【授業のためのICT入門】「放課後子ども教室」で見つけたオンライン講座の可能性
先日、地域ボランティアコーディネーターを務めている地元の小学校で、久しぶりに「放課後子ども教室」を実施しました。放課後子ども教室とは、文部科学省と厚生労働省が2018年に策定した「新・放課後子ども総合プラン」事業の一環で、共働き家庭等の「小1の壁」や「待機児童」の問題を解消するとともに、すべての児童が放課後を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行えるようにすることを目的としています。
ただ、実際は自治体によってかなり差が出てきているのが実情です。私の住む市では子どもたちの体験に重点を置いているので、市内各校に放課後子ども教室事業のコーディネーターを配置し、それぞれが学校ごとに事業内容を考えて実施するという形になっています。ですがこの方法ではコーディネーターのスキル(人脈や企画力も含めて)に依存してしまううえに開催数が大幅に少なくなり、働く保護者への協力という点ではほとんど機能していません。子どもたちの体験活動と両立させるということは難しいのです。そのうえ今回の新型コロナウイルス感染防止という意味で、昨年1年間は放課後子ども教室を実施することができませんでした。
今年も後半に入り、なんとかしなければと考えて企画をしたのが、講座をオンラインでも受講できるようなシステムです。いきなり全部、ということはできませんから、基本的には小学校の教室で対面の講座を行い、希望者はオンラインで自宅から参加できる、しかも土曜日に実施することで保護者の人が家にいるという条件をつけました。つまり、実験的な開催です。
今回の目的は2つ。ひとつは、今後どのような講座ならばオンラインでの受講が可能になるのか、内容や形式を検討すること、もうひとつは、オンラインの講座を実施することで複数の小学校が一つの講座を共有することができないか検討することでした。
1つめの目的のため、まずはどのような講座にするかを考えました。運動系は当然できません。パソコン系も、本当にできているかどうかの確認ができないことと、パソコンの画面をどう共有するか等の技術的な問題が現状ではクリアできないということから外しました。結局、手芸や工作といった形の内容ならば可能であろうということになり、スライムづくりを行うことにしました。
次の問題はどう配信するかです。ZoomやGoogle Meetなどの対話ができる形も考えましたが、別に双方向のコミュニケーションは必要ないのではないかという結論になり、YouTubeでの限定配信としました。しかしここで問題が。私が関わっている学校はChromebookを使っているのですが、これはGoogleのアカウントと紐づけられているうえに、学校のセキュリティ上、アカウントの追加や変更ができない状態でした。
放課後子ども教室は教育委員会の主催であって、学校単体の主催ではありません。学校のネットワークを使うのですが(誰がコーディネーターになってもできるようにするためには、できる限り個人の所有物で行うことを避けたかったのです)、先生方のアカウントを使うことができません。今回は相談して、普段オンライン授業のときに使用しているチャンネルのアカウントを使わせていただくことになりましたが、今後は教育委員会と相談して放課後子ども教室用のアカウントなどを発行してもらえるよう、要請をしていくことになりました。
当日オンライン受講希望の児童には、スライムのキットと配信URLを渡しました。講座中は基本的に全体の流れを映し、要所要所で教室の進行とは別に手元のアップなどを撮影して配信しました。そうすることで、オンライン受講する人が手先の細かな作業などもわかるようにしたのです。
2つめの目的については、他校のコーディネーターの中で希望する方にURLを渡して参加してもらいました。この方法がうまくいけば、例えば1校は学校内で実際の講座を実施し、他の学校は教室でその様子を視聴しながら参加。講師は一人でも同時に講座を開催することができるようになります。コーディネーターは当日の子どもたちの見守りをすればよいだけになるので、少し作業が楽になるのです。こうすることで全体の負担を減らし、学校ごとに偏っていた実施内容も均等になってきます。
オンラインの導入によって「講座内容の充実」と「人手不足の解消」の両方を補う可能性を見出すことができた今回の実験は、大変有意義なものでした。すべてのものをオンラインにする必要はありませんし、講座内容に向き不向きはあります。しかし選択肢が増えたということは、そのぶん放課後子ども教室の継続性の向上にもつながるわけですから、積極的に考えていけるよう、周りにも働きかけようと思いました。
オンラインは学校の授業だけでなく、地域活動の幅を広げるチャンスにもなります。今後も様々な実験を行い、新・放課後子どもプランの目的に近づけるように検討していきたいと感じられる体験でした。
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