラム】言葉の種を育てる:心の扉を開ける言葉の選び方
はじめに
「Because I told you so!」
私が声かけにより深く興味を持ち始めたのは、長男のプリスクールの見学に行った際のLead Teacher(担任の先生)の一言でした。
日々、子どもと接していると、色々なことをジャグリングしながら回答が雑になってしまったり、疲れていて適当な返事をしてしまったりすることがあります。
「Because I told you so!」と教室に響き渡る声を聞いて、私も気を付けないと強く思ったのを、昨日のことのように覚えています。
今回は、私が日常の中で気づいた「押し付け」や「感情の否定」の例をもとに、学びを書き示してみました。
例1:「言う通りにして」は成長を止める
冒頭で記載した「Because I told you so!」の一言。これはプリスクールでのサークルタイムの時間の一場面でした。生徒の一人が「どうして座らないといけないの?」と質問したとき、先生は「Because I told you so!」と即答。
「なぜ?」という疑問には成長のチャンスが隠れています。これを「私が言ったから」ではなく、少し理由を説明するだけで、子どもが自分で考え、想像力を働かせる力を育むことができます。
対話のコツ:
「みんなが話を聞きやすくなるから座るんだよ」といった、簡単な理由を添えるだけで、子どもは納得しやすくなり、成長につながる経験を積むことができます。
例2:楽しさは人それぞれ
先日、姪が我が家に遊びに来て、私が彼女に「これから行く場所は楽しいところだよ」と言った際、夫がすかさず「楽しい場所かどうかは彼女が決めることだね」と一言。
言われてみると、確かにその通り。
その瞬間、私は自分が彼女の感情を勝手に決めつけていたことに気が付きました。親として子どもに「楽しいから」と行動を促進する傾向がありますが、実際には子ども自身がどう感じるかが大切です。
対話のコツ:
「ここに行くのどう思う?」「楽しそうかな?」などと問いかけることで、子どもが自分の感情を大切にし、自分の意見を持つことを促すことができます。
例3:感情を否定すると子どもは戸惑う
これは私が子どもの頃の話です。
遊びや旅行から帰ってきた際に「疲れた」と言うと、「遊んできたのに、なんで疲れてるの?」と大人から言われたことをよく覚えています。
この言葉を聞いて、「遊びに連れて行ってもらったときには、疲れたと言ってはいけないのかな?」と自分の気持ちの持ちようが間違っているかのように感じたことを覚えています。
本人が感じていることに「正しい」「間違い」はありません。感情を否定するのではなく、そのまま受け止めてあげることが大切です。
対話のコツ:
幼かった私が周りの大人に言って欲しかったのは、「楽しかったね。でも疲れたね。一緒にゆっくり休もうか」といった言葉だったののかもしれません。
「いっぱい遊んで疲れちゃったんだね」と共感してあげるだけで、子どもは自分の感情を素直に表現できるようになります。共感を通じて、子どもの感情に寄り添うことで安心感を与えることができます。
今振り返ると、子どもであった私も、もう少し自分の気持ちを伝えたり、歩み寄ることができたかもしれません。でも、当時は自分の感情をどう表現すればいいのかが分からなかったのです。
この経験を通じて、子どもたちが同じように、私が気が付かない間に傷ついてしまうことがないようにと願うようになりました。「You do not get what you do not ask for」という価値観は、日々のコミュニケーションの中でとても大切だと感じています。このテーマについては、こちらの記事でさらに詳しく触れていますので、ぜひご覧ください。
終わりに
日々の忙しい生活の中で、親としては子どもの行動や感情にすぐに反応してしまうことは避けられないかもしれません。あなたも私も人間ですから、疲れていたり、忙しさに追われていたりする中で、つい雑な対応をしてしまうこともあるでしょう。
しかし、心に余裕がある時こそ、意識して立ち止まり、彼らの気持ちに丁寧に耳を傾けることが大切です。意識して対話を丁寧にすることが、子どもの心に安心感を与え、成長を支える大きな一歩となります。
これらはほんの一部の例にすぎません。日常の中で、私たちは知らず知らずのうちにもっとたくさんの場面で、子どもの感情や経験に影響を与えているかもしれません。
次回、子どもと会話するときは、ちょっとしたフレーズを工夫してみませんか?「なぜ?」と聞かれたときはしっかり理由を伝えたり、「どう感じた?」と問いかけてみるなど。小さなコミュニケーションの工夫が、大きな成長の一歩になるはずです。