第4話:ママチャリで大阪へ行く①〜静岡突入編〜
今回は少し昔の話をしよう。
大学4年の秋、
ぽブ男が自転車で
東京から大阪へ行った話だ。
それもただの自転車ではない。
ママチャリでだ。
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「ダイエット企画ですか?」
ちがう。
ダイエットなら
もっと効果的な方法がある。
実際、
このチャレンジの前後で
体重はさほど変わっていない。
ではなぜそんなことをしたのか?
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なんだか面白そうだったからである。
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「え?バカなの?」
と思った、そこのあなた。
失笑だけはやめていただきたい。
大学を卒業する前に
ちょっと学生らしく
将来まで語り継げるネタを
作りたかったのだ。
ぜひ
ドラえもんがのび太くんを見るような
温かい気持ちで受け入れてほしい。
そんなわけで、
これからママチャリで大阪へ
行こうかどうしようか
迷っている方へ(いないか)
ぽブ男の大学最後のチャレンジの模様を
お届けしたいと思う。
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2015年11月。
ぽブ男はママチャリで大阪へ
行くことを決めた。
相棒は高校一年の時
通学用に買った黒のママチャリ
現役7年目の大ベテランだ。
高校3年間、
片道40分の道のりを
一緒に往復していた。
大学に入ってからは
ほとんど使っていなかったので
ボディは全体的にサビサビで
ギアは3段階のうち2から動かない。
タイヤの溝はほぼなくなって
ツルツルの状態である。
若干ホイールも歪んでいるようで
一漕ぎごとに後輪から
キャシーン
キャシーン
と軽快な音が鳴っている。
もうそろそろ限界を感じる
状態である。
ぽブ男はこの大阪旅行を
相棒の引退試合と決めた。
大阪にたどり着くのが先か
相棒がぶっ壊れるのが先か
の勝負である。
※さすがにギアが変わらないのはやばいと思い、出発当日に直してもらった。
東京国立市の自宅から
新大阪駅まで約500キロ
戦いの火蓋が切って落とされた。
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ちなみに、
このチャレンジには
同伴者がいる。
大学の直属の後輩だ。
彼の個人情報保護のため、
ここでは彼のことを「バラ男」と
呼ぶことにしよう。
チャレンジの決行を決めた時、
たまたま近くにいたので
一緒に連れて行くことにした。
今思えば、迷惑な先輩である。
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自宅をママチャリで出発し、
東京・八王子の大学でバラ男と合流。
初日の目的地は
約150キロ先の「静岡駅」
2日目には「名古屋駅」に到着し
3日目に「新大阪駅」にたどり着く
という算段である。
1日目の正午、
バラ男とともに
いざ静岡駅へ!
ママチャリのぽブ男と
クロスバイクのバラ男が
颯爽と神奈川を駆け抜ける。
国道246号線を
ひたすらに進んだ。
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開始から2時間。
もうすでに帰りたくなってきた。
もはや1人だったら、帰っていたかもしれない。
しかし、
後輩を無理矢理連れてきた手前
そんなことは言えない。
くそ、なぜ着いてきたんだバラ男。
そんなことを考えながら自転車は進む。
途中
国道沿いの歩道に男性ものの
革靴が並べて置いてあったり
「パーマ屋さん」という名前の
パーマ屋さんがあったり
世の中の小さなツッコミどころを
見つけては写真を撮りながら進んだ。
おおよそ1時間で10キロちょっと
のペースだったろう。
開始から5時間。
ついに神奈川の終わりが見えてきた。
アウトレットでお馴染みの
「御殿場」である。
標識には
「御殿場まで10キロ」
と書いてある。
それならあと1時間ちょっとで
静岡入りだ!と2人は意気込んだ。
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1時間後、
「御殿場まで5キロ」
うそだ!!
絶対うそだ!!
さっきまでの半分のペースである。
なぜそんなにペースが落ちてしまったのかといえば、そう。
登り坂である。
御殿場まではゆる〜い登り坂が
ひたすらに続いていた。
恐怖である。
終わりの見えない登り坂ほど
怖いものはないのだと、
はじめて理解した。
寝坊して上司に怒られるなんて
かわいいもんである。
ママチャリを漕ぎ続けても
近づけない御殿場に挑むくらいなら
喜んで上司に怒られよう。
結局、御殿場にたどり着いたところで
スタートから7時間が経っていた。
あたりもすっかり暗くなってきたが、
目的地の静岡駅まではまだ60キロ以上ある。
初日から予定を崩すわけにはいかない。
ぽブ男とバラ男は必死で自転車を漕いだ。
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さらに1時間後
なんだか道の様子がおかしい。
周囲には木が目立ち、
アスファルトよりも土の割合が多くなってきた。
だんだん険しくなっている気がする。
道案内は自転車用のナビがなかったので
Googleマップさんの徒歩経路を使っていた。
Googleさんを疑うわけではないが、
さすがに不安になってきた。
一旦自転車を止め、バラ男とともにルートの確認をした。
うん。現在地から目的地までおおむね最短距離を結んでいる。
そこまで大きな問題はなさそうである。
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うん?
よくよく見ると経路上に
「愛鷹山」と書いてある。
どうやらGoogleさんは僕らに登山をさせたいらしい。
バカなのだろうか。
こんなことを言ったら天下のGoogleさんから怒られるかもしれない。
しかし、どうしてもこれだけは
声を大にして言わせてほしい。
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ママチャリで山は越えられねぇよ!
舗装された道路ならまだしも
ガチの山道はさすがに厳しい。
なんでも最短距離で進めばいいのかといえば
そうではない。
急がば回れである。
ぽブ男はまたひとつ。
人生で大切なことを学んだ。
結局、少し遠回りをすることにした。
開始から13時間が経った23時、
さすがにここまでかと断念。
1日目は静岡県富士市
約120キロ進んだところで
幕を下ろした。
明日は朝一から飛ばして
名古屋駅までがんばろう!
と意気込むぽブ男。
しかし、
この後に見舞われる悲劇、
そして静岡の恐怖を
彼はまだ知らない。
2日目(第5話)に続く。
面白かったなーとか、もっと続きが読みたいなーとか、思っていただけた稀有なあなた。あなたのサポートがぽブ男の生きる力となります。なにとぞ。