入手性だけじゃない、「何を求める?」:Radeon RX 6700XTから見るGPUのパフォーマンスと「更新の必要性」
全世界6700億3070万人の「新しいグラフィックボード出たらとりあえず買う」皆様、こんにちは。本人にそんなつもりは無いのに行動から見るとまさにそんな動き方をしている案外一番タチの悪い香月です。
さて、今回はレビュー記事というよりは市場状況に重点を置いた内容ですが、かれこれ半年くらい前に、AMDが発表したRyZen5000系、Radeon6000系の話題で記事を一本ずつ掲載し、その後色々と理由もあって、今月上旬にRadeon RX 6700XTを導入しました。ちなみに半年前の記事はそれぞれ以下。
今回取り上げるグラフィックボード(VGA)、ようはRadeon側に関しては、当時の記事では6900XTを筆頭に6800XT、6800無印の3種類で展開されており、今回導入した6700XTは情報が出ていない頃。その後年をまたいで2021年3月18日に発表・同19日に発売(いずれも日本時間)となった6700XTは、先代の5000番台とは異なり、ミドルレンジに位置するモデルとなりました。今回はそんな6700XTを軸に、VGAに関して色々考えてみよう的な記事。
半導体業界の打撃が尋常じゃない:VGA含め各パーツの価格暴騰
時期的な事もありますが、まずはここから始めなくてはいけないでしょう。RadeonもGeForceも、何ならVGA以外の半導体製品全般も、はてはHDDのようなストレージに至るまで、PC関連にまつわる基幹パーツの強烈な品薄・価格暴騰が無視できないどころか、強烈な打撃となってエンドユーザに襲いかかってきました。前置きで「6700XTはミドルレンジ」と書いてありますが、その半年前に上位モデルが発表された際の初値予測とその後の実売価格として、以下のように当該記事で掲載しました。
価格帯としても、無印は$579と販売価格が発表されており、現時点のレートでおよそ6万円程度。ここに代理店系の上乗せがどの程度入るかはなんとも言えませんが、65,000円あたりがだいたいの目安ではないかなと考えています。
(中略)
(※2020/11/23追記:価格予想を見事に外しました。発売初日時点のリファレンスボードで、各社バラツキは多少ありますが、6800XTが82,000円程度から、6800無印が73,000円程度から(いずれも税抜)のプライスタグが付きました。前述の通り今回は型番が800番台の為、5700XT初値と同等、という予測自体がそもそもズレていました……)
----新世代が出揃ったAMDのCPUとGPU、乗り換えは?:GPU編
https://note.com/kodu_ki/n/n30ed96de4cf3
ここで言う「無印」はRadeon RX 6800の事で、当時のラインナップでは最も下位に位置するモデルでした。予測は見事に外したものの、結果的には追記した通り、無印が73,000円程度、6800XTが82,000円程度からのスタートとなりました。この当時は「税抜」表記であった為、各ショップのプライスタグも同様で、ここから更に10%の消費税がついたのですが、現在は表示価格を税込表示にするように法改正が入ったようで、それに沿うのであれば、税込みで無印は80,300円、6800XTは90,200円となります。比較的メインストリーム帯のRadeonにしては結構強気なプライスではあるものの、当時の時点・グレードで考えれば、まだ理解出来る価格です。ライバルとなるGeForce系では、日本での想定価格としてRTX3080がおよそ12万円、RTX3090がおよそ25万円(nVidia発表時税別、上記は税込み表記)というプライスタグがついていた為、日本市場であればそれなりに価格的な競争力がありました。ちなみに6900XTの初値は税込で12万円ということで、いよいよ価格的な面では強みがありました。
(※以降、特記無き場合はすべて税込での掲載とします。発表時税別だったものは10%の消費税として加算しています)
ただ、問題はその価格面ではなく、供給状況にありました。2020年の一連の騒動や新型ゲーム機の発表、EVを含めた半導体需要の強烈な増加、さらにはビットコイン等の仮想通貨マイニングがすっかり組織的になってきた事も重なり、CPU/GPU製品が小売店に入荷されず、例によって転売が横行し、最終的にGPU供給元であるAMD・nVidiaともに供給が追いつかなくなり、nVidia系のVGAに関してはRTX2000番台すら手に入らず、ボードベンダーが1660Superや1650Ti搭載型を再販する程にまで至りました。さらには実質的に2世代前のエントリーモデルとなる「GeForce GTX 1050Ti」が今年3月に登場(ニュースリリース)、市場想定価格がまさかの23,000円前後という信じられないプライスタグがつく異常事態。どれくらい異常かといえば、2016年10月に国内で発売開始したGTX1050Tiはスタンダードな2連ファンのモデルで19,000円ほど(参考)。4年以上経過したエントリーモデルが、当時のプライスを上回っているのです。
VGA製品に関してはどうしても仮想通貨マイニングの影響が大きかった事もあり、それをAMD/nVidia両社とも認知した上で、nVidiaは3000番台ミドルローにあたるRTX3060に対して、ドライバレベルで「マイニング性能を低下させる」という措置を以て、PCゲームプレイヤーの保護とも言える対策をしてきました。その為、一時的にはRTX3060はそれなりに店頭在庫も存在し、上位モデルとの繋ぎやミドルレンジでのアップデートに関しては多少マシだったようですが、この「マイニングロック」とも言えるようなシステムが「外れた」ドライバがWindowsの開発版ブランチから流出(参考)、最終的にRTX3060すらも瞬時に市場から消し飛んだという事態に見舞われることになります。
さらに3月頃から、また別の仮想通貨に関するシステムで「GPUやCPUではなく、ストレージ資源を潤沢に用意する事で効率を上げる」という方式のものが発表され、NAS向け等の高速・高耐久・大容量HDDやSSDが海外市場で次々と消滅、日本国内でもNAS等で複数本購入したい場合でも本数制限がかかるなど、「もうPC組めなくなるんじゃないのか」という懸念がかなり現実味を帯びてきました。CPUも無い、VGAも無い、ストレージも無い、こんな状況ではM/Bもバリエーションの増やしようが無い、という散々な状況。そんな中でIntelから第11世代となるCore iシリーズが登場、チップセット更新があった為にM/Bも各ベンダーから複数登場したものの、これまで10nmプロセスで苦戦していたことから一度14nmスケールにバックポートした事が少なからず影響し、新製品としてはライバルとなるAMD・RyZen系に対するアドバンテージが作れなかった、逆にAMDはCPUに関しては供給が再び安定し始めてきたという事もあり、盛り上がりは今ひとつの様子(参考)。普段はIntelぶっ飛べとかnVidiaの使用は許されないとかバカみたいなジョークを飛ばす私でも、流石に今の状況では「これはちょっと大変だぞ……」と各社を心配してしまうことになりました。
その他、半導体製品のファウンドリが火災に巻き込まれる等、PC関係に限らず半導体産業全体として極めて重大な事態に陥っていると言わざるを得ない状況なのですが、今回はVGA/GPUネタという事で、以降はひとまずそちらにフレームを絞っていこうと思います。
Radeonミドルレンジの6700XT……え、9万円台から?
(今回はベンダーモデルを選択。ASRock Phantom Gaming D 12GB OC)
さて、そんな中で登場したRadeon 6700XT系統ですが、こちらもリファレンスモデルは早々に市場から姿を消し、ベンダーモデルが各ベンダーより2~3種類のバリエーションで販売されており、まだ比較的手に入りやすい市場在庫となっています。私の現在の環境としては、無理に買い換える必要も無かったといえば無かったのですが、先日突発的に吹き飛んだメインPC環境の再構築にあたって、組み直し等でパーツ類が一台分余剰しそうな状態であった事、メインマシンの静音化を目指した時にこれまで使用していた5700XTリファレンスのブロワーファンの音がとにかく気になる状況になった為、この際だという事でリプレイス。6700XTに関してはリファレンスでもファンストップ機能が搭載(ファンは2連内排気型に変更)され、各ベンダーとも6000系上位譲りのガッチリした冷却系を採用した事もあって、その点に関してはリプレイスして正解だろうと判断し、何種類かのベンダーモデルを比較した上でASRock製の上位モデルとなるPhantom Gaming(PG)シリーズを選択。3スロット行くか行かないかくらいの3連ファン大型クーラーが採用され、GPU温度50度以下ではファンストップが機能するモデルで、実際に冗談みたいに冷えます(後述)。ボード重量は1kgを超えてきた為、ついに私もVGAサポートステイを導入する羽目になりました。
(ATXのM/Bをぶっちぎるボード長。補助電源はリファレンスから強化された8+8pin)
まだPC全体の構成が固まっていない為に全体レビューは見送っているのですが、このボードではGeForce RTX30系で採用された「エアスルー構造」が採用されており、ボード後端、補助電源コネクタより後ろの部分はファンからのエアが抜けるように、バックプレートにスルーホールが打たれています。また、これもRTX30系と同様なのですが、実際の基盤は短くなっており、上の写真でいう補助電源コネクタ付近までしか無いのですが、クーラーが巨大化した結果、最終的なボード長がごっそり長くなっています。その為、当初不安視していた「エアスルーは良いけど、その先にあるメモリ大丈夫?」という点に関しては「メモリどころかATX電源コネクタより向こうに抜ける」というサイズになっており、安心して良いのやら呆れれば良いのやら。5700XTに関してはリファレンスボードで8+6pinの補助電源で、ちょっとカツ入れしようにも電源入力が持たないという部分から、今回のボードでは最初から8+8pinタイプの製品だけに絞っていました。
さて、そんな6700XTの本製品、ベンダーOCモデル、かつクーラーも上位モデル譲りという事で、まぁそれなりにリファレンスよりはお値段が張ったわけですが、そのお値段、なんと95,700円。ちなみにリファレンスの時点で80,000円を超えていたようで、「それ、上位モデルに手出したほうが良いんじゃない?」というお値段だったわけですが、その上位モデルとなる6800以上は「12万ならバーゲン、15万がボーダー、6900XTなら30万が見える」という尋常じゃない暴騰ぶりを見せていたのでした。ちなみに購入したのはドスパラで、会員登録による割引が入ったので、なんやかんやで8万円台後半で購入。これだけ数字が大きくなると、割引もバカにできません。
一方、それら製品を販売するベンダー側としても、このような価格帯であればいっそ強烈なOCを行う、水冷化して販売する等、付加価値をつけて販売するほうが理に適っていると判断したのか、空冷で冗談みたいなクロックでぶん回すモデルにしたり、選別品でさらに上をゆくクロックを360mmラジエター+ボードファンで水冷化するモデルにしたりと、色々と頭のネジが外れた製品群が出てきました。前者ASRock製品は30万円ほど、後者Sapphire製品も国内投入時にはおそらく35万はくだらないプライスがつくであろうと思われます。どちらも色々とおかしいのですが、ASRock製品に至っては電源が21フェーズという、ハイエンドのマザーボードでも見られないフェーズ数が搭載されている有様で、もはや「拡張ボード系パーツ」と呼ぶこと自体に違和感を覚えるレベルです。
「CPUじゃないよね? GPUだよね?」と疑うほどのハイクロック動作
(デカイんだわ。重いんだわ。)
さて、このへんから本題に入ってくるのですが、「あなたの必要GPUスペックはどこから?」というお話。一昔前であれば、世代が一つ進めばその分アホのようにスペックが向上し、体感的にも一発でわかるような部分でしたが、ここ最近はCPUにせよGPUにせよ、体感的な性能でいえば飽和状態に近い状況になっています。今回導入した6700XTにしても、「WQHD解像度でのゲームプレイを快適に」という謳い文句でしたが、これはそもそも前世代5700XTの時にも同じ事を言っていました。私が実際に使用している環境がWQHDのディスプレイ3枚(+13インチフルHD1枚)なのですが、マルチディスプレイでのプレイはまだテスト前ながら、シングルパネルでのプレイに関しては体感できるスペックアップは限られたゲームタイトルになります。例えばバトルロイヤル系FPS「エーペックスレジェンズ」では、両者ともに「マップ外のオブジェクトが少ない画面ではfps上限の142に張り付き状態、マップ中央のオブジェクトが多い場面で90台後半~120fps」という数値が出ており、おそらく上限を外せば200fpsは簡単に超えるであろう程度の負担しかかかりません。
(※2021/04/26追記:6700XT環境にて「エーペックスレジェンズ」のfps上限を外した所、ゲーム開始時のマップ外視野で190fps程度、マップ内やゲーム中は100~140fpsをフラフラ、といった具合でした。144Hz以上のディスプレイを使用している場合には体感的な影響が出そうです)
一方、より3D描画の複雑な「DiRT Rally 2.0」では違いが顕著に出ており、5700XTだとプレイ中、リプレイともに70~120fpsあたりでフラフラしていたものが、6700XTだと200fps付近でほぼフラットになるくらいにはスペックアップしています。Radeon系でよく出てくるゲームタイトルのひとつ「DiRT5」と同じCodeMasters(コドマス)のゲームタイトルである為、これはコドマス側がそもそもRadeon系環境に最適化を進めていたことが理由でしょう。
レースゲーム、FPSゲームともに、さらに言えばどのようなゲームであってもFPSが高いのはもちろん大事ですが、使用しているディスプレイがそれに対応出来ないのであれば、体感できる差はありません。「ゲーミングディスプレイ」としてリフレッシュレート(≒フレームレート)が144HzくらいのWQHDディスプレイや、フルHD解像度なら200Hzクラスも出てきており、AMDとしてもそこにフォーカスを当てたとして製品発表を行っていますが、このあたりに関して言えば、ゲームタイトル側の最適化さえ進めてしまえば前世代のGPUでも実現可能な部分でもあります。
(ゲームタイトル別の他、「売れてるディスプレイの傾向」を指標に)
それでは他の部分は、という点について、AMDお得意の「ドライバアップデートでドバッとスペックアップ」がもう既に発動しており、ドライバを含めたユーティリティソフトウェアである「Radeon Software」で4月に大型アップデートを実施、不要なソフトウェアを導入しない「ドライバだけインストール」といった機能も含め、ハードウェアを維持したままでドライバ側からさらに性能を引っ張り出すアプローチがお約束の如く続いています。これだから「AMDは初期ドライバがボロボロ」とか言われるんです。私も言ってます。
さて、見出しに戻って「GPUの動作クロック」について。今回の6700XT PGDはASRockの箱出し時点でブースト(瞬間最大値)2622MHz、ゲームクロック(常用OC時)2548MHz、ベースクロックでも2457MHzという、「なにそれCPU?」と突っ込むしか無いようなクロックで動作します。参考までにnVidiaの対抗馬となるRTX3070のリファレンス(Founders Edition)がブースト時(AMDでいう「ゲームクロック」?)で1.73GHz(≒1730MHz)、ベースクロックが1.50GHz(≒1500MHz)となっており、クロックを盛ったベンダーOCモデルでも1800MHzを超えてくるものはよほど、というライン。で、先に出た「Radeon Software」では自己責任ながら手動OCを行えるメニューが複数あり、実際に手動でOCを行ってみたのですが、その画面がこちら。
(脳筋と言われても怒ることが出来ない設定。動いちゃうのコレが)
こんな具合です。ちっさいので拡大します。
(そもそも設定出来ることがおかしい)
最大(≒ブーストクロック)で2800MHzの打ち込みが可能。しかも、最大まで振り切ると2950MHzまで設定出来ます。
「とは言っても、実際そんな出ないでしょ」と思ってました。実際、3DMark等でもそこまで上がりきらず、2600MHzを超えるか超えないかあたりがボーダーラインでした。ただ、今回この記事を書くにあたってテストした「SteamVR Performance Test」を回した時のモニタリングがこちら。
(冗談は設定画面だけにしておきなさいよ)
アッサリ2700MHzを超えてきます。こんなんGPUで回っていいクロックじゃ無いです。ノートPC向けCPUと同じか、下手するとそれ以上で回ります。冗談キツイよAMDさんよ。
で、さらに見ていただきたいのが温度の項目。ジャンクションでも80℃、センサー温度(パッケージ温度)が60℃を切っているという恐怖。
流石にクロックをかなり盛って、その分電力消費も高くなっているので、ファン回転数を高めにした(それでも80%)のですが、それにしても60℃から上に行こうとしません。ついでに言えば、高負荷状態から解放された10秒後にはファンストップとなる50℃付近まで一気に温度が低下。ファンストップ後はヒートシンク周りだけで50℃を維持してきます。ASRockのクーラーなんかおかしいと思うのですが、そもそもこんなクロックで回るGPU自体がまずおかしい。
クロック上昇と処理速度上昇はCPUほどリニアでは無い?
(3DMarkでのテスト結果。左が6700XT、右が5700XT)
さて、クロックがそこまで冗談みたいに回るのであれば、動作上の計測値も相応に変わるのでは? という事で計測したのが3DMark。上の掲載画面は6700XTが箱出し(ベンダーOC)状態のものですが、ブーストクロックが1905MHzである5700XTリファレンスと比較して、グラフィックススコアで3000くらいの上昇具合。クロック差はざっくり700MHzとなるのですが、スコアが1万の大台を突破してこそいるものの、そう極端に跳ね上がっている印象はありません。CPUであれば500MHz(0.5GHz)くらいのOCでもそれなりにスコア差が開くことを考えると、グラフィック系、GPU周りに関しては、どう贔屓目に見ても「クロック上昇とスコア上昇がリニアである」とは言えない感じです。
(もはや完全に頭打ちのSteamVRテスト)
先のクロックテスト時点で使用した「SteamVR パフォーマンステスト」においてはもはや計測対象自体の更新が必要なレベルになっており、6700XT(左)、5700XT(右)のどちらでも完全に振り切った頭打ち状態。テストフレーム数に違いはあるので、それでも多少なり6700XTのほうが有利であろうとは思われるのですが、VRに関しては使用するHMDの構成(主にディスプレイの解像度・リフレッシュレート)によって大きく差が出る部分もあり、このテスト結果に関しても一概に「全てのVR機器でOK」と言い切れなくなってきています。例えば私が使用しているHTC Viveの初期型と現行のVive Pro、同系統のセンサ方式を採用しているValve Indexの3種類で、ディスプレイの性能差は以下のようになっています。
・Vive初期型:1080*1200pxディスプレイ2枚、リフレッシュレート90Hz
・Vive Pro:1440*1600pxディスプレイ2枚、リフレッシュレート90Hz
・Index:1440*1600pxディスプレイ2枚、リフレッシュレート最大144Hz
いずれも左右の目それぞれにディスプレイを載せた2枚構成で、合わせると上から2160*1200px相当、2880*1600px相当となり、さらにIndexではリフレッシュレートが複数設定可能ながら、最大で144Hz駆動となっています。そのため、初期型とPro/Indexでは解像度が、ProとIndexではリフレッシュレートがそれぞれ向上している分、グラフィックス系にかかる負荷も順番に上がってきています。VRコンテンツも多種多様な為、Index登場当時で最強と言われていたGeForce RTX 2080TiやSuperですら、コマ落ちが発生するコンテンツも存在したり、数少ないSLI対応コンテンツである「nVidia Funhouse」に至っては、リリース時点の現行機であった初代Vive+GTX1080TiのSLIという強烈な構成にしても、なお動作が激烈に重たい設定項目というものまであります。
ここまで書いておいてアレですが、VR系のベンチマーク・動作確認ツールとしてはSteam以外にもいくつか存在しているのですが、あろうことか私がテストを忘れていたという事で詳細なスコア傾向が確認できず。ただ、少なくともSteamVRでのパフォーマンステストは、もはやアテにならないレベルまで、GPU性能は上がりきっているという状況になっています。
(※参考までに、CPUやメモリが同一でVGAのみ「GTX1660Super」という環境の方がいたのでテストデータを見せてもらったのですが、「忠実度」が波打ち始め、平均忠実度も「10.2」と、ツール上では動作上問題なしの判定ではあるものの違いは出ていました。現行VR機器に関してはGTX1660系が動作可能な最低ラインと判断しています)
ちなみにVGAを6700XTに置き換えた後、VR専用機として動かしているRyZen 7-2700X+B450 SteelLegend+メモリ64GBの環境に5700XTをお下がりに差し替えましたが、VEGA64だった頃と比較して、多少ではありますがVR系のコンテンツは安定性が上がったようには思います。そもそもGPUのアーキテクチャが更新された(GCN→RDNA)事もあり、このラインであればまだ多少なり体感は出来ました。逆に、その前に動作させていたRX580からVEGA64へ移行した時には、「多少コンテンツ内設定値を上げても問題ないかな」程度の差であった為、初代Vive使用に関して言えば、アーキテクチャの変更は効いていても、同一アーキテクチャでの世代更新(Polaris→Vega)では極端な違いはなかったように記憶しています。
GPGPUの違いは? :現段階でRDNA2に最適化されたコンシューマ向けツールが非常に少ない
(Adobe Media Encorderではほぼ体感差は無し)
私がVGAに求める性能のひとつとして、ゲーム性能よりもクリエイティブ系ツールでのGPU支援、いわゆる「GPGPU」があるのですが、これに関しては一般的なコンシューマ向けソフトウェアでの最適化が進んでおらず、体感できる差はありませんでした。プロ向けの3Dソフトウェア等では、AMDが専用のレンダラーを公開する事で大きく性能向上に寄与している部分もあるようですが、動画エンコードに関して言えばほぼ変化なしと言ってもいい程度です。このGPGPUを使うのが先述した「仮想通貨マイニング」なのですが、私自身では実施していないながら、実際にそれを実施しているユーザの評価を見ても極端な高効率化はされていない様子。ここまで来てしまうと、「ファンストップ機能欲しさにVGA差し替えた」と言われても言い返せないくらいの状態になってしまいます。
このあたりに関してはドライバ熟成と同時にソフトウェア側での対応が進んだり、AMDが最適化ツールを公開する等で今後改善が見られる可能性はありますが、そうは言っても極端な変化が現状見られない以上、10万近い予算を組んで導入する必要性が見えない、というのが正直な所です。GPGPUに関してはかなりあっけなく限界が見えてしまったので、あまり書くこともなかったりして、もう少しネタ提供して欲しかったなくらいの勢い。
ちなみに情報ですが、私が映像演出で現場に持ち込んで使用しているノートPCがRyZen5-3500U搭載型で、内蔵グラフィックスとしてVEGAが乗っているものですが、以前記事にした通り、iGPUであるにも関わらずGPU支援がガンガン回っている状態。ただ、ステータスを見る限りはそれでもフルまで回ることはなく、ブースト状態での50~60%程度(CPU/GPUとも)という状態なので、よほど解像度を上げたり、フレームレートを上げたりしない限り(仮にそれを多少なり上げたとしても)、dGPUは不要である状態だったりもします。
「新しいVGAに何を求める?」で変わる、新規導入やバリエーションの選択、入手難の今にそれは必要か?
(冗談キツイよホントに)
さて、そんなわけでそろそろ〆に入りますが、現在のこのパーツ入手難な状況下において、既に相応のスペックのPCを持つユーザが「何を求めて」パーツ更新を行うか、という事で、簡易的な計測データを踏まえて書き散らしてきました。掲載した通り、ミドル~ハイエンドクラスのパーツは「そもそも売ってない」状態、4年ほど前のローエンドクラスが、当時の価格を上回る状態で再販されている有様、組織票の如くごっそり買い漁っていく仮想通貨マイナーや転売ヤー、こんな状況で、10万近いプライスのパーツを変えて「ちょこっと体感性能が向上」なんて状況では、とても「買えばいいじゃん!」とは言えなくなってしまいます。逆に「迷ったら負け」というフレーズをぶっぱした某ジサトラ検証担当の言葉の如く、「迷っているうちに目の前からそれは消えていく」状態なので、「そうだ、京都に行こう」の「そ」くらいの時点でお会計を済ませるくらいの勢いは必要なのかもしれません。
メーカー公称や各ベンチマークの数値を見ると確かに性能向上はしているようではありますが、これまた先述したように現状のPCパーツ、特にCPUやGPUに関しては、一定グレード以上ではもはやスペックが飽和しており、ことゲームに関して言うなら「10万でVGA買うより、5万で液晶買い替えたら?」とかいう状態ですらあります。
私は自他共に認める自作erですし、ジサトラKTU氏や改バカ髙橋氏の「迷ったら負け」「スペックが好きなんだよ!」の言葉は「良いぞもっとやれ!」なスタンスなのですが、ことプロゲーマーや実況配信者が「100万円で組みました!」みたいな動画を上げている部分には否定的で、特にeSports等でプレイされるゲームタイトルに至っては、「20万とちょっとあれば、フレームレート上限にぶつかるよね?」というツッコミしか出来ないのです。100万円で1台組んでゲームプレイと配信を同時並行するくらいなら、20万くらいのPC2台でも用意して作業分担したほうが圧倒的に効率的なわけです。なんなら配信用のPCなんぞ10万も出さないで充分なレベル。
そんなわけで今回の記事のまとめとしては、もうなんか箇条書き。
・これから新しくPCゲームをしたくてPCを用意するならBTOで
・現状の環境でゲームを動かして若干の不満なら設定いじれ
・現段階でフレームレート含め上限叩いてるならディスプレイでも変えろ
・パーツの匂いが大好きな自作erなら札束を用意しろ
・仮想通貨マイナーは某国の発電所の隣に倉庫買うことから始めろ
・転売ヤーはすべからく豆腐の角に頭打って地獄に落ちろ
これに尽きます。現状のパーツ単体の価格とBTO系PCの価格を見ればよーくわかりますが、なんなら「パーツ一本の為にPC1台買ったほうがまだ安い」くらいの状況なので、BTOメーカー各社の在庫が尽きるまではそちらを選ぶのが得策でしょう。マイニングに使うのも(一時的なnVidiaの例外を除いて)それ自体が問題であるわけでは無いので文句はつけられませんが、ショップ側が「1グループ1枚まで」と張り紙をしているならそれに従う分には問題でも無いでしょう。ただ、購入後に店の隅で変装してもう一回買いに行くという冗談みたいな事が現実に起きているのはもう笑ってる場合じゃありません。転売ヤーはすべからく(ry
世界的な規模で見た時にどうなのか、までは情報が追いついていないのですが、日本を含めたアジア圏ではどうにもこの手の悪意の塊みたいな輩が平然と買い占めなんてしていくのは、もはやPCパーツでもゲーム機でもマスクでもアルコールティッシュでも一緒。モラル低下を嘆いていても連中には通用しないので、販売店の関係者各位による自衛の苦労を労いつつ、そろそろ法規制を行うべきだろうなぁと、改めて思い知らされたここ何ヶ月かでした。
無理やりオチに持っていったら相変わらずひどいオチ。
なんかこんな記事で当のVGAを並べるのも気が引けたので無難なヤツで。