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【親になるということ】社会的責任をとるということ

前回(娘に言われたひとこと)に続き、18歳成人の話です。

正式な法律名は「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)」というものだそうですが、

「成年年齢の見直しは、明治9年の太政官布告以来、約140年ぶりであり、18歳、19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられます。(法務省サイトより)」

法務省:民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について

という説明の通り、成人することで自分の人生を自分でつくりあげていく機会が早くなった…というようにとらえます。結婚もできる、取得できる資格の種類が増える、帰化や、性別の変更ができるなど、「自分の人生」を決めることができるのは大変すばらしいことですし、喜ぶべきことだと思います。

しかし同時に、さまざまな「契約」もできるようになってしまいます。

たとえば、

  • 一人暮らしの賃貸借契約

  • 携帯電話の契約

  • 雇用契約

  • クレジットカードの作成

  • 示談(交通事故など)

などがあります。

このためか、法務省が作成しているパンフレットには「消費者ホットライン」や「法テラス」の紹介もされています。

民法改正 成年年齢の引き下げ ~若者が生き生きと活躍する社会へ~

契約ができるということは、つまり責任が生じるということです。

  • 不法行為責任
    資力の有無に関わらず、18歳・19歳の不法行為については自らが責任を取らなければならないことになりました。

  • 契約責任
    年齢を理由とした契約の取り消しができなくなりました。

このことを「親として」はどう思われるでしょうか。

私は、この話を子ども達にするときには「成人になったらいろいろな契約ができるけれど、契約ができるということは、何かあったら自分で責任をとらなければならないということです」と話します。

しかし、保護者の方にお話しするときには、「もう、親が代わりに責任を取ってあげられなくなるのです」と伝えます。

このコラムでも何回かお話していますが、私たちは子どもができるだけつらい思い、嫌な思いをしないようにと考えて子育てをしています。しかし、私は自分の娘が18歳になり、いざ「社会的責任を取る」年齢になったと考えたとき、その責任を取ることができる能力を身につけていなければ、もっとつらい思いをさせることになってしまうのだということに気が付きました。そして、それがいかに「怖い」ことなのかということを痛感しました。

別にいま、彼女が何かを問われているわけではないのですが、想像しただけで不安なのです。心の準備ができていなかった…という後悔をしています。

「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)」は、2019年に可決され、2022年(つまり今年)から施行されました。2019年、私の娘は15歳です。コロナがはじまり、高校の入学式に行けず、まったく想定しない学生生活を送る娘との生活の中で、「あと3年で成人」の意識はまったく持てませんでした。だから今年、大いに焦っているのです。

いま、皆さんのお子さんが何歳かはそれぞれ違うと思いますが、「たまに」でよいので、「あと何年で成人になるのか」を想像してみてください。成人になったとき、権利とともに義務が生じ、責任が生じることを受け入れられるだけの人間に育てるために、「今は」何をするべきなのかを考えてみてください。

そう考えると、「子どもの目の前にある小石を取り除いて、転ばないように歩かせる」という子育ての仕方は、子どもが自分で生きていく力をつける機会を奪っていくことになってしまうのかなと思います。

できるだけ小さい失敗をたくさん経験させることで判断力がつき、リカバリの方法を知り、落ち込まず、落ち着いて行動できるようになります。

特に対人関係の失敗は年を取ってからではこじれることが多いし、問題が大きくなりがちです。

ぜひ、小さいうちに、小さいトラブルを経験し、そして仲直りの方法を自分でみつけられるようになればいいと思います。

あらためて、子育ての目標は何なのか、どこまでいけば私たちの子育てが終わるのかを考えさせられる出来事でした。どうか皆さんが私のような焦りや後悔を持たずに、笑顔でお子様方の成人をお祝いできるとよいなと思います。

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