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日弁連派遣留学をすすめる理由(その1:概要)

はじめに

突然ですが、皆様――特に日弁連会員の皆様――は日弁連による派遣留学制度についてご存じでしょうか。「なにそれ」「留学って言っても客員研究員だけでしょ」「自分で行けばよくない?」そんな声が聞こえてきます。

基本的にはドメスティックな活動が多い日弁連ですが、海外のロースクールに留学生を派遣する制度を長年実施しています。この制度には様々なメリットが存在するにもかかわらず、今一つ、浸透していないような印象があります。そこで、この制度を用いて2024年8月からイリノイ大学アーバナシャンペーン校LLMに留学している筆者が、この制度を用いた留学をすすめる理由を余すところなくお伝えします。

本稿では、留学制度自体の概要やそのメリット・デメリットを述べます。
この記事の作成に当たって日弁連からの報酬は1円ももらっていません!!!


1 日弁連による派遣留学制度とは

日弁連のウェブサイトやメーリスといった広報活動を通して聞いたことがある人もいるかもしれませんが、この制度は正式名称を「日弁連海外ロースクール推薦留学制度」といい、「グローバル化・国際化の中で、会員が、基本的人権を擁護し社会正義を実現するという使命に基づき、効果的に、公益活動を行うとともに活動領域を拡充できるよう、公益活動に取り組む会員を対象に、日弁連が協定を締結している海外のロースクールに会員を推薦・派遣」する制度だそうです。
上記を見ると何やら難しそうな雰囲気ですね、、、要するに、「協定を締結している海外の大学に、学生又は客員研究員として日弁連からの推薦を受けて留
学できる」というものです!
日弁連の公式な情報は以下をご参照ください。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/member/studyabroad.html

2 この制度のメリット

弁護士が所属事務所の支援を受けて、あるいは私費で海外留学をすることは珍しくない今日、あえて上記制度を用いる主なメリットは次のとおりです(あくまでも、事務所又は個人としての留学とは異なる追加的な恩恵のみです。)。

  • 日弁連や大学から経済的な援助を受けられる。

  • 日弁連から推薦を受けているため大学の入学準備が少し楽。

  • 日弁連から派遣されていることにより、留学中に外部とのコネクションを作りやすい。

それぞれについては追って各論を投稿したいですが、イリノイ大学アーバナシャンペーン校のLLMに留学中の私が既に得ているものとして、1点目について34500ドル(執筆時点のレートで約500万円)の奨学金、2点目について日弁連会長名の推薦状や出願書類についての日弁連事務局による支援、といったことが挙げられます。
なお、筆者自身はLLMに在籍しているのでもらっていませんが、客員研究員としての留学については、留学先を問わず、300万円の補助を受けられることになっています(2024年以降300万円に増額。前年までは100万円のみ。)。
円安に絶望し、植田総裁を応援し続ける近時の在外日本人の経済状況において、1点目のメリットは計り知れません。また、2点目についても、通常は大学教授や事務所のボスに依頼する推薦状を日弁連会長の名前で作成できるので、大学教授とのパイプがない方や事務所にボス的存在がいない方にとってメリットとなります。日弁連事務局のサポートも周りに英語の得意な人がいない方にとってはありがたいものです。

3 この制度のデメリット

逆に、一応考え得るデメリットも挙げておくと次のとおりです。

  • 留学先が限られている。

  • 大学出願とは別に応募の手続が必要であり、留学の前年8月には日弁連に書類を提出する必要がある。

  • 募集人数が限られており、選考が必要となる。

  • 留学期間中に弁護士資格を停止できない。

1点目について、2024年8月時点で留学先は以下に限られています。

ニューヨーク大学(客員研究員1名)
カリフォルニア大学バークレー校(客員研究員1名)
イリノイ大学アーバナシャンペーン校(客員研究員1~2名、LLM1~2名)
エセックス大学(客員研究員1名、LLM1名)
シンガポール国立大学(LLM1名)

そもそも選択肢となるロースクール自体上記の5つのみであり、そのうち正規の学生となるLLMコース(いわゆる法学修士号)は3つのみであり、ニューヨークBARの受験資格を得られる米国でのLLMコースはイリノイ大学のみです。したがって、上記に掲げられていない大学やコースに留学したい方にとって、この制度は適切ではありません。

2点目について――これが2024年8月下旬という時期に急遽この記事を執筆している理由でもありますが――留学開始の約1年前には日弁連への応募書類を提出する必要があります。現在募集している2025年度留学の書類提出期限は2024年8月30日です。したがって、この記事を読んで少しでも興味を持ったのであれば、直ちに応募してみましょう!(応募手続についても別稿を予定しています。)。一人でも応募者が増えると嬉しい限りです。

3点目について、当然ではありますが、派遣に際しては日弁連による一定の審査を受けることが必要となります。枠も限られているため、応募状況や審査内容次第で落選することも当然あります。しかし、身も蓋もないことを言ってしまうと、この制度は現時点で残念ながらあまり人気がありません(※筆者の個人的見解です)!!!また、そもそも応募者が弁護士に限定されているので、フルブライトといった外部の留学制度に比して、審査を通る可能性は圧倒的に高いといえます。

4点目について、一般的に、留学に行く弁護士の中には弁護士会費を節約するために弁護士資格をいったん停止する人もいます。しかし、この制度の利用は会員であることが前提となるので、留学期間中に資格を維持することが必要となります。

上記のうち、2点目3点目は応募の障害となるようなデメリットではないでしょう。4点目についても、経済的なメリットに照らせば大きな問題ではありません(客員研究員への補助が100万円の時代だとどうかなという感じはありますが、今年から300万円に増額されたのでかなり緩和されたといえます。)。
結局、本制度を用いることによる実質的な問題点は1点目のみと思われます。こればかりはその後のキャリア、金銭的状況、家族の暮らし等が関わるので難しいところですが、少なくとも、留学先に挙げられた大学はいずれも名門といってよい大学であり、弁護士の留学先として恥ずかしくないものです。

4 応募を急げ!(2024年8月30日締切)

2024年の応募締切が差し迫っているため、まずはこの概要のみを投稿します。詳細については日弁連ウェブサイトをご覧ください。何ならとりあえず応募してみて、後から撤回でもよいと思います。
応募締切を過ぎてしまうとどうしようもないので、まずは応募を急げ!

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