見出し画像

多重録音と楽器

楽器が好き

中学生の時にギターを手にしたときから、「音を出すこと」そのものに魅了された。

弦を弾くと、音が鳴る。
弦を押さえて弾くと、音階やコードが鳴る。

生楽器は変なことをするといろんな不思議な音が出る。
弦の1/2、1/3、1/4の場所をそっと触れて弾くと、綺麗な音(ハーモニックス)が出る。
手の側面で弦を押さえて弾くと、少し押さえたような音(ミュート音)が出る。
コード表にない押さえ方をすると、また変わったコードが鳴る。
メロディとコードを一緒に弾いてもいい。

楽器の弾き方には実はルールなんてなくて、遊べば遊ぶほど違う音が出てくる。

あるのは、気持ちいい音か、そうでないか、だけ。

音を重ねる

マイク・オールドフィールドという人の「チューブラーベルズ」というアルバムがある。

この美しいアルバムは、マイクがひとりで全ての楽器を演奏して、それを多重録音して作った。
その話を聞いて、自分もひとりで多重録音をしたくなった。

マルチトラックレコーダーなんて手に入らなかったから、英会話学習用LLレコーダーとカセットテープデッキを繋げて、ギターを重ね録りしていく。
自分のギター音にオクターブ上の音を重ねた時に、感動した。

なんて美しいんだろう。

一人でギターを弾いている時よりも何倍も美しい。
響く。まるで潮騒のように。
伴奏とメロディが重ねられる。
ハーモニーが生まれる。

今までさみしかった独奏だったのが、生き生きする。
もっと自由に。もっと色んな可能性に。
色を重ねていくように、音を重ねていく楽しさに心を奪われた。

カセットテープに拙い音でひとり多重録音してひたすら遊んだ。
まだ、CDの無い時代の話だ。

DTMとの出会い

自分はバンドに参加したことがない。
ギターが下手なこともさることながら、何よりも音楽の趣味が合う人と出会ったことがない。

雑誌のメンバー募集に「プログレッシブ・フォーク・ロックを自作して多重録音したい」なんて言っても付き合ってくれる人はいなかった。

そのとき、黎明期のDTMに出会った。

あの頃のDTM環境

憧れの一人多重録音ができるようになった。
その頃はまだギターの録音とシンセ音を重ねるのは難しかったが、とにかく一人で曲を生み出せるようになった。

そして今

あれから数十年。
いまでも多重録音をしている。

今のDTM環境

今使っているDAW(Logic Pro X)は、自分にとっては作曲用ツール、というよりは多重録音のテープレコーダーだ。

シンセを弾いて録音して
ドラム音源を弾いて重ね録りして
ベースを弾いて、重ね録りして
ギターを重ねて録音して
ときにはボカロにも歌わせて…

本物のようなピアノの音も、オーケストラの音も使えるようになったけど、基本は変わらない。

弾いて、重ねるだけ。

「作曲」という厳かなものじゃない。
気持ちいいから音を重ねている。

楽器を弾いて、その音を重ね録りする。
そうして色を重ねるように音楽を作っていく。
ただそれだけ。 それだけなのに楽しい。

Silent Night

そうして、先日も曲が生まれた。
昔ながらのクリスマスキャロル、Silent Night に好き勝手に別の音を多重録音した。
懐かしい曲がふっと少し不思議な雰囲気に変わった。

ただ音を重ねるだけでも、やっぱり楽しい。

長文をお読みいただき、どうもありがとうございました



いいなと思ったら応援しよう!