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お作法は守るもの? 破るもの? :FractalDesign Torrent フルタワーケース:後編

全世界最大420億人の情熱大陸な皆様、こんにちは。「最大」とか「情熱大陸」とかもう完全にネタ切れ感満載なワード使ってる時点でダメかもしれません。仕方ないでしょ後編なんだから! 香月です。

さて、そんなわけで今回は8月末に新発売となったFractal Designのフルタワーケース「Torrent」のレビュー後半戦。前回はまさかの準備段階までで文字数が爆発した為、今回は実際の組み込みからです。

前編はこちら:

組む前にコンポーネントの整理と配置の確認を:ファンフレームの選定からスタート

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(デカいケースによくある「多機能フレーム」的なアレ)

「組み込みからです」とか大見得切った割に組み込み前からのネタで大変恐縮でもなんでもないんですが、今回のケースを使用するにあたって重要になってくるであろう部分を紹介。各種冷却ファンや、最近であれば水冷のラジエター等を固定するフレーム類です。上の写真はケース底面に固定するフレームで、120mm、140mm、180mmの3種類のスリットが切ってあります。

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(びみょーに一応刻印アリ)

固定としては奥側、ケース正面から見て右パネル側のスリットへ、フレーム側3箇所にある突起をはめ込んで、手前を倒してハンドスクリューで固定、という流れなのですが、このフレームをケースに固定したままではファンのネジ留め等が行えない為、一旦ガバッと外すことになります。尚、後述する事になりますが、先に記しておくとファンの固定順番は基本的に「底面→前面」の順番になります。これは標準状態(フロント180mm、ボトム140mm)でも同様で、理由としては「先にフロントファンを固定すると、このフレームが干渉して取り付けが出来ない」から。そんなわけで、とりあえずドンガラの状態でファン配置をある程度決めておく必要があります。

今回はフロントに水冷ラジエターを置くため、底面の140mmファン3発を180mm2発(いずれも標準付属)に置き換えた上で、余剰することになる140mmのうち一発をリアパネルの排気ファンとして使用する事にしました。

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(フロントパネル上下に取り付けられている180mmファンブラケット)

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(上・180mmファン使用時(標準)、下・120/140mmファン使用時)

フロント側も同様に使用するファンの選定が必要になりますが、180mmファンを使用しないなら確実に取り外す事になるのは標準で取り付けられているブラケット。他サイズのファンには流用できない形状で、かつ固定フレームが干渉する部分になる為、180mmファンを使用しない場合は不要なパーツとなります。この点はPCのコンポーネント全体を見渡して決めることになりますが、今回は先の通り、フロントに水冷ラジエターを搭載するので、上下ともブラケットを取り外し。120/140mmファンを固定する別梱包のブラケットに交換となります。

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(最小120mmまでのファンを3本まで搭載可能なブラケット)

こちらも底面のフレーム同様、先にファンやラジエターをブラケットに固定してから、ケース本体に取り付ける事になります。2枚並べた写真の下に、横並びにビス穴が空いていますが、ここと、そのすぐ右上にある爪でケース固定時に位置を調整して120mmと140mmを使い分けるタイプで、先にフレームにファンを組み付けておけば、基本的には黙ってはめればそのまま装着可能なように工夫されています。アングルがついていますが、この飛び出しが「ケース内側」、つまり後ろ側に来ることになるので、以下のように底面側のフレームと干渉します。

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(横斜めでも縦斜めでも入りません残念でした)

このようにどうあがいても干渉、という内部設計の為、順序は確実に守らなければいけない部分です。欲を言えば、左パネル側下部のフレームを底面フラットな位置まで削ってくれていれば、横からスライドさせるようにボトムファンのフレームを挿入できたのになぁ、と思うのはこの場面だけではないのです。

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(180mmファン移設完了。拡張スロット最下段とのクリアランスがこの状態ということは……?)

そんなわけで、とりあえず最初に置いておく必要があるボトムファンの取り付けが完了。140mmファンよりも厚みがある180mmという事で、リアの拡張スロット最下段からはほぼゼロクリアランス。実運用上から行くと最下段は使えないものと考えたほうが確実です。もっとも、140mmファンであれば相応にスペースは出来る為、1スロットタイプのボードであればそちらを選択するのが良いでしょう。そして、こうなるという事は……。

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(フロント・ボトムそれぞれのダストフィルター)

ちょうど近接した位置にあるものという事で、本製品に取り付けられているダストフィルターがこの2点。フロントはパネル裏側とファンの間、ボトムはまんま底面部分となっており、取り外しはフロントがパネル脱着、ボトムがケースフロント方向へ引き出しと、双方ともツールフリー。ボトムのフィルターはケース「リア側」へ引き出すタイプが何故か多い中、本製品はフロント側に引き出す形の為、PCを壁際などに寄せて置いていても、フロント部分にスペースがあれば簡単に手入れが出来ます。欲を言えば中央でヒンジをつけて折り曲げられるようにしてくれると、フィルターの長さの半分だけフロント側に余裕があれば引き出せる(半分引き出して折り曲げて、残り半分引き出して)ようになるので、今後に期待です。

M/Bボトム側端子ケーブル、ファンケーブルの配線が「見えない隙間を使え」クラスに凶暴化

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(ケースフロントパネルの配線を引き込み)

拡張スロットとのクリアランスがないという事は、そっくりそのまま「M/B下部とのクリアランスも無い」事を意味します。そんなわけでケーブリングの難所となるのがこの部分。

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(一応スルーホールはあるものの、機能していると言っていいのかどうか)

ケース下部にはフロント寄り・中央・リア寄りの3箇所にケーブル用のスルーホールがあるのですが、ボトムファン取り付けの結果それらもほぼ使用できないに等しいレベルにまで影響を受けています。

不幸中の幸いとしては、ファン固定時にファンそれぞれを前後方向に位置調整する事が出来るくらいの余裕があるので、ファンを完全にピッタリとくっつけて並べるのではなく、スルーホール部の具合を見ながら前後に調整してあげるとかなり楽になります。その意味でも、少なくとも底面ファンはネジ留めではなく、ゴムブッシュ等を使用する事を強く推奨します。

今回のフレームの場合、ネジ留めしてしまうと位置調整の為にドライバーを通す場所がない状態になるので、フレームを外して再調整、また戻してという大変な作業になります。一方でこの手のゴムブッシュであれば、固定自体は「半固定」状態ではあるものの、よほど力がかからなければズレる事は無く、逆にある程度力をかけてあげればフレームをそのままにした状態でファンの前後調整が行えます。防振性も獲得できるので、その面でも強く推奨。

ノスタルジーな上方電源ユニットかと思ったら、時代は進歩していました

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さて、ここからはそれなりにサクサク進みます。ケーブリングでちょっと手間取りそうですが、引き続いては電源ユニット(PSU)を搭載していきます。まずはトップパネル後方左右にあるハンドスクリューを外し、トップパネルを取り外します。

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(専用の「個室」に置いてネジ留め。「吊り下げ式」では無い上方配置)

従来のPSU上方配置ケースの場合、背面の4点留めと、ケース内部にわずかにPSUを支えるように出ているパネル加工部だけでユニットを支持していたりしたものですが、本製品は完全に「個室」状態で用意されているため、あの危なっかしい雰囲気は微塵もありません。このPSUスペースはものすごく気に入ったポイントの一つです。後述しますが、「上から出てくる主電源ケーブルのケーブリング」もしっかり考えられている点も好印象。

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(電源ユニット搭載、ケーブル接続前。電源ユニットは奥行き150mmサイズ)

プラグインタイプの「NZXT C850」を搭載した状態がこのような状態。150mmの奥行きを持つユニットに対して、充分すぎるスペースが割り当てられています。メッシュ部分だけでなく、斜めになっている部分までケーブル処理に使うことが出来る為、1000Wオーバーで200mmクラスのPSUでもなんなく搭載可能でしょう。この点はかなりハイパフォーマンス系のコンポーネント使用を想定した作りでした。ちなみに斜め部分には面ファスナーが一本通っていますが、これは使っても使わなくても……と思っていたものの、結局使ってみました。ちょっとした事ですが、ケーブルをまとめて流す時に位置決めや流す向きの調整など、この位置・この向き・このサイズでついているのは天晴の一言。

あとは一気にガーッと組み立て! ケーブル通らない!

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(M/Bの差し込みはなんなくクリアしたものの……)

さて、ここからようやく組み込みです。まずはとりあえずM/Bを装着。これは難なく完了。CPUのヘッドからラジエターへホースを取り回し、先述したファンブラケットにラジターとファンを共締めで固定。ボトムファンフレームは既に取り付け済みの為、フロントフレームを取り付けていくのですが……。

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(先に全部配線終わらせないとダメなやつ)

本製品に関してはフレーム部分がはずせるようになっているのでまだマシですが、ここ最近のケースでありがちなフロントファンケーブルの取り回し順序がほぼ強制されているタイプは相変わらずでした。事前に全ての結線を済ませて、右パネル側に各端子(M/B端子なりファンハブなり)へ接続する集合ケーブルを引き出しておくなどしないと、フレームを取り付けた後に「右に抜けるホールがファンで隠れてケーブル通せないんですけど」という困ったちゃんが登場します。困ったちゃんにはお帰り願って、先にデイジーチェーンやケーブルの延長を行った上でフレームのスルーホールから、右パネルに完全に引き出した状態でフロントフレームを固定する事になりました。

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(各種ケーブルの接続前。M/Bと水冷ラジエターはだいたいこのあたり)

そんなわけで、内部が広い事もあってスッキリして見えるM/B組み込み時点の様子なのですが、勘の良い方と写真をよく見ている方ならお気づきかと思います。

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(もはやボトムファンは常時スライド可能にしておく以外選択肢が無いくらいのクリアランスの無さ)

案の定、M/Bピンヘッダ周りが絶望的に狭い上、妙なことをしようとすると即ファンにケーブルが当たる状態でした。底面ファンをネジ固定するとここで地獄を見る羽目になるので、本当にゴムブッシュを使用する事を強く推奨します。

上の写真のうち2枚めはバックパネル側なのですが、現在使用しているM/Bである「MSI B550 UNIFY」はここにPCIe6ピンの補助電源コネクタがあります。これまではボード下から線を取り出して、U字に曲げて接続していたのですが、今回は何をどうやっても無理だった為、おとなしくフロント方向にある縦列のグロメット付きスルーホールからM/B上を通るように空中配線で接続しています。

VGAサポーターは……まぁ、えっと、うん……

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(支えてはいるので使えてはいるのですが……うーん)

前編記事の同梱品紹介で出てきたVGAサポーターもこのタイミングで取り付け。今までは長尾製作所のマグネット固定式サポーターを使用していたのですが、今回は直下がファンという事で下から支える方法が使えず、まぁせっかく付属してるしという事でつけてみました。

今回の付属サポーターはケース側にいくつかあるスリットにベースとなるブラケットを固定し、ブラケットが斜めに折れている面に対して垂直にステイをネジ留め、このステイの先端付近にあるスリット部にゴムクッションをネジ留めし、VGAの形状やサイズに合わせて各部分を調整して支える、というもので、パーツとしてはステイ2つ、クッション1つという構成です。現在使用しているVGAである「ASRock Radeon RX 6700XT PGD 12GB OC」でも問題なく使用出来ており、妙なボードのタレなどは無いのですが、この「VGAに接する側のステイ」をケース側に固定する時、ネジ留めで締める必要があり、都合45度の角度でVGA側を向いている事から、それなりに長いドライバーを用意しないと締め込みが出来ないという残念なところがありました。それでもまぁ、これを標準で付けてくれたのは素直にありがたいと感謝しておきましょう。

ここまで来てしまえばあとは配線処理、裏配線の処理はひとまず「処理しやすい」感じ

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(一式のコンポーネント組み込み完了、ケース左側)

さて、一通りの組み込みが完了し、あとは右パネル側のストレージ取り付けと配線処理となりました。まずは左側ですが、VGAから下はともかく、上部分に関しては「これ、ガラスパネルタイプでも全然問題ないんじゃない?」と思えるくらいにはバランス良く綺麗に収まってくれました。全体的にまだまだ余裕があるので、よりハイスペックでコンポーネントが大型化するような場合でも柔軟に対応できそうなのは良いことです。PSUが上部にあるという、「下置きよりもよく見た配置」だったはずなのですが、その固定方法やエリアの形状が異なる為、ちょっと見慣れない不思議な印象があります。

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(右パネル側より先にトップパネルから見下ろし。左がケースフロント)

トップパネル後方のPSUスペースはプラグインケーブルを接続してもエアフローを阻害するような事は全く無く、先の面ファスナーのおかげもあって非常にスッキリと、かつメンテナンス性も高い状態で収まってくれました。この形状に関しては「大正解」と言ってしまって良いと思います。大容量で巨大なPSUに対応するようなサイズ変更や、リダンダント電源扱いでPSU2台搭載等、大きなケースだけに色々思いつくところですが、ひとまずこの形状のフレームで別デザインのモデルを出してくるのもアリじゃないかなぁと。ただ、Define系がこのフレームを使うにはストレージエリアの自由度が低いので、そうした静音系のケースには期待しないほうが良いかもしれません。

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(ケース右側、裏配線スペース兼ストレージエリア。左がフロント)

さて、今回の組み込み作業も佳境ということで、裏配線スペースの整理とストレージの搭載。とは言っても、最初の時点で面ファスナーとガイドレールを併用するような形である程度のケーブルまとめが出来ていた状態なので、それを参考にしながら増えたぶんのケーブルを整理した感じです。面ファスナーは手持ちのものを追加で使いつつ、ストレージとともに配線処理、まとめ作業。M/Bバックプレート部下に3.5インチHDDが入る通り、配線スペースとしての深さは充分です。

写真右側、ケースリアパネル側に何も留めていない面ファスナーがいくつかありますが、これは元々は先程出てきた「M/B下部のPCIe6ピン補助電源」を接続するためにケーブリングした時のもの。結局この経路から下を通しての配線が行えなかったため使わずじまいだったのですが、今後なんかで使うかもと思って残しておきました。

さて、組み立てが全て完了してデスクに設置、その後に各種機器のケーブルを接続するわけですが、このケースにはちょっと面白い仕掛けが。

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(ケースリアパネル右側にケーブルまとめ用の面ファスナーが)

PSUが上段に来るとなると、当然ですが電源ケーブルそのものも上に回ることになります。ケーブルも太く、ぶらぶらして引っ掛けて抜けてしまうなんて言語道断。しかも一度繋いだら設置場所変更でもしない限りそうそう手を付ける部分でも無い。……という発想があったのかどうかは定かではありませんが、リアパネル右側にケーブル固定用の面ファスナーが配置されていました。試しにと電源以外のケーブルも一部まとめてみましたが、面ファスナー自体にはかなり長さの余裕があるため、リアパネルがかなりスッキリした印象です。あるいはケーブルが排気スリットに被ってエアフローの阻害にならないように、という意味合いがあるかも、と思ったのですが、流石に考えすぎ……ですよね?

組み込み完了……気になるファンノイズ、エアフローは?

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(改めて見るとなかなか端正なお顔)

さて、これで一式の組み込みは完了、あとはパネルを全て閉じて終了となるのですが、当初より気になっていたのはやはりファンノイズ含めた騒音周り。今回の製品では従来のFractal製品や他社製静音系ケースのような「吸音材・吸音スポンジ」が全く貼り付けられていない状態であった為、少なくともDefine XL R2よりはノイズが気になるだろうとは予測していました。ましてやフロントパネルがほぼ全開放状態。音を出すなということのほうが無理な話です。

今回のファン構成は以下の通り。
・フロント:120mm XPG VENTO PRO 120 PWM *3 吸気方向
・ボトム:ケース付属180mmファン *2 吸気方向
・リア:ケース付属140mmファン *1 排気方向

フロントはファンサイズ・ラジエターサイズとも横幅140mmが入るのですが、今回は既に使用していた高静圧のハイグレード系ファンである「XPG VENTO PRO 120 PWM」を活かす為、280mm等は用いずにそのまま360mmラジエターで運用することにしました。

全ての組み込みが完了した上でWindowsユーティリティ上からファンステータスのチェックと、回転数等を再調整した所、アイドル時には「ブーン」というよりは、濁点の取れた「ファーン」的な音の響き方でした。フロントファンかと思って耳を近づけて見ると、フロントパネルからも確かに聞こえてはいるものの、どちらかと言えばケース内部側、左サイドパネルから「ケース内部で反響しているような」イメージで音が聞こえる状態で、ボトム・リアのファンも相応に静かではありますが多少音は聞こえます。先の通り吸音材の類が一切無いケースの為、ケース内の反響はかなり大きく影響が出ているように感じるため、別途何らかの形で吸音材を調達して貼り付けてやろうかなと画策中。

エアフローの面に関しては、使用しているファンの性能が優秀な事もありますが、ケースの構造的な部分から想像できた通り、「エアフロー強化設計」はガッチリ効いています。

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(青矢印が外気、黄色はラジエター通過後、オレンジはケース内熱気)

まずはファンによる吸気が充分すぎるほどに確保されており、フロント3発+ボトム大型2発はそれぞれで別々に仕事をしてくれるくらいのレベルになっています。ラジエターを抜けたエアとボトムファン前側から吹き上げてきた分が合流しながらCPU側へ移動しているのですが、この部分に関しては「通過」はしても「冷却」に回っていないのか、VRMヒートシンクは結構な熱を持ってしまうのが残念な所。ボトム後方180mmは完全にVGAのファンにぶち当たる上、ケース左側のスペースから上方へ抜けるので、ここでもかなりフレッシュエアが回っている状態になります。これだけ吸気があるので、排気は140mmリアファンのみではなく、リアに多数空けられた排気口からも押し出されるように排気しています。

一方、PSUに関しては、現状主流のボトム配置と比較すると、ケース内の空気を吸い込んで排気する事になるため、冷却力という点では不利になります。今回のように水冷構成でCPU周りにファンがない場合、先述の通りVRMヒートシンクが熱を持つなど、ちょうどCPU部分が「熱溜まり」になってしまい、その真上に位置しているPSUの排気ファンが引き抜いてしまう事になるので、何らかの形でCPU周りのエアフローを作って、冷却が行えるような方法を考える必要がありそうです。

総評:やっぱりHEDT系PCで使ってみたい、ちょっとだけクセのある秀作

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さて、今回のレビュー記事は前後編の2つに分かれましたが、このあたりで〆に持っていきます。

「Fractalのケース=ド静音系」という印象があった私にとって見ればあまりに意外なタイプのケースだったので組み込みも楽しかったものですが、フロントフェイスやトップパネルを含めたケース全体の造形が丁寧で、そう簡単に飽きてしまうようなタイプでは無いデザインです。Define XL R2では「シンプルゆえに飽きずに長く使える」と感じていましたが、本製品では「買った時は面白いデザインだと思ってたけど、時間が経つと当たり前感が出てきて逆に馴染む」といった意味で長く使えるかなぁと。

また、何度も触れてきたように、本製品の、特に今回のソリッドパネルモデルは、RyZen ThreadRipperのようなハイエンドワークステーション系(HEDT系も)で使いたいケースの筆頭になりました。ストレージサーバにするのでなければ充分なストレージエリア、エアフローを重視した構成で常時高負荷状態を長時間、といった用途には極めて親和性が高いケースであろうと思います。水冷システムを使わず、全て空冷で行う時には本製品の真価が問われる所でしょう。

こうした「PC落ちたらデカい事故」といった環境になるワークステーションのケースとして使用したいと思えるほどには、全体がしっかりしているのですが、価格が3万円弱のケースと考えると、手で触れた時の感触が今ひとつ安っぽく感じるのは残念な所。前編でも掲載したとおり、実際には半分くらい付属ファンのお値段だったりするのですが、それであれば完全ファン無しモデルで最安価帯を作ってくれない限りは他と比較のしようが無い為、どうしても割高、という判定をつけざるを得ない感じです。

良し悪しは色々とありますが、細部までの細かい造形や製造、塗装やプラパーツのモールドライン等、全体的なクオリティは流石のFractalで、強いて言えば箱開封直後のエンブレム部分からはみ出していた接着剤が気になった感じ。フロントフェイスも非常に個性的ながら主張しすぎないバランスなので、フルタワーケースやDIY水冷用ケースを探している方は検討してみてはいかがでしょうか。

なんだかんだと書きましたが、総合的に私はかなりお気に入りになりました。アタリ製品の買い物が出来てよかったと一安心。