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【授業のためのICT入門】高校生に求められるITリテラシー

今回は少々テイストの違う話です。

この春、我が家の高校2年生の娘の学校(県立高校)から、ノートPCを各自で用意するようにと連絡が入りました。私の住む県では、小中学校が1人1台タブレットPCを配布されるのとは別に、高校生は基本的に各家庭で(学校が一括したとしても)購入ということになっているようです。

おすすめのPCがいくつか紹介されていましたが、値段がだいたい3万円程度であまり良いスペックとは言えません。おすすめのPCでなくてもよいのですが、
・Googleのアプリが使えること
・ハードウエアのキーボードがついていること
・Wi-Fi対応であること
・タッチパネルであること
という学校指定の基準と、やはり他の人とOSは合わせた方がよいだろうという観点で考えると、どうしても種類は絞られてしまいます。

私は仕事柄、安いパソコンを買ってすぐに使えなくなってしまう例を見ていますから、子どもに買うとしたら最低でもストレスなく操作ができる程度のものをと思っていましたので、その選択肢から選ぶことがどうしてもできませんでした。

一番の問題点はタッチパネルです。これをWindowsマシンで実装しているものは値段が一気に高くなるのです。結局、選択肢の中から一番スペックの良いタブレットPCを選んで購入という形になりました。

こんな事情で買ったのに、娘はちっとも学校に持っていきません。授業で使っているか聞いても、答えはNO。たまに調べるときに使う程度なのだそうです。私は我慢できず、三者面談のとき担任の先生に、「この前購入したノートPCは、今後授業でどのように使われるのですか?」と質問をしてしまいました。さあ、どういう答えが返ってきたでしょうか。

「自分の思考を深めるため、情報の検索を行う」「プログラミング的思考学習に使う」「デジタル教材で学習する」「オンライン授業」などなど、想像されたかもしれません。しかし、正解は「ペーパーレスの実現」と、「タイピング」「Word・Excelが最低使えるように練習する」ということでした。ちょっと耳を疑いました。これって、GIGAスクール構想のための購入ではなかったの?と。

担任の先生の説明は続きます。スマホのフリック入力に慣れているため、いわゆる「タイピング」ができない生徒が多く、また長い文章が書けない。大学に入るとWordやExcelを使ってレポートを書かなければならないのに、それができない。だから、いまのうちに慣れるのですと。ああ、それならこのスペックで十分なのですね、と納得しました。

文部科学省が示した学習指導要領「生きる力」、高等学校学習指導要領解説の「情報」の教科を中心として、高校生が身につけるべき情報活用能力を整理すると、
「情報活用の実践力」
「情報の科学的な理解」
「情報社会に参画する態度」
の3点になります。

「情報活用の実践力」とは、課題や目的に応じた情報手段を適切に活用し、必要な情報を自らが収集して判断、処理をし、受け手の状況などを想定したうえで発信・伝達できる能力のことです。「情報の科学的な理解」とは、情報手段の特性を理解し、情報を適切に扱うための基礎的な理論や方法を理解すること、「情報社会に参画する態度」とは、社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や影響を理解し、情報モラルの必要性や責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度のことになります。

これらの能力をもって高校を卒業することが望まれている中で、「タイピング」や「ソフトウエアの操作」から始めなければならいという現実を、私たちは正面から受け止めなければならないのです。

日本の若者のパソコンスキルは、他国と比較すると驚くほど低いといわれています。それはコンピューターを使う必要に迫られていなかったからでしょう。家庭でのパソコンの所持率は低く、基本的なスキルが身についていないことがよくわかります。

ですが、ここで止まっているわけにはいきません。たとえ少しずつでもITリテラシーの習得に向けて進み、並行して「情報活用」能力を身につけるにはどのような形の授業が望ましいのか、小中学校の子どもたちよりもよりタイトなスケジュールで進めていかなければならないのが、高校でのICT教育なのだと思います。

幸い機材の操作などについて、理屈の理解も含めて吸収が早いのもこの世代です。きっかけさえあれば一気に習得が進むと思われます。生徒たちが卒業後、大学生、社会人として情報社会を生き抜くために何を身につけたらよいのか、そのことを見据えたこのきっかけ作りが今後の課題になるのでしょう。

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現在、「教育」が「IT」でどのように変化するのかを定点観測するwebサイト【koedo】にも記事を掲載中です。

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